日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

関東一円はしご酒 2015初夏 - 蔵元

2015-06-20 22:38:25 | 居酒屋
終電で帰ることも可能という状況の中、あえて見送り三軒目に突入します。立ち寄るのは「蔵元」です。
教祖のあらゆる著作、番組に登場する「庄助」と違い、こちらはその昔「全国居酒屋紀行シリーズ」に登場した店です。よって、近況が逐一分かる激推しの店と違い、この店については未知数な部分がありました。以前訪ねた中でいうなら、魚津の「ねんじり亭」に対する「炉辺かねや」のような存在というわけです。実際のところ、明るいうちに通りがかった限りでは、見るからに期待できそうな店とまでは思えず、事前情報なしに飛び込むことはおそらくなかったと思われます。とはいえ、そのような店であっても、さすが教祖の推奨店と思える部分が一つや二つはあるものです。本降りの雨が落ち、自分の足で探すのも面倒という状況の中、軽く一杯やれればよいと割り切って飛び込んだというのがここまでの顛末です。そして、この判断は吉と出ました。
万人受けしそうな「庄助」に対し、この店については好き嫌いが分かれるかもしれません。古いながらも入念に手入れされ、どこもかしこも艶を放っている「庄助」に対し、こちらの店内はやや雑然としており、ともすればくたびれているようにも見えます。加えて、店主が何かと一家言ある人物らしく、特に音楽には造詣が深いようで、店内にはそのこだわりを綴った張り紙があります。このような雰囲気からして、苦手な人にとっては取り付きにくかろうというのが第一印象です。
しかし、老練な店主は終始にこやかで、教祖の番組で知ったことを有り体に伝えると、まずはその話題に花が咲きます。加えて、戦前を含む昭和歌謡にも造詣が深いと分かり、隣り合わせた御常連も交えて意気投合。教祖の推奨店というより、「酒場放浪記」にでも出てきそうな雰囲気が心地よく、思いがけない一期一会と相成りました。

蔵元
宇都宮市塙田2-5-2
028-625-6637
1130AM-1430PM/1800PM-130AM
日祝日他不定休

澤姫・辻善兵衛・鳳凰美田
お通し四品
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 庄助

2015-06-20 20:28:48 | 居酒屋
一軒目を出るやいなや雨粒が落ちてきました。小雨そぼ降る路地裏を歩き、やってきたのは「庄助」です。
教祖が推奨する店の中でも、是非行ってみたいと思うところと、それほどとは思わないところがあります。有り体に申しますと、この店は後者の部類でした。その理由の一つとして、この店の特徴である「逆L字」のカウンターがあります。居酒屋のカウンターといえば、直線、L字、コの字といったところが通常で、なおかつそこが店の中心になっていることが多いものです。ところが逆L字型になった場合、店の中心に背を向ける形になり、どの席に座っても店の全体像が捉えづらいとでも申しましょうか。この中途半端さが、居心地をほんのわずかに削ぐような気がするわけです。加えて宇都宮の中途半端な遠さもあり、この店には長らく足が向かなかったという事情があります。もっとも、わざわざ宇都宮に来たからには、教祖があらゆる著作で激賞し、さらには「酒場放浪記」にまで登場した聖地を、あえて素通りする理由もありません。二軒目にはここを選ぶということで迷いはありませんでした。

事前情報である程度の想像がついてしまうのは、この手の有名店の常ではありますが、唯一想像しづらいのは立地です。繁華街からやや外れた場所だと聞いてはいたものの、それ以上の手がかりはありませんでした。しかして実際に足を運ぶと、二荒山の裏手の、一見すると飲食店などなさそうにも思える路地裏に、行灯と赤提灯がぽつんと灯っていました。周囲には、やはりごく普通の住宅街に見えながらも、ところどころに大衆割烹、季節料理の看板を掲げた古い店が散らばり、路地には「百目鬼通り」なる聞き捨てならない名が付くなどしています。おそらくここが、遠い昔は宇都宮の中心として賑わったのでしょう。このような場所があるとは知りませんでした。
玄関の左から奥に延び、直角に折れ曲がって右へ向かう逆L字のカウンターは情報通りで、自分が通されたのは折れ曲がったすぐ先の場所です。その角には百合と薔薇と紫陽花が生けられており、開け放った玄関から吹き込む風が心地よく、長年お客の肘で磨かれてきたであろうニス塗りのカウンターも、見上げる船底天井もよい味を出しています。中途半端と毛嫌いしている逆L字のカウンターですが、この店に関する限り居心地はあながち悪くありません。
奥方向のカウンターに店主、それに女将と思しきおばちゃんが、自分がいる間口方向のカウンターにはもう一人のおばちゃんが立ち、慣れた様子の青年二人が加わります。品書きは横長の黒板に縦書き三段組で綴られ、なおかつその一枚限りしかないため、お客が入るとその正面にまず掲げられ、最初の注文をすると同時に下げられて、その後は所望しない限り再び出てくることはありません。しかし、書かれた品々はどれも簡明直截で、奇をてらったものはなく、一度眺めておけば何度も見直す必要はありません。品書きをざっと眺めて組み立てを考えておき、あとはそれに従い一品二品注文して行くのがこの店の流儀なのでしょう。教祖が好む老練な酒場なのはよく分かりました。
品書きに値段の表示はないものの、価格はきわめて良心的で一人酒には量も十分。地元客で賑わう大衆的な雰囲気も好ましく、さすが老舗と敬服させられます。難癖をつけるとすれば、なまじ事前情報が多いばかりに、その情報をも上回る感動まではないという、有名店にありがちな現象がここでも起きたことでしょうか。とはいえこの手の店の場合、二度、三度足を運んで初めて分かるよさが往々にしてあるものです。そのよさを発見するまで、何度か通ってみたいと思う名店でした。

庄助
宇都宮市塙田2-2-3
1700PM-2300PM
日祝日定休

末廣二合
かつを
ねぎま
ポテトサラダ
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 國酒の仕業

2015-06-20 18:12:11 | 居酒屋
六時の開店を待って一軒目に飛び込みました。訪ねるのは「國酒の仕業」です。
今回少し迷ったのは、一軒目にどこを選ぶかでした。宇都宮で呑むなどという発想が出てくるようになったのは、米沢「河岸や」の頃から知る店主がこの店を開いたからで、自分にとって宇都宮で呑むとはここで呑むことといっても過言ではありません。その一方で、わざわざ宇都宮に来たからには、教祖があらゆる著作で絶賛してきた「庄助」を一度は巡礼しておきたいという考えがありました。この点、「庄助」ならば五時に開き、駅からの経路としても無駄がなく、なおかつ万全な腹具合で巡礼できます。しかしながら、「國酒の仕業」が開店以来順調なのは分かっており、前回も直前に電話一本入れてカウンターに滑り込むという経験をしています。よって今回も事前の確認が無難だろうと見て、宇都宮に着いた時点で電話を入れると、カウンターに一つだけ空席ありとの返答が。ならば早い時間に乗り込むしかなく、一軒目は必然的に決まったというのがここまでの顛末です。自分の直後に来た一人客は予約満席であえなく退散しており、まさに紙一重の状況だったということになります。
年の瀬に訪ねた前回に対して今回は初夏です。まず意表を突かれたのは、店先から聞こえる風鈴の音でした。見れば軒下でかなりの数の風鈴が揺れており、しかも手前にある栃の木が茂って、蔵を半分以上覆い隠しています。店内に入れば、開け放った玄関から風鈴の音が聞こえ、吹き抜けの空間に反響して、何とも心地よく聞こえるという仕掛けです。店主はそこまで計算して店を造ったのでしょうか。酒については何かと半端な初夏ではありますが、この時期に再訪した甲斐はあったようです。

國酒の仕業
宇都宮市大通り5-2-8
028-612-4992
1800PM-2400PM
月曜定休

大那・姿・天明・而今・丈径
お通し(松前漬)
〆鯖・平目こぶ〆
はも白焼
かっけ
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 目加田酒店

2015-06-20 17:39:15 | 酒屋
宇都宮に着きました。目当ての酒場が開くのは六時、それまでの間合いを使い、散策がてら「目加田酒店」に立ち寄ります。大那、松の寿、仙禽といった有名どころもあるとはいえ、ここでしか買えない酒を選ぶのが順当というものでしょう。以前二度ほど買い求めて秀逸だった「若駒」を迷わず手に取りました。

★目加田酒店
宇都宮市一番町2-3
028-636-4433
900AM-2000PM
日祝日定休
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 8000系

2015-06-20 16:02:47 | 関東
新栃木で宇都宮線に乗り継ぎます。運用につくのは東武の代名詞8000系です。
かつては103系私鉄版と揶揄されたこの形式も、今や末端区間で細々と働くだけになりました。それに取って代わったのは、この8000系ですら名車だったと思えるような、何から何まで安普請の車両どもです。唄の文句のごとく、何でもないようなことが幸せだったと、今となってはしみじみ思います。宇都宮まで小一時間、信頼と実績の抵抗制御車に揺られながらの道中です。

★新栃木1602/451レ/1641東武宇都宮
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 6050系

2015-06-20 14:40:52 | 関東
発車まで10分少々となったところで改札をくぐると、ホームには会津田島・日光行の6050系6連による区間快速が据え付けられていました。中ほどにある新藤原止まりの編成に席を確保し、只今発車したところです。
宇都宮まで馬鹿正直に行くのであれば、二千円台中盤の料金を払って新幹線に乗るか、750円の追加料金を払って普通列車のグリーン車に乗るかのいずれかで、安普請のロングシート車など端から選択肢に入りません。ところがこちらは、臙脂のシートモケットを奢ったクロスシート車に、新栃木まで料金不要で乗車できます。こうなると、割高な新幹線や安普請の通勤電車に乗るのが馬鹿馬鹿しくなってくるのは必然というものでしょう。新幹線で直行直帰する以外の選択肢が極端に絞られて行く中、このような工夫の余地が残っているのは幸いです。

★浅草1440/45レ/1558新栃木
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関東一円はしご酒 2015初夏 - モスバーガー浅草店

2015-06-20 14:03:13 | MOS
小一時間の滞在で「居酒屋浩司」を辞去し、その足でMOSに飛び込みました。生きた化石とでもいうべき第14号店で酔いを覚ませば、目の前には東武の改札があり、そこから列車に乗れば渡りに船という寸法です。

モスバーガー浅草店
東京都台東区花川戸1-10-2
03-3844-1143
700AM-2300PM
第14号
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 居酒屋浩司浅草店

2015-06-20 12:52:03 | 居酒屋
浅草で昼から呑むということは、ホッピー通りで呑むことと事実上同義です。観光客がひしめく観音通りと伝法院通りを辟易しながらも歩き、目当ての店にやってきました。訪ねるのは「居酒屋浩司」です。
昼どころか朝から呑める酒場が軒を連ねるホッピー通りも、気付けば長らく無沙汰しており、記憶が確かなら三年以上の間が空いたように思います。年に数回足を運ぶ横須賀と違い、これほど無沙汰してしまった理由を挙げるとすれば、昼から呑める酒場として考えた場合、ホッピー通りの酒場が画竜点睛を欠くからに他なりません。
通りの両側に大衆的な酒場が軒を連ねて、背中に哀愁漂う中年男がカウンターで独り酒を酌むという雰囲気は、もちろん悪くはないのです。しかし、浅草という土地柄もあるのか、客層がほんのわずかに俗で、品書きも眺めるだけで高揚するまでには至らず、価格設定もこの手の大衆酒場にしては必ずしもお安くはありません。純然たる大衆酒場の居心地、カウンターに立つ人々の立ち振る舞い、居合わせた隣客の所作といったものに関しては、何といっても横須賀の大衆酒場に一日の長があります。あくまで画竜点睛といった程度のわずかな違いとはいえ、それがホッピー通りから足を遠ざけてきました。今回久方ぶりに立ち寄ったのも、行きがけの駄賃という大義名分があってのことで、それ自体が活動の主題になりうるかといえば、必ずしもそうではないというのが率直なところではあります。
かくして久々に立ち寄ると、まず驚いたのは店内が改装されていたことです。コの字カウンターを中心にした造りは同じでも、以前に比べ店が一回りか二回り小さくなったようで、内装も小ぎれい、悪くいえば安普請になっています。直截には、現代的な建売住宅のようとでもいえばよいでしょうか。少なくとも、店内を観察するだけでも楽しめる次元の店でなくなってしまったのは事実です。
もっとも、改装を機に似て非なる店に変わり果ててしまうところが往々にしてある中、それ以外は何もかもそのままだったのが救いでした。細い眼鏡をかけた女将も、カウンターの中心で湯気を立てる煮込みの大鍋も、当然ながらそのままです。大人数のお客を通りに面したテーブルに通し、カウンターは一人静かに酒を汲む中年男ばかりという雰囲気が好ましく、開け放った間口から吹き込む風にも心地よいものがあります。噛めば噛むほど味が出る煮込みもおいしく、ホッピー通りで呑むならここだと再認識した次第です。

居酒屋浩司浅草店
東京都台東区浅草2-3-19
03-3844-0612
平日 1500PM-2300PM
土日祝日 900AM-2300PM
月曜定休

生ビール
ホッピー・中
お通し(いか大根)
煮込
カツオ刺
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関東一円はしご酒 2015初夏 - 出発

2015-06-20 11:21:23 | 関東
そこそこの時間に目覚め、なおかつ快晴とはいわないまでもそれなりの好天となりました。前回の日帰りでは横浜を訪ねたわけなのですが、本日は宇都宮を目的地とします。日帰りにはやや遠く、さりとて一泊するほどでもないという中途半端な距離が災いして、必然的に素通りが多くなる宇都宮ですが、北関東三県の中で、栃木は今年唯一未踏のままということもあり、今回がよい機会と思い至った次第です。
新幹線に頼るような距離ではなく、さりとて安普請の通勤電車で行くのも興ざめです。まずは浅草で昼酒をあおり、その足で東武電車に揺られて行きます。そうすると、現地に着くのとほぼ同時に呑み屋が開き、時間配分としてもまことに理想的という寸法です。教祖があらゆる著作で激賞している「庄助」を筆頭に、少ないながらも店の心当たりはあり、終電まで呑み歩くに不足はありません。むしろ、終電の時間を気にしながら呑むよりは、心行くまで呑んでからカプセルホテルかネットカフェに飛び込んで、翌朝帰るのも一案ではないでしょうか。


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