伝授! 理系の就職

理系の就職は小手先の就職テクニックでは成就しない。在学中に専門能力と知的体力を高め、就職活動で自分の価値を極大化しよう!

-15- 実社会経験を積もう(2)

2005年08月29日 | 就職

学生時代に実社会経験があれば、自分の勝手な理想と就職してからの現実のギャップは大きくならずに済みます。

皆さんの先輩達が、仕事の現実と自分の理想とのギャップでどのくらい悩んでいるか、もう少し深堀りをしましょう。

上の表(拡大版)は、失業してしまった人たちが次の仕事が見つけられない理由です。若年失業者で圧倒的に多い理由が、「希望する種類・内容の仕事が無い」です。

この言い方ですと、適職を見つけられない理由を日本の社会のせいにしているように聞こえますね。

まるで、自分に合った仕事を社会が用意してくれるとでの錯覚しているかのようです

さて、こういう人たちは結局どうなるのでしょう。反骨心を持って会社を辞める位の人たちですから、グレードアップした仕事を見つけているのでしょうか?

下のグラフは、離職した人が次にどういう仕事についたかを調べたものです。残念なことに、正規社員として再雇用される割合が減って、非正規社員の率が上がっています。(拡大版

つまり、新卒の時に一度夢敗れたら、復活するのは難しいのですそりゃそうですよね。自分より若くて馬力のある後輩がどんどん社会に巣立ってくるのですから。

ですから、学生時代というのは自分の人生を決めるために、大変重要な時期なのです。

学生時代は学問を修めると共に、自分の力を社会で活かすにはどうすれば良いかを経験しておく時期でもあります。

もう一つグラフがあります。

下のグラフは最近の若者の仕事に対する意識の調査結果です。 理想的な仕事は

 ①楽しい
 ②安定収入
 ③専門知識・能力が活かせる

・・・と続きます。

その通りです。ただこの3つは誰かが与えてくれるものではありません。自分の適職は自分で見つけるしかないのです。そして、そのための能力を師匠の元で懸命に磨くのです。

プロ野球の選手が、お立ち台で「好きな仕事をさせてもらったうえに、こんなに声援までしてもらって、本当に嬉しい」とよく言いますよね。

その通りなのですが、彼らは我々凡人では出来ない努力をし、鬼コーチの特訓にも歯を食いしばって耐えて来たはずです。凡人には到底「好きな仕事」とは言えないと思います。それを「好きな仕事」と言えることに、一種の迫力を感じませんか?

今まで何度も申し上げてきた『ライフワークを見つける』ことは、自分にとっての理想的な仕事を見つけることです。そしてその道のプロとして生きていける能力を身につけることです。

ライフワークを見つけるにも、社会の流れや需要を知らなければなりません。また、プロとしての実力を蓄えたら、その力を最も発揮できる舞台を見つけないといけません。

私の経験でも、自分のライフワークとした光ファイバ通信は半導体は、例えどんなにしんどくても、辛くても、笑って耐えられます。徹夜をしても楽しくてしょうがありません。辞めようなんて思う暇もありません。今でもそれは続いています。

さあ、就活が迫ってきてから慌てても後の祭りです。低学年からバイトでもインターンシップでも何でも利用して、プロの厳しさを実感してください。社会の仕組みを知ってください。社会が何を求めているかを知ってください。その中から、自分の天職と自分が活躍できる企業をみつけましょう。

-14- 実社会経験を積もう(1)

2005年08月27日 | 就職

折角厳しい就職戦線を勝ち抜いて社会人になっても、1~3年で止めてしまう人が徐々に増えています

冒頭の棒グラフは、1990年から2003年までの新入社員の離職率の推移を示しています。但し、文系と理系の区別はされていません(厚生労働省HP「平成17年版労働経済白書」)。拡大図はこちらです。

1990年でも、4人に一人が3年以内に辞めていますね。その後徐々に増えて、2000年には3人に一人が辞めています

90年代は、日本経済が「失われた10年間」と言われた厳しい時期で、退職してもそう簡単には次の職は見つからなかったと思います。

それなのになぜ辞めたのか。統計局の調査結果があります(厚生労働省HP)。

拡大図はこちらです。理由は4つですね。 

  ①収入   ②安定   ③適性   ④仕事がきつい

これは、本人にとっても会社にとっても、大変不幸なことです。もう少し仕事の実態を調査・理解していれば、こういうことにはならなかったはずです。

「働く」ということに対する自分の想像と現実がマッチしなかったのでしょうね。

面接訓練などの就活テクニックに頼りすぎ、肝心な自分の能力アップ・自己分析・企業研究が十分でなかったのではないでしょうか。

私にも実体験があります。

80年代後半はバブル経済でした。企業は新入社員を大量に獲得するために学生の鼻先にアメをぶら下げました。

私もリクルータをしていたのでよく覚えているのですが、会社説明会後の大宴会は勿論、会社見学の時に万博の入場券までつける企業もありました。

そういう風にして、「なんだ会社ってこんなに楽なところか」と錯覚をして入ってきた新入社員は、結局使い物になりませんでした。

その時に私の部下になった某旧帝大系大学出身の新人は、研究者としては超優秀でしたが、仕事に対するプロ意識が全く身につかず、出来ない理由を百も並べて涼しい顔をしてました

彼はすぐに私の部署を離れましたが、結局昇進はかなり遅れているようです。

逆にバブル崩壊後の就職氷河期に入ってくる新入社員は、殆ど例外無く優秀で仕事ができる人ばかりでした。

この違いは何でしょうか。学生の能力が違うわけではありません。違うのは社会人になる覚悟の有無でした。

バブル期に会社研究もせず売り手市場で楽々入ってきた学生と、就職氷河期に会社研究と自己のスキルアップを十分に積み、厳しい就職戦線に生き残った学生では、「給料を貰う」ということの意味の理解度が全く違いました。

-13- 刺激を求めよう

2005年08月26日 | 就職

最近はインターンシップ制度の導入が推奨され、学生は企業での実習がやりやすくなりました。

この制度を使わない手はありません。

上の表は、厚生労働省のHPの「平成17年版労働経済白書」から抜粋した高校生のインターンシップへの参加目的です。大きい表はこちら

皆さんより若い高校生が大変まじめに就職を考えていることが分かります。

過半数の高校生が

  • 働くことがどういうものか体験したい
  • 就職で希望する業種・職種の実務

を目的としてます。さらに4人に一人が

  • 業種・職種の専門能力・知識を習得

という大変前向きな目的をもっています。

私が学生の頃も、大学に「企業実習」という単位があり、NTT(当時は電電公社)の東海村の研究所で一ヶ月実習をしました。

当時NTTは世界で最高性能の光ファイバーを開発していました

大学の研究室では、デジタル信号を光に変換する「半導体レーザ」の研究をするつもりでしたので、NTTで光ファイバーの研究をお手伝いすることで、光通信の2大構成要素の双方を研究することが出来ました。

流石に超一流の研究所だけあって、たった一ヶ月で卒業研究に匹敵する沢山のデータをとる事が出来ました。

また、一流の研究所の雰囲気とか、研究者に必要な資質とか、日々の仕事ぶりとかをつぶさに見ることが出来、随分と刺激を受けた記憶があります。

私にとって、大学生活後半に矢継ぎ早に起こった 

 ①光通信というライフワークとの出会い 
 ②師匠との出会い
 ③インターンシップによる超一流研究室での研究見習い

という3つの出来事は、その後の人生を大きく変えてくれました。

Coffee Break[04] エンジニア採用のグローバル化

2005年08月23日 | 就職

昨日の日経の綴込み別冊は「日本企業がロシア人技術者の採用に本腰」というテーマでした。

ロシアを単なる市場として見るだけではなく、技術開発拠点としても重要視するとのことです。

以前、『-02- エンジニアの能力と給料~国別格差~』という頁で、「中国やインドの優秀なエンジニアが日本人の3分の1以下の人件費で調達できる。この現実にあなたはどう対応しますか」というお話をしました。

今度はロシアです。上の表を見ると、ロシアの人件費は中国やインドほどは安くありません。しかし、日本よりは確実に安いです

また、現地開発 現地生産 現地販売をする方が、その国に受け入れられやすいことは事実です。

ITベンチャーだけでなく、複数の大手電気メーカも開発拠点を作るようです。

 

私の知っている範囲でも、ロシアの科学技術はソ連時代に長く鎖国状態にあったため、西欧と違った発展のしかたをしてきました。

国立の科学アカデミーがあり、優れた論文はそこに掲載されるだけで、長く西側の科学者の目に触れることはありませんでした。

また彼らも国外の論文を読む機会は限定されていました。

しかし、それでもレーザの発明は、欧米とほぼ同時でしたし、確かアルフェロフという科学者が何も参考文献無しで、他国とほぼ同時期に半導体レーザの動作実証をしています。

そういう優れた資質を持つエンジニアがロシアには沢山居ると思います。

外国人エンジニアを雇えば、それだけ国内の採用人数は少なくなります。皆さんのライバルはどんどん増えていきます。しっかりと力をつけましょう

 

-12- 師匠を見つける

2005年08月23日 | 就職

ライフワークを見つけよう(2)で、「第4の理由が付け加わり、私は迷わずこれを自分のライフワークと決めました」という意味深なことを書きました。

その「第4の理由」とは、師匠を見つける ことです。

いくら自分で「これこそが自分のライフワークだ」と思うものを見つけても、あなたはなんと言っても世間を知らないひよっこです

自分を正しい方向へ導いてくれる師匠は必ず見つけましょう。しかも、師匠の良し悪しで、あなたの人生は天と地ほど変わってしまいますよ。

優れた師匠がいてこそ、オンリーワンやナンバーワンになれるのです

参考までに、私の場合の師匠は光通信の世界的権威でした。何と、私の母校は世界に4箇所しかない光通信の地の一つ だったのです。

中核となる教授を筆頭として、4人のバリバリの助教授がいました。どの先生方も、誰もが参照する伝説的な論文を何本も執筆されており、米国AT&T(現在のルーセントテクノロジー)のベル研究所に留学もしておられました。

また業界への発言力も大変大きく、どんな大きな電気メーカや電線メーカの役員でも、この先生方の指示には逆らえませんでした。

私はこの中のナンバー2の先生に弟子入りすることが出来ました

弟子入りの時のエピソードがあります。

その先生と私は所属の学科が違いました。私は理学部の物理系の3年生、先生は大学院の工学部所属の研究所に所属。

ですから、普通ならば卒研では入れてもらえないのですが、私の学科には一度も使われたことはなかったのですが、一応そのルートが年に3名分だけあることがわかりました。

それが分かればしめたもので、その先生が電子工学科の教授会に出席していたところを、不敵にも外に呼び出して直談判しました。前代未聞だったそうです。

さて、皆さんの場合はどうですか? 何も教授だけが師匠とは限りません。どこかのITベンチャーの社長かもしれません。或いはインターンシップで行った先の部長さんだったりするかもしれません。

もし、学外でいい先生が見つかったのならば、兎に角押しかけていけばいいのです。大学の先生も人の子です。慕われて面倒を見ない人はいません。

弟子になる方法は先生が考えてくれるでしょう。研究生とか聴講生とかね。

また、進学するときには当然その大学院を受験して、その研究室を指名しましょう。

大学側としては、そういう師匠と慕われる先生をどんどん増やして欲しいと思います。師匠と慕われない先生は査定が下がる仕組みの導入も必要だと思いますが、いかがでしょう 大学も淘汰の時代です。師匠のいない大学からは志の有る学生はどんどん逃げ出すでしょう

-11- IT業界で重要な資格

2005年08月21日 | 就職

 Coffee Break[03]でIT業界の資格を紹介しましたが、実際にIT企業で採用の仕事をされているjobansenjuさんに『重要な資格』について質問してみましたところ、快くお返事を頂きました。

今就職活動している学生に言っているのは、「将来みなさんが、会社の中核を担う頃には、皆さんの後輩になる人は基本情報処理技術者資格を持っているのが当たり前の人たちが入社してくると思います。」と話をしています。つまり現在の学生には、基本情報+αの資格取得を目指し、かつαの部分は自分がNW技術者になりたければNW関連のベンダー資格、DB技術者になりたければオラクルなどの資格と、やりたい仕事に直結した資格取得を目指して欲しい、とアドバイスしています。

 jobansenjuさんの会社がどういうお仕事をされているか、詳しくは分かりませんが、会社によって必要なスキルは違うと思います。

冒頭のグラフは、情報処理試験の毎年の合格者数の推移です。拡大図はこちらです。

jobansenjuさんがおっしゃるとおり、基本情報処理技術者はは年間約3万人が合格していますね。

また、最近注目を集めているのが、情報セキュリティアドミニストレータとテクニカルエンジニア(システム管理)であることも分かりますね。

大学の低学年から、インターンシップとかアルバイトで色々な会社に入り込み、必要な資格やスキルを教えてもらうといいですね

jobansenjuさんありがとうございました

尚、この資料の出所は「独立行政法人 情報処理推進機構 情報処理技術者試験センター」のホームページで、もりうめがグラフ化したものです。

-10- 境界領域を目指そう

2005年08月13日 | 就職

さて話を戻して、ライフワークをどうやって見つけるのかを簡単に説明しましょう

・・・・・とはいっても、あなたに合っていて、しかもこれから花開く技術分野。そんなものが簡単に見つかるとは思えません

一つキーワードがあります。 『境界領域』 です

私も物理と電子工学の境界領域で光通信という境界領域を見つけました。

人間は無から有を作り出すことは出来ません。AとBを足してCという新しい物を作り出します。洗濯機と食器棚を足して食器洗い機ができたように。

これからもきっとそうでしょう。

今をときめくIT長者も、かれらが学生だった頃のIT産業は色々な技術の融合が始まったばかりで、まさに境界領域の分野がゴロゴロしていたと思います。

自分の身の回りを見渡して、境界領域で新しい芽が出始めてないか探してみてください。皆さんの初々しい感性で世間の動きと学問の世界を見比べてみてください。

それと、自分の性格や能力が何に向くかも、早めに考えましょう。

「勉強は人一倍好きだけど、人前で話すのはどうしてもいやだ」という人が、無理してコンサルタントになろうと思わなくてもいいのです。

また、「化学実験よりも、経済や政治の動向を論じる方が好きだ」という人が、無理して母校の教授になろうとしなくてもいいのです。

こういう「自己の気付き」を就職活動が始まってからする人がいますが、理系の場合、それでは手遅れです。

  1. 自己の適性を理解してこそ、ライフワークを考えることが出来ます。
  2. ライフワークが決まってこそ、就職先を考えることが出来ます。

この順序は絶対に間違ってはいけませんよ。

だから、「自己の気付き」は大学2年生頃から始めないといけない のです。

遅れると取り返しがつかないので、大学が主体となって、学生全員に適性試験を受験させて、学生の注意を喚起するくらいのことをしないといけません。

それ位重要なことだと思います。

 

さて、最近このブログに訪問して頂く方が増えてきております。

どういう方に読んでいただいているのか、是非知りたいと思います。学生さん、大学職員の方、企業の方、就職業界の方・・・・ いろいろな方からご要望・ご批評を頂き、より良い内容にしていきたいと思っております。匿名でも大歓迎です。

 下のコメント欄
 moriume_2005@goo.jp
 moriume@dol.hi-ho.ne.jp

のいずれかでお待ちしております。

 

Cofee Break [03] へぇ~!

2005年08月12日 | 就職
IT業界資格と就職ガイドブック

新星出版社

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。 

「へぇ~!」っと、思わず感心してしまいました。

皆さんの参考になる本がないかと思い、最近、本を何冊か購入してます
その中で、思わず感心  した本が、この本です。

最近、IT業界を目指す学生さんが増えているので買ってみたのですが、この業界にどんな業種があるのかが一目で分かりますね。

また、

  1. どういうお仕事か
  2. どのくらいの年収が得られるか
  3. どういう資格が必要なのか・どこで資格が取れるのか
  4. どういう性格の人が向くのか
  5. 将来性はどうか・どういう企業が募集しているのか
  6. どのくらいハードな仕事か
  7. 大学と専門学校のどちらが有利か

まで載っていて、IT業界を俯瞰するには手ごろな入門書です。著者の高作さんは120社以上の人材募集情報を調査されたそうです。脱帽

ちょっと驚いたのは、歳をとってからのことも書いてあること。「プロジェクトマネージャ」とは管理職・責任者のことですが、なんと経産省認定の国家試験があるそうです。

でも、本の情報だけ自分のライフワークを選ぼうとするのはせっかちです。必ず自分の足と目で確かめてください。私の勤める会社にも沢山のIT技術者がいます。彼らの仕事ぶりも今後随時紹介しましょう。

この業界に進もうとする大学生は、専門学校に通うことも必須のようです。それと、アルバイトやインターンで予備体験をしておく必要もありますね。


私の業界もハードですが、この業界もハードそうです。希望している人は体力をつけましょう。


高作さんのメッセージ
 『好きでなければ意味が無い。面白くなければやる価値が無い』
は、大いに共感できます。私から皆さんに申し上げている『ライフワーク』に通じるものがあります。

-09- 管理職か専門職か

2005年08月11日 | 就職

皆さんには随分先の話になりますが、40歳を過ぎると、管理職と専門職のどちらかの選択をすることになります。

私は、管理職を選びました。でもちょっと失敗だったかなと思っています。

管理職を選ぶと、収入は増えやすいです。また、「○○長」とか「○○リーダ」という肩書きがあると、世間体も悪くはありません。

でも管理職はその企業のしきたりや人脈には強くなりますが、社外へのアピールの機会は少なくなります。

一方、専門職で貫くと、社内で「オンリーワン」になれる可能性が高いです。誰にもまねが出来ない経験と見識を持つからです。また、最近は管理職と同程度以上に専門職の処遇を高くするという風潮も一般化してきました

それに、専門職としていい論文や特許を書き続けていると、当然ながら社外からの注目も高くなり、好待遇で転職という機会も増えます。転職しない場合も社内で有利な立場に立てます。

勿論、管理職でも社内外にアピールする手はいくらでもあります。世間が必要とする特別な能力は、その気とセンスさえあれば学習することが出来ます。私もちゃんと特殊な能力を持っていますよ。

そういうことができるのは、やはり若い頃から継続して頑張ってきた分野だからです。

-08- ライフワークを見つけよう(3)

2005年08月11日 | 就職

一生の仕事を決めるということは、その道で40年間飯を食うという覚悟を決めるということです。家族も養わねばなりません。

『継続は力なり』という言葉がありますが、この言葉の重みは30歳後半になると身にしみて分かります。尻軽に自分の技術分野を変えていると、歳を取ってから初心者に戻ることになり、大成している人は殆どいません。

ということは、最初にする仕事が自分の人生を大きく左右するということです。

ですから、『ライフワーク』と呼べるだけのテーマを見つける必要があるのです。

ところで、産業には生き物と同じく一生があります。
「幼児期」「成長期」「円熟期」「停滞期」とでも言えば分かりますよね。

この4つの期の中で、技術者がもてはやされるのは「成長期」「円熟期」で、優秀な人が大勢集まり、評価や収入も高くなります。

ならば、成長期に入った産業を選べばリスクは少ないですね。

でも、そこに落とし穴があります。今や一つの産業が育つ期間は大体30年です。幼児期が10~15年。成長期が10年、円熟期が5~10年。

ということは、成長期の産業に入っても、右肩上がりは15年くらいしか続かないのです。その後は、企業と個人の生き残りをかけた競争が始まります。

ということで、ライフワークは出来るだけ、幼児期の産業の中で見つける必要があります。そうすれば、引退するまでその産業で食っていけます。

また、ライフワークとして人一倍勉強をし、人脈も広げておけば、仮に停滞期に突入したとしても、生き残りは十分可能になります。

私が見つけた頃の光通信は、幼児期の終わりごろだったと思います。今全盛のバイオ産業やIT産業は、一生のどの時期に来ているのでしょうか。

-07- ライフワークを見つけよう(2)

2005年08月11日 | 就職

私が学生の頃、光ファイバ通信は、大学と企業で研究が始まったばかりで、世間からは殆ど認知されていませんでした

光ファイバを使うと銅線のケーブルでは不可能な動画の伝送が出来ることや、光ファイバの原料はガラスなので地上に無尽蔵にある、ということを講義で教えてもらうと、ますます関心が出ました

しかも私が探していた「物理と電子工学の境界領域」にぴったりでした。光学や量子力学は物理の領域ですが、回路理論を応用した分布定数や、デジタル変調は電子工学の分野でした。これを全部マスターしている人はそれほどいないはずです。

つまり、その頃の光通信は

  1. 研究が始まったばかり
  2. 将来が有望な産業分野
  3. 境界領域で自分でも頑張れば第一人者になれる可能性がある

ということで、私にとっては3拍子揃ったテーマでした。後で述べる第4の理由が付け加わり、私は迷わずこれを自分のライフワークと決めました

結果的には、技術者として光通信用の半導体レーザが自分のテーマだったのは最初の10年で、その後は光ディスク用の半導体レーザや超LSIの開発に携わっていますが、学生時代に半導体や高周波回路に関する基礎をみっちりと身につけることが出来たことが、今の私の源泉になっています。


皆さんがデビューする現代の社会は、私の時よりも更に混迷の度合いを増しています。

ですからこそ、『これは自分の一生を託すテーマかも』・・・と思えるものを是非見つけてください。

惚れたテーマならば、食べることも寝ることも忘れて没頭できます。

そうやって身につけたものは強いです。だれにも負けません。

(画像は住友電工のHPからコピーさせていただきました。)

-06- ライフワークを見つけよう(1)

2005年08月11日 | 就職

混迷の時代。
変化の時代。

経済がよりグローバル化し、産業の興亡が激しいこの時代を、あなたはどう乗り切りますか?

答えは「誰にも負けないものを持つ」ことです。

それが基礎学力であろうと、技術開発力であろうと、起業する力であろうと構いません。それこそが、あなたが最後まで生き抜く力の源泉となります。

受身になってはいけません。あくまでも自分から攻めること・・・これが重要です。

それには、在学中に「これぞ自分のライフワーク」と言えるものを見つけることです。見つけて徹底的にそれを自分のものにすることです。

私の場合、大学内でそれを見つけることが出来ました。

電子工学科に行きたかったのに応用物理学科にしか入れずに1年間ふてくされていた私は、「是非、物理と電気双方の知識を身につけ、その境界領域で研究テーマを見つけよう。」というふうに、考え方を変えました。

そして、両方の単位をほぼ取ってしまいました、一年余分にかかりましたが・・・・。

でも見つけました。光通信という新しい技術分野を。

今でこそ、Bフレッツとかで、普通に光ファイバーが家庭に入る時代になりましたが、当時は「まあ、海底ケーブルにでも光ファイバーを使ってみようか」という段階で、誰もがBフレッツが実現するなんて信じられない時代でした。

そういう時代に、「皆さん、これからはね、光の時代なのです。光ファイバーが敷設されると、電話代は距離と関係なくなり、時間だけで決まるようになります。」と真顔で学生に説いている教授がいました。

-05- 専門能力がモノをいう(2)

2005年08月08日 | 就職

大学での研究は、修士の場合で高々2~3年です。社会に出てからの20~30年と比べると、単なる学習期間のように思えるかもしれません。

ところがそうではないのです。企業は、即戦力且つ将来その道(とかとかとか)の権威になれる人材を求めています。

ですから、、『マッチング面談』で、

  1. ロボットの姿勢制御の研究をしてきた学生が、産業用ロボットの姿勢制御をする部署とマッチングをする
  2. 画像信号の圧縮伸長の研究をしていた学生が、MPEG2コアと情報家電用マイコンコアを集積した最先端のLSIの設計部署とマッチングをする

ようなことが沢山起きるのです。進んだ企業では学生の8割近くがマッチングで指定配属になっていると思います。

実は、私自身も、学生のときに『マッチング面談』と『指定配属』をしてもらいました。当時としては相当珍しいことでした。

会社見学をするとき、見学する開発部門をこちらから指定しました。

見学で私に説明をしてくれる人は、一年後に私の上司や先輩になる可能性がありましたので、現在の開発課題や開発方針を聞き、かなり専門的に突っ込んだ議論をしました。それは、その部署の技術レベルを知るためと、自己PRのためでした

そうなのです。私の場合、『会社見学=マッチング面談本番』だったのです。

お蔭様で見学した全ての会社からラブコールを頂きました。しかも『部署指定』でのオファーでしした。嬉しい悲鳴でしたが、自分が最も活躍できそうな部署に決めさせてもらいました。

選んだ会社の採用試験が終わった日も、挨拶方々、私が選んだ部署を表敬訪問したところ、当時その部署で課題だった『璧開』という技術を教えてくれと頼まれ、社員の方々の前で実演しました。

私としては、筆記試験でMaxwellの方程式を書き損ねるというミスを犯したため、指定配属の駄目押しのつもりでした。そして一年後、ちゃんとその部署に配属になりました。

このように超大手電気メーカを相手にして、自分の方が相手を品定めし、自分の希望通りに就職『部門』を決められたのは、自分の努力もありますが、もっと重要なことがあります。

それは、私の教授の存在です。この教授は半導体レーザや光通信の業界では世界的にかなり著名で、しかも業界事情に詳しく、各社のキーパーソンと親交がありました。その教授からいろいろな内情をを教えてもらえたのです。

この教授は今でも私の『師匠』です。『師匠』を見つけることの重要性は、いずれお話します。

-04- 専門能力がモノをいう(1)

2005年08月08日 | 就職

理系の就活には文系と徹底的に異なる部分があります

それは、専門能力が問われることです。

「あなたは何が出来ますか?」 「あなたは、我が社で何をしてくれますか?」

と聞かれて、文系のように「私は大学のサッカー部で鍛えた体力と根性で・・・・」と答える人はまさかいませんよね。 

じゃあ何と答えられますか?

「私は殆どの講義で100点を取ってます。言われた仕事は何でもこなす自信があります。」

「修論のテーマは○○でしたが、内容は○○です。国際学会でも発表しました。でも、それにとらわれず何でもやります。」

という人に企業が魅力を感じると思いますか?

答えは、例えばここにあります。これは富士通の自由応募の採用選考の流れです。内定までに面接が4回ありますね。いまどき、学校推薦でも3回、4回の面接は普通です。

注目して欲しいのはその後です。『マッチング面談』ってありますね。

このマッチング面談は最近大手では普通に実施されてます。これは、皆さんと私のような開発現場の責任者クラスの直接のお見合いの場です。この場で相思相愛になれば、その人はその部署に指定配属されます。博士課程の学生さんは、所長クラスとの面談になります。

多分6~7割はこのマッチング面談で、自分の配属部署が決まります。当然ながら、時代を引っ張る人気の部署と、その部署で活躍できる優秀な学生が結ばれることが多くなります。

つまり、ある分野で優れた能力を持つ学生さんから、順番に自分の希望が叶っていくことになります。 

(写真はNASAのフリー写真。専門能力の象徴として選びました。)

Cofee Beak[02] 松下電器が強さを取り戻した

2005年08月07日 | 就職
中村邦夫「幸之助神話」を壊した男

日本経済新聞社

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昨日のCoffee Break で紹介した本です。
よくここまで内情がわかるものです。感心

あゆの写真は松下電器の壁紙のHPからダウンロードしました。松下さん、私、著作権侵害してませんよね