MT MANIAX

苦難の時にこそ、われわれは隣人に対して寛大であらねばならない。そうしていれば世界はわれわれにとって寛大なものになるはず。

パッチギ!

2006年09月03日 | 映画
監督:井筒和幸、出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、尾上寛之、真木よう子、小出恵介、波岡一喜、日本、2004

 すごい映画を観ました。久しぶりに完璧な映画に出会った、という気分です。『パッチギ!』は2005年1月に公開された映画でしたが、愛媛県での公開がなかったため、見逃していた作品でした。それが、「今治映画鑑賞会」と「アイシネマ今治」のおかげで、映画館のスクリーンで観ることができました。非常にありがたく思いました。ありがとうございました。
 映画の中身については、今さらあらためて書くこともないのですが、Yahoo!映画の紹介文を引用します。

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1968年、京都。高校2年生の康介(塩谷瞬)は、担任からの指示で親友の紀男(小出恵介)と敵対する朝鮮高校に親善サッカーの試合を申し込みに行く。そこで康介は音楽室でフルートを吹くキョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れするが……。
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 井筒監督の作品で初めて観たものは『岸和田少年愚連隊 』(1996)でした。正直なところあまり面白く感じませんでした。しかし、次に観た『のど自慢』(1999)は映画館の中で感動して、涙がじわりと出てきました。それから、公開されるたびにほとんどの井筒作品は観るようにしています。
 そして今回、ようやく『パッチギ!』を観ることができました。完璧な映画でした。この映画、公開当時にどうして、もっともっともっともっと話題にならなかったのか、そして愛媛県で観ることができなかったのか、すごく不思議です。
 日本人と在日挑戦人という関係を軸にして多数の人物が登場しますが、最後に盛り上がりを作っていく畳み込み方が、尋常ではないぐらい上手いです。「あかん、こんなところで、この歌が、こんな風に流れてきて、こんな風に病院のシーンに流れてくると、泣いてしまう」と思ったのですが時すでに遅し。終盤にはボロボロ涙が出てきました。
 あまりたくさん書いていると、ネタバレしてしまいそうなので、詳しく書かないことにします。
 上記の終盤のシーンの他には、葬式で棺桶を通すために狭い家の玄関の扉を壊すシーンが、とくに良かったです。あのシーンは、本当に哀しかった。登場人物たちが置かれている現状に立ちはだかっている壁とは、いったい何なのだ。見えない壁のくせに、その壁は打破できないものなのか。玄関の扉を壊している今のように。このシーンは、プロデューサーである李鳳宇さんが体験した実話を元にしているそうです。この文章を書いている最中、また涙が出てきそうになりました。
 全編を通して流れて、歌われる『イムジン河』も素晴しいです。映画の前半、朝鮮学校で吹奏楽部の学生たちがこの曲を演奏しているシーンで、背筋がゾクゾクとしました。名作の予感です。
 人の優しさ、哀しさ、歓びが詰まった映画でした。エンターティメントとは、こういう映画のことをいうのだなあ。色んな人にぜひ観て欲しいと思います。


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