MT MANIAX

苦難の時にこそ、われわれは隣人に対して寛大であらねばならない。そうしていれば世界はわれわれにとって寛大なものになるはず。

ゆれる

2006年08月15日 | 映画
監督・脚本:西川美和、出演:オダギリジョー、香川照之、日本、2006

 短編映画集企画の「female フィーメイル」(2005)で、女性監督の西川美和の存在を知りました。その企画の中での作品『女神のかかと』が印象的でしたので、お名前を覚えていました。今回、盆休みに帰省して大阪の映画館へ行く時間があり、各映画館の上映スケジュールを調べていると、監督の作品が上映されていることを知りました。この映画、期待していた以上によかったです。公式ホームページに掲載されてるあらすじを引用します。

--------------------
東京で写真家として成功した猛は母の一周忌で久しぶりに帰郷し、実家に残り父親と暮らしている兄の稔、幼なじみの智恵子との3人で近くの渓谷に足をのばすことにする。
懐かしい場所にはしゃぐ稔。
稔のいない所で、猛と一緒に東京へ行くと言い出す智恵子。
だが渓谷にかかった吊り橋から流れの激しい渓流へ、智恵子が落下してしまう。その時そばにいたのは、稔ひとりだった。

事故だったのか、事件なのか。
裁判が始められるが、次第にこれまでとは違う一面を見せるようになる兄を前にして猛の心はゆれていく。
やがて猛が選択した行為は、誰もが思いもよらないことだった──。
--------------------

 兄弟という関係を肯定した上での、兄弟再生の物語です。私にも弟がいますので、物語の世界に容易に感情移入することができました。
 私は、登場する「弟」(オダギリジョー)にも「兄」(香川照之)にも共感しました。私が実家を出て10年以上経ちますので、「弟」の持っている後ろめたさがよく分かります。しかし、私の性格はむしろ「兄」に近いため、「弟」に対して抱いている感情もすごくよく分かります。両人が抱えている後ろめたさ、悩みなど、気持ちのゆれがリアルに感じられました。心の闇の部分を、えぐり出されるような感覚でした。映画は面白かったのですが、観つづけるのがつらく感じました。西川美和監督が脚本も担当されています。こういう気持ちのゆれは、女性の方がうまく表現できるのかな、と思いました。
 ネットの掲示板で、「兄が智恵子を吊り橋から突き落としたのか否かがよく分からないので、ミステリーとしてはダメだ」という感想を目にします。しかし、智恵子を突き落とそうとしたのか、助けようとしたのか、はっきりとさせる必要はなかったのだと思います。西川美和監督からのメッセージをくみとることができれば、突き落としたか否かは重要ではないと分かります。
 キャスティングは最高でした。オダギリジョーも、香川照之も大好きな役者です。役にもぴったり合っていました。とくに香川照之は、役にはまりすぎていて怖かったです(笑)。香川照之の演技力は本当に凄い。田口トモロヲも、ピエール瀧も、蟹江敬三も好きな芸能人なのでポイントが高かったです。真木よう子も、こんな人って本当にいそうだなあ、と思わされました。違和感なし。唯一残念なことは、検察官役の木村祐一がうっとおしかったことです。こんな口調で裁判する人なんか現実に存在するのかなあ、と疑問に思いました。


最新の画像もっと見る