球形ダイスの目

90%の空想と10%の事実

映画メモ:すずめの戸締まり【ネタバレあり】

2022-11-20 | 趣味(旅行・娯楽・読書・食)
今巷で話題の"すずめの戸締まり"を見に行った。
解説とかは一切見ないで、素で感想を書いてみよう。
あまり整理できていないけど…

どんな話?
出身がおそらく岩手の海岸、東日本大震災で両親を亡くし
宮崎の叔母の元で暮らす高校生、岩戸鈴芽 (すずめ)。
彼女がひょんなことから近くの廃墟にある"禍(わざわい)"の封印を解いてしまい、日本全国に禍の予兆が起こる。閉じ師という、禍を封印する役割のソウタという青年に会うが、
迂闊にも自分が解いてしまった封印のせいでソウタが呪いに敗北。
ソウタを救うため、呪いの暴走を防ぐため、
鈴芽は日本を横断しながら各地で禍を封印していく。
最後は自分の出生地で禍を断ち、当時に縛られていた自分を清算する話。

どうだった?
細かい部分では解釈に迷う部分もいくつもあるが、
大きな部分での人間讃歌というべきメッセージ性が感じられ、鑑賞後の感動は、前2作(君の名は、天気の子)より高かったと思う。
扱っているテーマが"(禍と)人の心"であり、鑑賞した人によって何を思い起こし、何を感じるかは大きく異なるように思われる。
しかし、よく"多彩な解釈ができる作品は名作"とも言い、見た人がそれぞれに自分の意味を付けてこの映画を解釈するだろう。だから、"良い映画だった"と言葉にしてみたとして、その中身を言葉にしようとすると思ったほどは盛り上がらないのでは?そんな感想。
だからこの記事の内容で共感を得られることもあまり期待していない。
以下、自分の感じた良さを3つ述べてみたい。

①日本人の大人の心に寄り添った構成
恐らく今回のターゲットは日本在住の大人であるように思う。
基本的に実在する場所を描き、
今回なら宮崎、愛媛、神戸、東京、福島、岩手を知るそれぞれの人が、描かれている地を自分の経験とリンクしたものとして観ることが出来る。
自分は愛媛のフェリー、東京の中央線、福島の(大熊町周辺の6号線沿いの?)道路を自分の経験とリンクしたものとして見た。フィクションでありつつも、自分の知らないところでこんなことが起こっていました、という見方をすることもできた。

主人公の名字も"岩戸"となっていて日本神話を想起させるだけでなく、ソウタは日本神話の言い伝えをなぞり"閉じ師"の仕事をする。
このコンテクストを自分事として捉えるのは、(ある程度震災の記憶がある)成人以上の日本人であることが前提に作られているのでは。
じっさい、自分は当事者の気持ちで積極的に話の筋を見届けることとなった。

②普遍的な…扉・扉の中の世界・ミミズの意味するもの
物語には、扉・扉の中の世界・(負のエネルギーが形を取った)ミミズという概念が登場する。これらと、かつて自分が経験した震災という経験を結び付けずにはおれない。

扉は、自分のあずかり知らないところで開かれていく禍の時限装置。
扉の中の世界は、誰かの思い出。死にまつわる誰かの辛い過去。
ミミズは放置すれば地震になるという意味では自然災害の喩えだが、
人の不安の呼び覚ますものとしての役割が強く、
漠然とした"厭なこと"全般が形を取ったものと思われた。

③皆の"辛さ"
2011年の災害から10年(あるいは過去の災害にも遡り)、多くの人が"辛さ"を味わった。
鈴芽と環(叔母)の関係は、まさに"辛いときの人間関係"を具現化したものではなかったか。
決して仲が悪いわけではないのだが、肝心な時ほど心を通い合わせることが出来ない。言葉を失って、あるいは一方的に届かない言葉を投げかけ、互いに衝動的な行動に出てしまったりしていた。
自身は直接の経験はないが、このような困難は映画を視聴した多くの方が恐らく身を以って経験したことに違いないのだ。
自分の親族は経験したであろう苦しみのことを思った。
親族だから、自分がいくら苦しくても、助けなきゃならないという経験。
※このあたりは結構重いため、
 ソウタの友人である今どきの若者(芹澤)が、
 その軽い性格で鈴芽と環のいさかいを受け流し、 
 車も話も上手い事回してくれたので話がダレなかった。いいキャラです。
 だが、こいつの曲選びのセンスはアラフォーより古い。

辛いことに向き合って、誰かと手を取り合って、前に進む。
10代のスタミナいっぱいの少女が全力で禍と闘う。生きるって泥臭い。でも、それが素晴らしいんだ。
多くの人に見てもらいたい映画になっていると思いました。


おまけ:観ながら何となく思っていたこと
日本全国を行脚しながら禍の芽を摘んでいく…といえば
自分の世代では天外魔境シリーズを想像するが、今回のミミズというのが、
さながら暗黒ランを想像させるものだった。
あれも、"漠然とした厄災の表現"である。
日本神話時代から引き継がれる道具(天外魔境では聖剣、映画本編中では鍵)を用いてその厄災を封印するというところに共通項があって連想したのかな?

なので、シリーズファンの方は、
現代の一般人が天外魔境IIのようなことを頑張る話と思っても面白いかもしれません。
分かる人が少ないのは知ってますよ?


こういう映画のレビューを書くとき、事前に誰かのレビューを読んでから書いてしまうと、他の読者の使ったよさげな言葉を使ったり、分からなかった部分を教えてもらったりしながら"間違いがない"文章を書こうと考えてしまう。
ただ、自分が思った生の感想を無難なものに加工するくらいなら
自分が感想を文字に残す必要あんのか?と思い(プロにやらせておけばいい)、
今回何の外部情報もなく感想を書くことにした。

素人的にはこういう感想でした。
クリエータの方の意図は、どの程度伝わったのでしょうかね。見る側も目を肥やしたいと思う。

今後も、できるだけこっちに生の感想を書いてからレビューを読むようにしたい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 記録:副鼻腔炎のくすり | トップ | 映画メモ:竜とそばかすの姫 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿