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大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

読みました! 『チャーメインと魔法の家』(「ハウルの動く城」第3巻)

2013年06月02日 | BOOKS
 面白かった!
 購入して、もうすでに何度も初めに戻って読んでいます。
これからもきっと何度も何度も読み返さずにはいられなくて、そして毎回読むたびに発見がありそうなダイアナ・ウィン・ジョーンズならではの作品でした。

『ハウルの動く城3 チャーメインと魔法の家』
徳間書店
作 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
訳 市田泉


 もちろん、ソフィーもハウルも、二人の子どものモーガンも出てきます。
 設定は、第2巻の『アブダラと空飛ぶ絨毯』から2年後ぐらいのようです。

 主人公は、とにかく 「お上品 respectable」になるように育てられた、読書以外は何もできない女の子・チャーメイン。
 「respectable」には「社会的にちゃんとした・尊敬すべき・立派な・地位の高い」という意味もあるのですが、「respectableになるように育てられたのに身の回りの家事も何にもできない」というところが、なんとも皮肉的なのです。(日本の受験生も同じかも
 お父さんはパン屋さん(= baker)で、苗字もそのまま「Baker ベイカー」というところなんて、ソフィーが帽子屋(= hatter)で「Hatter ハッタ―」だったのと、同じですね。
「チャーメイン Charmain」の名前の「charm」は、「魅惑する・呪文・魔除け」という意味があるので、いかにも魔法とかかわりができそうな名前!

 今回の物語の舞台は、「ハイ(高地)・ノーランド」という山岳地帯の王国。第2巻にも登場した高齢のお姫様の国です。
 ソフィーが暮らしているインガリーは、ウェールズ(イギリス)と結びつきがあるように描かれていましたが、今回の「ハイ・ノーランド」は、出てくる言葉やキャラクターから、ドイツと結びつきがあるように感じました。魔法のドアは、ドイツにもつながってるんじゃないかしら。おじさんの部屋にある「魔法の書 Das Zauberbuch(ダス ツァウバーブーフ)」もドイツ語ですし。
(本の中では「ブッフ」とフリガナがありましたが、「ブーフ」かなぁと思います)
「High Norland」という地名も、「High German(高地ドイツ)」を思い起こさせます。
 主人公たちを困らせる「Kobold コボルト」もドイツ語。人を手伝うこともあるけれど、悪さもする小さな妖精です。独英辞典には「goblin」とあります。『ハリー・ポッター』シリーズのグリンゴッツの「子鬼」ですね。
「ラボック lubbock」「ラボキン lubbockin」も、語尾「-in」がついて変化させるところがちょっとドイツ語っぽい感じ。(ドイツ語では「-in」がつくと、名詞が女性形になります)「ラボキン」は女性だけではないですけれど、女性が産みますものね。


 今回も2作目までと同様に、一度読んだだけではちょっと難解かもしれません。
 これから読む方や、「1回読んだけど難しかった」という方に、3つのポイントをご紹介。
   (1)「Palimpsest パリンプセストの書」
   (2)「Waif 宿なし」
   (3)「Twinkle キラキラ」

(1)の「パリンプセストの書」ですが、書いてあったものを消して再度新しいことを記録した古文書(再録羊皮紙)のことを「Palimpsest」といいます。詳しく書いてしまうとネタバレになってしまうので控えますが、チャーメインと一緒に出てくる箇所は細部まで要チェックです。
(2)は「宿なし」。原書では「Waif」と呼ばれています。「waif」を英英辞典で見てみると、「a small thin person, usually a child, who looks as if they do not have enough to eat (小さくてやせっぽちな人、普通は子どもを指し、まるで十分に食事ができていないように見える)」という意味が載っているので、「宿なし」よりも「みなしご・浮浪児」という感じでしょうか?
 とにもかくにもチャーメイン同様に、やせっぽちなのによく食べるというところがチェックポイントの一つです。
(3)「キラキラ」。これは1巻と2巻を読んでいる方なら、登場シーンから笑わずにいられないのでは。
原書では「Twinkle」と呼ばれています。 
「Twinkle, twinkle, little star(=「きらきら星」)」をつい口ずさんでしまいました。
 舌足らずの英語はさぞかし翻訳が大変だったでしょうね。
キラキラのやることはしっかりちゃんと子どもらしいことですが、一つ一つがちゃんと意味あることなので、お見逃しなく!

 もちろん主人公チャーメインも問題解決に大きな貢献をするのですが、1・2巻同様に最後を仕切るのはやっぱり、あのコンビ・魔法使いハウルと火の悪魔カルシファー。
 ハウルもすごいけど、シリーズ通してカルシファーの活躍が大きいと思います。

 そうそう。カバーの色は空色でしたね!栞紐(スピン)も空色。
 屋根の上のキラキラ(Twinkle)が着ている服の色ですね。
 佐竹美保さんのカバーイラストが、今回もまさに絶品。
 中央奥の窓の外には、「動く城」が。アジサイとコボルト、イカをくわえたジャマールの犬もいます。裏表紙のイラストがなんなのかは、読んでからのお楽しみ。

 さぁ、私もまた新しい発見を探しに、本を開こうと思います。
 

<「HOWL'S MOVING CASTLE」(『ハウルの動く城』)シリーズ>
1.「Howl's Moving Castle」(1986)・邦題『魔法使いハウルと火の悪魔』
2.「Castle in the Air」(1990)・邦題『アブダラと空飛ぶ絨毯』
3.「House of Many Ways」(2008)・邦題『チャーメインと魔法の家』


<関連記事>
楽しみ!「ハウルの動く城」第3巻『チャーメインと魔法の家』
<参考サイト>
著者 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ Diana Wynne Jonesの公式ウェブサイト(英語)
House of Many Ways - Wikipedia(英語)

<おまけ
 作品の中でとっても美味しそうだったクランペット!下のリンクでバターたっぷりの画像が見られます。
クランペット - Wikipedia(日本語)
Crumpet - Wikipedia(英語)
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