で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1118回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ジーサンズ はじめての強盗』
モーガン・フリーマン、アラン・アーキン、マイケル・ケインというベテラン・オスカー俳優3人の豪華共演で贈るクライム・コメディ。
1979年のコメディ映画『お達者コメディ/シルバー・ギャング』を基に、真面目に生きてきた老人3人組が、突然の年金打ち切りに怒りを覚え、自分たちのお金を取り戻すべく銀行強盗を企てる大胆不敵な計画の行方をユーモラスに描く。
監督は、『終わりで始まりの4日間』、『WISH I WAS HERE/僕らのいる場所』で俳優と二足の草鞋のザック・ブラフ。
物語。
同じ会社で40年以上も真面目に働き、定年後は慎ましくも不安のない年金生活が送れるはずだったジョー、ウィリー、アルの親友3人組。
しかし、会社が買収された途端、年金の支払いが一方的に打ち切られてしまう。
おまけにジョーは、住宅ローンの理不尽な仕組みのせいで自宅差し押さえの危機に直面していた。
そして、ウィリーもある事情を抱えていた。
そんな時、偶然にも銀行強盗の現場に居合わせたジョーは、その手際の良さに感心し、自分たちも奪われた年金を取り戻すべく、銀行強盗を決行しようとウィリーとアルに持ちかける。
脚本は、セオドア・メルフィ。
オリジナル脚本は、マーティン・ブレスト。
出演。
マイケル・ケインが、腰の悪いジョー・ハーディング。
モーガン・フリーマンが、アルバートと同居するウィリー・デイビス。
アラン・アーキンが、ミュージシャンだったアルバート・ガーナー。
これぞいぶし銀ならぬいぶし金トリオ。
平均年齢は約83歳。なんと、モーガン・フリーマンが一番年下なのよね。
アン=マーグレットが、アニー・サントーリ。
こういう役こそ、いい役者の腕の見せ所です。この愛嬌と経験値は実は一番の年の取り方のお手本。
アラン・アーキンとは共演してて、阿吽の呼吸を見せてくれます。
ジョーイ・キングが、孫娘のブルックリン・ハーディング。
監督たっての希望で起用。前作でも出てたからですね。
マリア・ディッツィアが、娘のレイチェル・ハーディング。
ピーター・セラフィノウィッツが、元義息子のマーフィー。
ジョン・オーティスが、ペットショップ店長のヘスース。
アシュリー・アウフダーハイデが、孫娘のカニカ。
アナベル・チョウが、ルーシー。
キーナン・トンプソンが、スーパーの店長のキース・ショーンフェルド。
マット・ディロンが、FBI捜査官アーレン・ヘイマー。
『クラッシュ』で介護してた彼がここでは老人を追いつめます。あのギョロ目に睨まれたら怖いよ。
ジョシュ・パイスが、バンカーのチャック・ロフトン。
身近シーンで笑いをがっつり奪っていきます。
クリストファー・ロイドが、ミルトン・カプチャク。
最高のスパイスをぶち込みます。
実は、79歳でトリオより年下。
さすがのコメディセンスを発揮しています。
ほかに、シオバン・ファロン・ホーガン、ロリータ・フォスター、メラニー・ニコルズ=キング、ジェレミー・ボブ、ジェン・ポントン、など。
スタッフ。
製作は、ドナルド・デ・ライン。
製作総指揮: トビー・エメリッヒ、サミュエル・J・ブラウン、マイケル・ディスコ、アンドリュー・ハース、ジョナサン・マッコイ、トニー・ビル、ブルース・バーマン。
撮影は、ロドニー・チャーターズ。
画面の明るさがいいです。これが最後に効くのです。
プロダクションデザインは、アン・ロス。
衣装デザインは、ゲイリー・ジョーンズ。
編集は、マイロン・カースタイン。
ザック・ブラフとは名コンビ。
音楽は、ロブ・シモンセン。
会社に年金を停止された3人の80歳超え爺さんらがプロの指導を受けて銀行強盗をするクライム・コメディ。
3人のアカデミー俳優アラン・アーキン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンが体を張ったギャグを披露する芸達者とお達者ぶりに笑わざるを得ない。
クリストファー・ロイド、アン・マーガレット、マット・ディロン、ジョーイ・キングらで脇も達人揃い。
ザック・ブラフの丁寧なスタイルが演出のみのリメイクによって職人感が溢れて好感触。
構成要素のB級的まとまりが定番感強くも品と質でグレートなG級に。
笑えない現実を笑い飛ばす、腹と腰が痛くなる攻作。
おまけ。
原題は、『GOING IN STYLE』。
直訳だと、『様式で行く』です。
なんか慣用句っぽいけど、『俺らのやり方でやる』、『俺たち流を貫く』、『我を通す』って感じですかね。
『お達者コメディ/シルバー・ギャング』(1979)のリメイクなんですが、なかなかにパンチの効いた邦題だな、オリジナルもリメイクも。
もちろん、どちらも原題は同じ。
この邦題で、内容は分かるから、「だから、こういうのが見たい」という人は引き付けるだろう。
でも、これっぽいのはちょっとどうかな、と思う避けそう。
どちらにしろ、マイナスの印象は残る。
自虐的で悪いとまでは思わないけど、ちょっとダサいのと、原題にある当時者からの発信感がないというか。
「俺もジーサンズだ」、「わたしはバーサンズだ」と思えるか? ということ。
タイトルであえて侮辱しておいて、内容で覆すことで、客を味方に引き入れるという機能もあるかもしれんけど。
問題は、見る時にこの映画の観客層がこのタイトルを口に出すってことなんだよね。
『ゴールデン・シルバー! はじめての銀行強盗』とか『ゴーイング・シルバー! はじめての銀行強盗』とかどうかしらね? (ゴールデン・ボンバーっぽくしたのと銀行に行くとシルバーをかけてみました)
上映時間は、96分。
製作国は、アメリカ。
映倫は、PG12。
キャッチコピーは、「未来はいらない、年金を返せ! 最後に輝くのはシルバーだ。」
未来を取り戻そうとしている話(劇中でも、まだまだある余命の話をしてます)なのに・・・、どうしてこういう嘘浪漫をのっけたがるかなぁ。後半の文言はいいのに。
おいらなら、「謝罪はいらない、年金返せ! 輝けシルバー、ドウにかなるさ!!」てのは、どうかな?。
それか、「謝罪はいらない、年金返せ! 最後に輝くからシルバーなんだ!!」とか。
アメリカでは、“トリオ犯罪もの”は定番ジャンル。
『スコア』、『バンディッツ』(2001)、『9時から5時まで』、『デンジャラスな妻たち』、『モンスター上司』(これ『9時から5時まで』の男版か・・・)とか。
ま、そもそも今作が1979年作のリメイクですけどね。
老人強盗ものってのもそこそこ定番で、クリント・イーストウッドの『目撃』はそこにひねりを加えた感じ。
これは世界でもけっこうあって、ハンガリー映画の『人生に乾杯!』、日本でも『死に花』なんてのもありました。
毎度書いているけど、リメイクをやるときは宣伝はオリジナルへの敬意を示して欲しいのよね。特にオリジナルが見れない場合には見られるようにして欲しいよ。配信とかでいいからさ。
好みのいい友映画なので、ちょっと点数が甘いかも。
脚本のセオドア・メルフィは、『ヴィンセントが教えてくれたこと』、『ドリーム』の監督と脚本を務めている。
老人の成長、チームものの達人ともいえる方。
ネタバレ。
脇のキャラの拾い方がいいのよね。
アニーの孫の太っちょのダンサーっぷり。
ブルックリンへの子犬。
アニーとの結婚オチ。
ヘスースのプロぶり。
ウェイトレス、老人会のメンバーへのお礼。
年金を反故にすることや曖昧な説明でのビジネス(銀行のローン)は、法に隠れた詐欺みたいなもので、それは犯罪に近い。そこに法では勝てないから、無法で戦うという映画の娯楽という法の中でせめて留飲を下げてもらいたいものだ。
このバランスが難しい。
葬式かと思わせて結婚式というのは最高のエンディング。
甘いと言われようとも、こういう砂糖菓子のような映画がやっぱなくちゃね。