菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

頭を奪う。 『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』

2024年05月14日 23時14分03秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2355回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『エドガルド・モルターラ    
           ある少年の数奇な運命

 

 

 

 

19世紀イタリア、カトリック教会が、ユダヤ人の両親から6歳のエドガルド・モルターラはキリスト教徒であると連れ去る歴史・サスペンス・ドラマ。

実際の事件を基にしている。

 

映画『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』公式サイト | YEBISU GARDEN  CINEMA、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか大ヒット公開中

 

原題は、『RAPITO』。
『強奪』、『誘拐』、『戦利品』、『有頂天』。

英語題は、『KIDNAPPED』。
『誘拐』。

 

製作年:2023
製作国:イタリア / フランス / ドイツ
上映時間:134分
映倫:G

 

配給:ファインフィルムズ  

 

 

 

物語。

1858年イタリア、ボローニャ。
ユダヤ人街に暮らすモルターラ家に、時の教皇ピウス9世の命を受けた兵士たちが押し入り、何者かにカトリックの洗礼を受けたとされるモルターラ家の7歳になる息子エドガルドを連れ去ってしまう。
教会の法に則れば、洗礼を受けたエドガルドをキリスト教徒でない両親が育てることはできないからだ。

 

監督・脚本は、『甘き人生』『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』『シチリアーノ 裏切りの美学』などで知られるイタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ。

主演は、『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』のパオロ・ピエロボン。

2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

 

 

スタッフ。

監督:マルコ・ベロッキオ
製作:ベッペ・カスケット、シモーネ・ガットーニ、パオロ・デル・ブロッコ、ダニエラ・チェゼッリ
製作総指揮:アレッシオ・ラッツァレスキ
脚本:マルコ・ベロッキオ、スザンナ・ニッキャレッリ、エドゥアルド・アルビナティ
撮影:フランチェスコ・ディ・ジャコモ
美術:アンドレア・カストリーナ
衣装:セルジョ・バッロ
編集:フランチェスカ・カルベリ、ステファノ・マリオッティ
音楽:ファビオ・マッシモ・カポグロッソ

 

 

出演。

エネア・サラ (エドガルド・モルターラ(少年期))
レオナルド・マルテーゼ(エドガルド・モルターラ(青年期))

パオロ・ピエロボン (教皇(パパ)ピウス9世)
ファブリツィオ・ジフーニ (ピエール・ガエタノ・フェレッティ/異端審問官)

ファウスト・ルッソ・アレシ (サロモーネ(モモロ)・モルターラ/エドガルドの父)
バルバラ・ロンキ (マリアンナ・パドヴァーニ/エドガルドの母)
サミュエル・テネッギ (リッカルド・モルターラ/エドガルドの兄)
アンドレア・ゲルペッリ (アンジェロ・パドヴァーニ)
コッラード・インベルニッツィ (ギュディス・カルボーニ)
アウロラ・カマッティ (アンナ・モリシ)
フィリッポ・ティーミ

 

 

 


『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』を観賞。
19世紀イタリアのボローニャ、カトリック教会(教皇政府)が権力を行使し、ユダヤ人の両親から6歳のエドガルド・モルターラはキリスト教徒であると連れ去る歴史・サスペンス・ドラマ。
実際の事件を基にしている。劇中でも描かれるが、当時、世界中から注目された。
宗教の力、法の力、教育の力、立場の力、それが実際に行われるということの影響力など、さまざまな力の有り様を見せる。
なにより、ここにあるのは、時代はあろうとも、6歳で根拠の薄い内容から両親から切り離すという人望にもとる行為が正当なものとして行われる理不尽さ。
そこに立ち向かうとする親の愛をぶち阻む社会の力に打ちのめされる。
それでも、その力を破る力の登場してくる。
主人公を3つの視点、6歳の少年、その家族、教皇で滑らかに映っていくので、情況に観客を巻き込んでいく。
この内容なのに、夢の世界の主観でファンタジーさえも組み込根、ふわっとさせる。しかも、その夢の描き方で、その人物の内面と状況を絵で見せる。
ロケ地の力、適切に美術が画面を多い、時代に連れ去っていく。
そこを絵画的に切り取る撮影の的確さで映画の格調を味わえる。
古典的にザクっと提示される字幕の説明の切れ味が非常に好み。
80を超える巨匠マルコ・ベロッキオの軽妙さがこの重い話に対位法的に現実的な恐怖を纏わせる。これ好みです。その関係を深堀しないでスケッチをしていくことで、生活と時間が見えてくる。
家族対巨大組織の話でありながら、メインはそれに翻弄される6歳の少年のけなげさにやられます。実は、スティーブン・スピルバーグがこの事件を映画化しようと動いていたが、この6歳の少年役を見つけられず頓挫したというのを知ると、この2000人のオーディションで見いだされたエネア・サラに目を奪われる。彼の強さがこの物語全体を支配する。それはこの展開において、観客を引きずり回す。
権力者である教皇の怪物みと人間みを見事に同居させたパオロ・ピエロボンがつくり出した教皇ピウス9世は映画史上のベスト悪役の一人に挙げたい。さりげないけど、中ボスのフェレッティ/異端審問官を演じたファブリツィオ・ジフーニも素晴らしい。これにもう一人の悪役までいるし、さらにそれが後半さらに出てきます。もう悪役盛りだくさんです。震えますよ。もうね、この悪役勢ぞろいを倒せるのかと。未解決では終わらないです。映画を見たらわかります。
当時のユダヤ人の差別もじわじわと描きます。
ジャンルも盛りだくさんで、連れ去りのサスペンスで始まり、寄宿舎もの、宗教もの、裁判もの、家族ものと内容盛りだくさんなのに、ダイジェスト感がない。ちょっとした添え物の儀式シーンとかパワフルなのよね。キリストとのあるシーンは衝撃的ですよ。
事件ものでは白眉でしょう。
実話、歴史の凄まじさを存分に味わえます。
おごそかさだけでなく、物語として滅法面白いのです。
そして、これに近いことは、今も行われているのです。
もうね、教育ほんと大事。
神に翻弄される人の世の不条理に震える一本。



Movie Rapito - Cineman

IL CASO MORTARA E IL FILM DI BELLOCCHIO » Storia Glocale

L'enlèvement (Rapito) - Le Mag Cinéma

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

ダニエレ・スカリーズの著作『Il casa Mortara』に基づいているそう。

 

スティーブン・スピルバーグが、2016年頃にこの物語を監督するプロジェクトが動いていた。
教皇ピウス9世役にマーク・ライランス、中年エドガルド・モルタラ役にオスカー・アイザックをキャスティングしていたが、適切な子役を見つけることができず、プロジェクトは中止となった。

 

 

 

 

 

 

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