菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

で、結うん? 『DUNE/デューン 砂の惑星』

2021年10月18日 00時00分07秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1954回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『DUNE/デューン 砂の惑星

 

 

 

制すれば絶大な権力を得る砂の惑星に移住した、将来を期待された貴族が陰謀に巻き込まれるSFサスペンス・ドラマ。

フランク・ハーバートの伝説的古典SF巨編の一部を映画化。

 

主演は、『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ。
共演は、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド、デイヴ・バウティスタ、ゼンデイヤ。

監督は、『メッセージ』、『ブレードランナー 2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。

 

 

物語。

西暦1万190年、人類は多くの惑星へ移り住み、宇宙帝国を築いていた。
1つの惑星を1つの大領家が治め、皇帝の下で厳格な身分制度が敷かれていた。
いまや、機械文明は抑制され、人間が持つ能力を拡大する文明となっていた。

皇帝の命令でアトレイデス家は通称デューン(砂丘)と呼ばれる砂漠の惑星アラキスへと領地替えすることになる。
レト、ポールの親子は多大なるプレッシャーを感じていた。
なにしろ、デューンは絶大な効能を持つ香料メランジの唯一の生産地だったから。
しかし、デューンで親子を待っていたのはハルコンネン家と皇帝の陰謀だった。

原作:フランク・ハーバート
脚本:ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、エリック・ロス

 

 

出演。

ティモシー・シャラメ (ポール・アトレイデス)

オスカー・アイザック (レト・アトレイデス公爵)
レベッカ・ファーガソン (レディ・ジェシカ/側室)
ジョシュ・ブローリン (ガーニイ・ハレック/公爵家の副官)
ジェイソン・モモア (ダンカン・アイダホ/公爵家の副官)
スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン (スフィル・ハワト/公爵家のメンタート)
チャン・チェン  (ウェリントン・ユエ医師/公爵家の医師)

ステラン・スカルスガルド (ウラジミール・ハルコンネン男爵)
デイヴ・バウティスタ (ラッバーン/ハルコネン男爵の甥)

ハビエル・バルデム (スティルガー/フレメンのリーダー)
ゼンデイヤ (チャニ/夢の女性)

シャロン・ダンカン=ブルースター (リエト・カインズ博士)

シャーロット・ランプリング (ガイウス・ヘレネ・モヒアム/ベネ・ゲセリットの教母)

 

 

スタッフ。

製作:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、メアリー・ペアレント、ケイル・ボイター、ジョー・カラッシオロ・Jr
製作総指揮:ターニャ・ラポワント、ジョシュア・グロード、ハーバート・W・ゲインズ、ジョン・スペイツ、トーマス・タル、ブライアン・ハーバート、バイロン・メリット、キム・ハーバート
撮影:グレイグ・フレイザー
視覚効果監修:ポール・ランバート
プロダクションデザイン:パトリス・ヴァーメット
衣装デザイン:ジャクリーン・ウェスト
編集:ジョー・ウォーカー
音楽:ハンス・ジマー

 

 

『DUNE/デューン 砂の惑星』を鑑賞。
10191年宇宙、砂の星で若き貴族が陰謀に巻き込まれるSFサスペンス・ドラマ。
フランク・ハーバートの伝説的SF巨編の第一部の前半を映画化。
これは、SFにおける『ロード・オブ・ザ・リング』ですな。
実際、未来過ぎて、かなりファンタジーっぽい内容になってます。
話が壮大かつ設定が細かく、登場人物多めなので難しいと言われてますが、60年代の小説ですし、映画では話はかなり整理されていて大筋はシンプルな話になってます。
強い公爵家が陰謀で統治が難しい土地に領地替えさせられる話です。
さすがに50年前の小説ですから物語はそこまで面白いものではないです。
あ、これpart1です、なので、終わりはすっきりはしませんが、その詩的な雰囲気とその後への期待感で身悶えます。ヒットすれば、早くて3年くらいで続きが見られる。
膨大な設定をそぎ落として整理することで、現代化してます。
原作の超能的な部分を音楽と編集で見せてくれます。IMAXだとIMAXカメラでの撮影の画角変化も機能させているそうです。(私は大きめのスクリーンでドルビーで鑑賞しました)
多くのエンタメの元ネタの伝説的作品(『SW』、『ナウシカ』、『トレマーズ』、『マッドマックス3』、『リディック』などの影響元と言われる)だけあって、既視感がちょいちょい出てしまいますが、それを映像力と総合力で上書きしてくる。
なんといっても静謐で巨大な美術と自然描写が異世界へ連れて行ってくれる。
いうなれば、『2021年砂丘(DUNE)の旅』に出かける感じ。
知らない星へ旅させてくれるけど、そこにあるのは普遍的かつ現代的な地球の人類の姿。
元々にある男性性神話をより原書な古典性を取り込んだような女性性神話の拮抗が興味深い。性別、役割についての枠を壊そうというテーマが浮き彫りになる。
なにより、父母子の3つの信念の物語になっている。
キャスト全員、物語の空気に染まって埋没してくれて、豪華キャストが誰か分からにぐらい。人間性でなくその神秘性で染める。シャラメの幼さが貴種流離譚とメシア誕生を感じさせます。
お気に入りは、羽ばたき機(オーニソプター)ことトリコプターのアクション。(『ラピュタ』の元ネタでもある)
欧米SF的な造語やカタカナ固有名詞多めですが、3つ以外は劇中で説明と描写が結びついているのでだいたいわかります。不明になる3つ(クウィサッツ・ハデラック、リサーン・アル=ガイブ、マフディー)はどれも救世主で大丈夫。あと、中世の貴族的システムで、環境整備が重要だと知っておけば、だいたい大丈夫です。
世界観に浸る現代的体感映画だから。
夢は深淵からのメッセージ、でも、それをどう受け止め、打ち返すか。
砂丘と地球は一文字違いの震作。

 

 

 

おまけ。

原題は、『DUNE』
『砂丘』。

DUNEは、英語で砂丘、砂堆の意。

劇中ではタイトルにpart1と出ます。

 

2021年の作品。



製作国:アメリカ
上映時間:155分

 

配給:ワーナー・ブラザース映画

 


映画は、会社ロゴよりも先に「夢は深淵からのメッセージである」という字幕から始まる。

 

 

まだ続編は正式には決定していないが、ほぼ作ることを前提に動いている。

現在、スピンオフでの連続シリーズ『Dune: The Sisterhood』が製作中。(ブライアン・ハーバート&ケヴィン・J・アンダーソンの同名スピンオフ小説がある)
HBO Maxで配信予定。
『デューン』に登場するベネ・ゲセリット教団を題材にした前日譚。
パイロット版はヴィルヌーヴが監督、スペイツが脚本、ダナ・カルヴォがショーランナーを務めている。

 

原作小説の翻訳とも少しカタカナの綴りが少し違ってます。
フレーメン→フレメン
ヴォイス→ボイス(操り言葉)
ポウル→ポール
セプター→オーニセプター
チェイニー→チャニ
など。(旧訳と新訳でも違うのかな)


なぜか、HPの用語解説にはリサーン・アル=ガイブ(外界の声)がない。
クイサッツ・ハデラッハはある。
マフディもない。

 

 

 

画像

 

 

ややネタバレ。

原作は、初期三部作、後期三部作の六部作がフランク・ハーバート作で未完。
残りの第7部『Hunters of Dune』(2006)、第8部『Sandworms of Dune』(2007)が書かれる。これは息子のブライアン・ハーバート&ケヴィン・J・アンダーソンの手によるもの。(一応、フランク・ハーバートの構想を元にしたと言われている。日本では未翻訳)
前日譚などスピンオフが10冊以上出ている。一部は日本でも翻訳されて刊行されている。

小説全六部と追加二部のタイトル。

第一部『デューン/砂の惑星』
第二部『デューン/砂漠の救世主』
第三部『デューン/砂丘の子供たち』
第四部『デューン/砂漠の神皇帝』
第五部『デューン/砂漠の異端者』
第六部『デューン/砂丘の大聖堂』
<追加>(フランク・ハーバートではない続編)
第七部『Hunters of Dune』
第八部『Sandworms of Dune』

 

ホドロスキーは10時間の映画を構想していた。

その後の映画化で、リドリー・スコットも内定するが、デヴィッド・リンチに交代。(ディノ・デ・ラウレンティスはもともとアレハンドロ・ホドロフスキーを起用したかったそうだが、うまくいかなかったそう)
その後、21世紀に再映画化の話が出た際には、ピーター・バーグがピエール・モレルなどの名前が挙がったが、頓挫。

ドラマ版は、ⅠとⅡがある(それぞれエピソード3ずつ)。

 

 

デザインはオッド・ネルドルムの絵から影響を受けているとのこと。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

原作は第一部を高校生頃にいろいろ読み漁ってる頃に読んだので、ぼんやりとしか覚えてない……。(時制が変わったり、文章も詩的で難しいんです)
流石に有名作なので、なんとなく覚えていたのと、映画版は見てます。
全六部で作者死亡で未完とされていますが、第一部で、一応話は完結してます。(ポールの話は第二部でも少し続きますが、ステージが変わるので)
第三部はポールの子供とポールの妹アリアの話になる。
初期三部作が傑作とされています。
(『スターウォーズ』もこれが念頭にあったのではないかと)

 

 

スパイスのメランジが原作ほどは機能(人間の能力を拡張する、寿命を延ばして不老にする、星間航行を可能にする燃料、という能力)してないのよね。(使うシーンがないが、ポールに影響があり、能力が強まっている)
メランジを石油的資源にすることでファンタジックな部分を減らしている。
そのことで、60年代当時のドラッグやニューウェーブな思想の部分は薄まり、現代的な資源戦争的な意味合いが強くなっている。
これにより、人間の内的な潜在能力の開放(夢)とそれを外的な要因との対決に変えた。
メランジ以前からすでにポールには予知夢が見えていたが、メランジでさらに強くなったものの予知を行動、自らの覚悟と決断によって覆す。
だが、それでも戦争の予知を覆せるかが続きへの期待となる。
最初に出る「夢は深淵からのメッセージ」、夢は自らが無意識下で望むことともとれる。
だが、そこから意思による行動で変えられる、とつながっていく。
それは、この映画のパート2がヒットによるGOサインが出ない蹴れば作られないものとリンクしてもいる。
意思で選び取った前後編での構想も、前編だけの許可になり、観客という外的な行動がなければ、覆されない。そこに集団によるコミュニケーションの希望を描こうとしているようにも思える。
それを広げるためにも三部作構想をも打ち上げた気がしないでもない。
後編がつくられるように、連続シリーズをつくったり、欧州での評価を先にk得するなどの手練手管を加えているので。

全方位的にするために、ほど出てきてないともいえる(後編で活躍するが)ゼンデイヤ(若い男性女性に影響力のある)を前面に出して宣伝したりもしている。
映画の内容から言えば、レベッカ・ファーガソンがヒロインだが、母役で年齢も上なので、ラブストーリー感を醸し出せないからではないだろうか。
すごく穿った見方をすれば、実際は後編尾GOは出ているものお、宣伝のために出ていないことにして、後編がつくられること自体が宣伝(前編がヒットしたという印象になる)になるように仕向けた策略であり計画なのではないか。

皇帝や宇宙ギルド、アトレイデス家の人員、凄すぎる覚醒者の能力、人工知能の反乱、と、かなりの部分を削除している。
キャラもかなり削除し、見せ場も統合されている。
一部は、パート2へ繰り越しになっているのかもしれない。

 

『風の谷のナウシカ』は、『地球の長い午後』の影響も大きい。

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴは母性を求める子供を描くことが多い。
『デューン』はアメリカ作品としては母性からの継承が描かれる。
それを父性に置き換えると『スターウォーズ』になるともいえる。
母、戦うフレーメンの女性チャニ、ベネ・ゲセリットの教母のガイウス、リエト博士など、強い女性が重要な立場出てくる。
ハルコンネン家(と皇帝)は男性ばかりにしているので、ある意味では女性によって救世主とされた男性ポールが男性社会を終わらせる戦いをさせているともいえる。
『風の谷のナウシカ』の女性の戦いも影響を受けている。砂漠世界だけでなく。

もしかしたら、『ガルフォース』も影響を受けているのかもしれない。
『デューン』自体も、逆にエドガー・ライス・バローズの『火星』シリーズの影響を受けていると思われる。

 

西洋SF小説では、知らない言葉を出すことが一つの楽しませ方になっているそう。
それゆえ、覚えることが多くなるが、日本では漢字で翻訳することとルビによって、それを簡易に伝達することが出来るのが強みで広く流行ったともいえる。
<香辛料>にルビで<メランジ>と書けば、言葉を忘れても意味が分かる。
だから、字幕でもそれをやればよかったのに、と思うところいくつか。
<救世主>に<クウィサッツ・ハデラック>、<救星主>にリサーン・アル=ガイブ、<砂虫>に<シャイ=フリード>とかね。または漢字をちょい足すとか。
ベネ・ゲセリット教団、アラキス星、リサーン・アル=ガイブ様とか。

 

主人公はアトレイデス家と副官の群像劇なのよね。
カラダン星を開発できたアトレイデス家は強い財力を持つようになったので、それを削ぐために、重要な資源だが採掘が難しい上にフレメンの反抗がある統治の困難なアラキス星に領地替えされる。
元々の領主ハルコンネン家も圧倒的に強いため、皇帝はその力を削ぐためと思わせて、結託して、陰謀の共犯にさせる。(サータガー皇帝親衛隊を貸している)
アトレイデス家はハルコンネン家とメランジを同等の採掘と供給をし、皇帝にも献上が出来なければ、多くの貴族から突き上げ(航星間の燃料であり、特殊な薬でもあるので、領主にとっては非常に重要)を食らし、皇帝から罰を受ける。

当主のレトの物語。
カラダン星の空と海を背環境整備し、その力を世に轟かせ、家の力を増す。
それは闘牛士でもあった強い父(ポールの祖父)の影を追っていた。
勢力拡大を皇帝に目をつけられ、領地替えを命じられる。(それはかの家の力を削ぐためのハルコンネン家も加担した陰謀)
己の信念を貫いたがゆえに敵をつくった。
アトレイデス家の最大の試練に、知恵と人望と行動力で乗り越えようとする。
嫡男ポールに期待はしているがやや距離が出来ている。なぜなら正妻の子でなくベネ・ゲセリットの教団の策略による子供だから。(ゆえに側室ジェシカや副官たちに任せている。貴族とはそういうものではあるが)
ダンカンを先に送り、調査と告知をさせ、反抗する種族フレメンにリサーン・アル=ガイブ(救星主)と思わせ、停戦交渉も成功させる。
労働者も見捨てずに、砂虫から救出する。
この二つのことにより、さらなら発展を危惧したハルコンネン男爵はまだ引っ越しで綿渡している内に暗殺を行うことに。(ユエ医師という裏切者のスパイと暗殺者も仕込んでいる。原作でこの裏切り者は誰かというサスペンスが物語の一つの軸になっていたが、映画版ではほぼ失くしている)
(なぜそれを大っぴらにやれるかは皇帝がバックについているからだろうが、攻撃したことの大義名分はどうなってるのか? 権力で口封じなのか?)
強いはずのアトレイデ軍を凌駕する皇帝親衛隊により、崩れる防御。その混乱のどさくさにまぎれたユエ医師による暗殺は成功。
その危機はわかっていたはずが、備えきれなかった慢心を復讐のチャンスを活かす。(だが、ハルコンネン男爵にとどめを刺せない。無念を残す)

嫡男ポールの物語。
強大となった公爵家の嫡男としてのプレッシャーが重い。
その期待に応えたいと訓練はしているが、当主ではなくパイロットになりたいと思っている。
そのプレッシャーのせいか謎の明晰夢を繰り返し見る。そこには危機と女性が出てくる。
その夢に出てくる女性にどこか救いを求めてしまう。
慕っている副官ダンカンは領地替えのため、アラキス星に先行調査に行ってしまうことに。
だが、夢で彼の死を見てしまう。
新しい教育係ハレックはまさに武官という感じで反発する。
母は女性だけのベネ・ゲセリット教団出身でその秘技であるボイスを彼に習得させようとする。だが、それは女性だけの秘技で認められていない。
夢の話のこともあり、ベネ・ゲセリット教団の教母の諮問を受ける。
教団は自分を危険視しているらしい。
だが、母はそれでも教団が希望を託す救世主クウィサッツ・ハデラック(本来は女性)にさせようとしている。その期待がまたプレッシャーになっている。
アラキス星に到着したことで夢はさらに明晰になり、彼の心をざわつかせる。(だが、せいぜい進言するぐらいしかしていない。確信が持てていない)
しかも、先住人からマフディー(救世主)とアトレイデス家は呼ばれるようになっている。
そして、暗殺攻撃により、父とダンカンの死で夢は当たり、自分の力を確信し始める。だが、
母と二人だけが逃げ延びる中で、その母を守ること、決闘での勝利(自らの手を汚す)、夢の女性と出会いにより、その宿命に立ち向かい、アトレイデス家の血を継ぐ者としての自覚を持ち、復讐と信念を抱く。

ジェシカ夫人の物語。
ベネ・ゲセリット教団の教えを独自に守り、有力貴族と結婚するも、女児ではなく(ベネゲセリットは女性による救世が教義)男児を妊娠し、堕胎せずに出産する。
レト公爵の才と人柄に惹かれた部分もある。
息子ポールへ愛を注ぎ、女性だけの秘技であるボイス(操り声)を息子に教える。
その力から、クウィサッツ・ハデラック(本来は女性)になり得るとの思いを抱くようになる。
だが、それは教団から目をつけられるが、歯向かえない。
そして、暗殺により夫や臣下を亡くし、息子と二人着の身着のまま砂漠へ放り出され、己の信念を疑いも抱く。
だが、ポールの成長した姿に再び信念を取り戻す。(ラストカットは彼女の顔)

3つの信念の物語になっている。

 

ポールの妹アリア・アトレイデスが削除されている。

原作では、ポールの祖父は○○○○○○なので、これも『スターウォーズ』への影響を感じ取れる。

 

アトレイデス家とハルコンネン家と皇帝の三角関係。
ジェシカとポールとベネ・ゲセリットとの三角関係。
レトとポールとジェシカの3人親子。
ポールとダンカンとハレックの3人の関係。
クウィサッツ・ハデラック、リサーン・アル=ガイブ、マフディーの3つの救世主。
3つの関係が物語を構成している。
3はキリスト教において、神聖で完璧な数字。

キリスト教ではポール(パウロ)は預言者の名前。

ポールが見る予知夢は確定した未来ではないので、行動で変更可能。

マフディー(救世主)は、『閃光のハサウェイ』にマフティーとして使われてもいますね。

 

ベネ・ゲセリットは修道院的な教団であり、秘密結社。
女性の救世主を作ろうとしている。(『ナウシカ』の影響元)
ボイス(繰り声)はこの教団の秘技で、男性(=ポール)に伝えちゃだめ。
だから、ジェシカの物語がここにあり、スピンオフで描かれる。

 

計画(=宿命)についての物語でもある。
これは、『パラサイト 半地下の家族』でも軸に扱われた現代西洋映画の重要なテーマ。
そこに予知夢を覆すことで、計画を乗り越えるポールの姿が描かれる。

 

 

同じカナダ出身のジェームズ・キャメロンも女性性の神話を描くが、ドゥニ・ヴィルヌーヴも女性性の神話を描く傾向がある。

 

 

 

勝手なアイディアだが、これインド・リメイクしてたらどうなるかしら
もちろん、『バーフ・バリ』前後編のテンションで。
まず、若いはずのポールがおっさんなんだろうな。
メランゲを粉のように撒くラッバーン、舞い踊るフレメン、「リサーン・アル=ガイブ」の連呼、饗宴をするアトレイデス家、皇帝の巨大像、老人なのに身体最強のハレック、巨大武器を扱うダンカン……。

 

 

さて、本質に切り込みます。
今作が目指したものはなにか。
言われている映像革命なのか?
『デューン』の原作は何が革新的だったかというと、60年当時SF作品は文学的な価値をほとんど認められておらず、今作は私的な文学的要素を打ち出し、ストーリーもやや群像的に、SFでシェークスピアをやった作品だった。(古典である貴種流離譚で復讐劇でもあるが)
(同時期にアメリカでは『ロード・オブ・ザ・リング』が多く読まれた)
しかも、『ロード・オブ・ザ・リング』の原作のように未来の文明の生態やシステムを細かく描写した。
ハードSFではないが、あるみでハイコンセプトに中世の世界観が未来に再現された世界となっており、未来の哲学、社会、宗教、権力構造や戦争をきっちり描き出したことが認められている。
映像は美しいが革命というほどでもない。
架空の自然は『ロード・オブ・ザ・リング』、『スターウォーズ』シリーズで、すでに見せつけられてきた。
巨大建造物は、『SW』EP1~3、『リディック』、『マン・オブ・スティール』、『ジュピター』でも、いくつかの連続シリーズでも描かれている。
では、今作が何を成し遂げたのか。
それは『2001年宇宙の旅』以来の大作SFアート作品の復興だ。
すでに前述作で60年代に成し遂げられてはいるともいえる。
現代ではどうか、最大フォーマットであるIMAXでの撮影された虚構作品では、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『インターステラー』、『スターウォーズ』EP7~9がある。
アメコミとハードSF、巨大フランチャイズ・スペースオペラの新シリーズである、今作はスペースオペラではあるが、なによりもアメリカの建国神話的な叙事詩の映像化なのだ。
『2001年宇宙の旅』には国と土地がない。
『インターステラー』にも一部その傾向はある。フロンティアを目指し、新しい土地に新しい国をつくる。
今作は、その原点アメリカSFのバイブルの映像化を娯楽を極力排して、つくり上げようとしたのだ。
歴史を再現したアメリカ建国神話の映画での成功作はない。
だが、ギャング映画で『ゴッドファーザー』サーガがある。
『スターウォーズ』シリーズが近いが、反乱軍で終わり、国がつくられない。
今作はアメリカ初の建国神話を目指している、だから、次は、アメリカでヒットするかどうか、受け入れられるかどうかが重要。他の国とかどうでもいいのだ。
カナダ人もまた北米大陸の国の一つだしね。

 

好みの台詞。

「このヤシを貴重な水を使って育てることは無駄だと思うかい?」「これは夢ですから」

人を救える水をこの土地では育たないナツメヤシを育てるために大量に使う。
これは「夢は深淵からのメッセージ」と重なり、そのまま大作映画の有り様とつながっている。

 

 

 

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (denkihanabi)
2021-12-01 22:04:43
見ました。残念ながら小さいスクリーンだったのですが、音がすごかった。「ダンケルク」同様、ハンス・ジマーの音楽とSEの重低音が一体化して体を震わせて気持ちよかったです。「ダンケルク」はずっと戦闘シーンだけど「DUNE」はとくに前半、何も起きないのにズーンってきてて音響で見れてしまう感じでした。もちろん絵の完成度も素晴らしいが。ただ私は砂漠の風景に愛がないのでそこはつらかったです。ストーリーも既視感ありすぎなので、とくべつ面白くはなかったです。でもこの音を浴びる体験は映画館ならではですね。
音浴 (ひし)
2021-12-02 00:27:27
>denkihanabiさん
 
音凄かったですね!
音がいいところで見たので、砂漠の風とかの砂の音まで聞こえるので、砂漠になった時の恐ろしさとかも表現してました。
後塵が真似しまくったあとの原典の物語はちょっと厳しいところはありますよね。

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