菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

姫君と騎士道。  『少年の君』

2021年08月05日 00時00分08秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1914回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『少年の君』

 

 

貧困、受験戦争、いじめなどに囲まれた過酷な日常を送る孤独な少女と裏社会に生きる少年が出会う社会派青春ラブストーリー。

 

玖月晞の人気オンライン小説『少年的你,如此美麗』を実写映画化。

第93回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされた。

 

主演は、中国13億人の妹と呼ばれる『サンザシの樹の下で』で知られるチョウ・ドンユイと人気グループ TFBOYS のジャクソン・イー。

 

監督は、俳優として活躍するデレク・ツァン。

 

 

物語。

進学校に通う優等生チェン・ニェン。
借金取りに追われる母親と二人暮らしの彼女にとって、貧しさから抜け出す道は、全国統一大学入試(高考=ガオカオ)で優秀な成績を取って、一流の大学に進学することだけ。そのため、彼女は必死で机に向かう。
そんなある日、同級生がいじめを苦に自殺してしまう。
チェン・ニェンのある行動に、いじめグループが目をつける。
チェンは下校途中に集団リンチを受けるシャオベイを助けようと電話をする。

原作:玖月晞 小説『少年的你,如此美麗』。
脚本:ラム・ウィンサム、リー・ユアン、シュー・イーメン

 

 

出演。

チョウ・ドンユイ (チェン・ニェン/陳念)
ジャクソン・イー/イー・ヤンチェンシー  (シャオベイ/小北/劉北山/リィゥ・ベイシャン)

イン・ファン/尹昉 (刑事のヂォン・イー/鄭易)
ホアン・ジュエ/黄覚 (刑事のラオヤン/老楊)

ウー・ユエ/吳越 (母のヂョウ・レイ/周蕾)

チョウ・イェ/周也 (いじめっ子のウェイ・ライ/魏莱)
チャン・ヤオ/張耀 (取り巻きのリー・シィァン/李想)

チャン・イーファン/張芸凡 (クラスメイトのフー・シァォディェ/胡暁蝶)

趙潤南 (シャオベイの友人のダーカン/大康)

 

 

 

スタッフ。

脚本:林詠琛、李媛、許伊萌

撮影:フィッシャー・ユイ(余静萍)

美術:梁鴻鵠
衣装デザイン:吳里璐

編集:張一博

音楽:Varqa Buehrer、エレン・ジョイス
主題歌:岑寧兒『Fly』

 

 

『少年の君』を鑑賞。
現代中国、いじめと受験戦争と貧困と過酷な日常を送る孤独な少女と裏社会の少年が心を通わせる社会派青春サスペンス・ラブストーリー。
第93回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされたのも納得の前半と後半の二つのクライマックスの熱量。連続ドラマ1クールの濃度での展開もダイジェストになっていない。
それを支える主演二人。中国13億人の妹と呼ばれる『サンザシの樹の下で』のチョウ・ドンユイは第二のチェン・ツィイーから唯一無二のチョウ・ドンユイになった。その見た目と魅力を鍛え上げた演技で根の広さを感じさせ、花を広げる。人気グループTFBOYSのジャクソン・イーの腰の入り方。この高熱。
一目でわかる人気キャスト、美男美女揃いの弩メジャーながら、商品に落ちてない。これぞ本格映画の凄み。
前作で一線級に飛び出したデレク・ツァンの実力が爆発した。それでいながら、香港出身(父はエリック・ツァン)の反骨が垣間見える。
眼をそむけたくなるほどのいじめ演出もあるが、それもじっくりと見せないところから始めて、映画の山を登るような堂々たる語り口で、そこを超えていく。
大人の描写を切れ味よくするなど、若き心情に深く入って行く。
描写の強さ、瞬間をとらえる撮影が目を釘づけに。
全体のバランスがメジャーなのに小品的に引き締めている。それがあなたのあの頃の物語にさせる。
裏に込めたテーマを映像的に繰り返し、情だけに落とさない。冒頭からきっちりとモチーフ演出をがんがん忍ばせ、心の梯子を昇らせる。それは写真には写らない美しさと悲しさ。
キラキラ邦画が目指す極点はここだったんだな。
『少年の君』は『若いあなた』という意味だが、『若騎士の姫君』と見えてくる。
映画離岸流でぐいっと浅瀬から沖にもってかれる玻璃作。


 

 

 

おまけ。

原題は、『少年的你』。
『若いあなた』。

英語題は、『BETTER DAYS』。
『より良い日々』。

 

2019年の作品。

邦題は、『少年の君』(しょうねんのきみ)と読む。

 

製作国:中国内陸・香港合作
上映時間:135分
映倫:G

 

配給:クロックワークス  

 

 

 

受賞歴。

第39回香港電影金像奨で作品賞、監督賞、主演女優賞など8部門を受賞。

他に、50以上の賞を獲得。

 

各国でヒットし、興行成績は約243億円を突破している。

 

デレク・ツァンは、名優エリック・ツァンの息子で、俳優として知られている。長編監督は4作目。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

距離感が映画の裏に仕込まれる。
離れていても精神でつながる連帯だ。
チェンとフーは連帯して牛乳を運ぶが、フーはそれを離す。
チェンとシャオベイも離れたままで繋がっている。
カメラには、繋がりは写らない。

そこには中国の市民の容易に連帯できない状況が透けて見える。
エリック・ツァンは香港出身なので、まさに香港の状況でもある。
現況は、国によるいじめともいえる。

 

 

チョウ・ドンユイは撮影時26歳。役者にとって、もはや年齢は大したことじゃないが、29歳(2021年時の年齢)と思えない亭な文章をと書いてあるのをいくつか見かけたので。今作は2019年の作品。

 

中国人の映像技法として、何かがばらまかれると勝利を示すってのがあるんじゃないかな。

 

原作となった玖月晞氏によるオンライン小説『少年的你,如此美麗』が、東野圭吾氏の小説『白夜行』と『容疑者Xの献身』の盗作ではないかとの疑惑が一部で浮上し批判の声が上がっている。玖月晞氏は盗作を否定している。
映画はけっこう脚色されていて、原作とも違っており、東野圭吾作とは離れている。

 

オープニングに監督から制作意図のメッセージがついている。これと最後ので中国の検閲を逃れたのだろう。

後につけられた、共産党のプロパガンダでさえ、作家の戦いがあるかを見抜かねばならない。

基本、現在の中国内の映画はプロパガンダ映画以外許されない状態で、それを纏わないと体制批判を少しでも入れた映画はつぶされるようです。クロエ・ジャオでさえ全く無視されるといわれています。
そこに迎合したふりで、裏にメッセージを籠める。今作のようなやり方は香港の出身作家の戦いでもあるんです。
あの多作のジョニートーは中国資本を入れるのをやめたので、現在苦しい状態にあります。年一本発表できない。
『鵞鳥湖の夜』でディアオ・イーナンも批判は裏に秘めて、表は迎合して見せてます。海外資本を入れてつぶされないように対策も。

『十年』の時には、賞を与賞を与えたごとつぶそうとしました。
中国返還後、香港は経済特区のはずが、映画の製作本数は10分の一になってしまった。
韓国も政治的案件の映画は作るのがかなり難しいそうで。
ただ、まだ両国ともそれでもつくり、ヒットさせる作家が数人いる。
そこで、日本はそういう映画はほんのわずかということから考えれば、先進国の中では自由のない国だということが露呈してるんですよね……。

イラクでは、ジャファル・パナヒが禁固刑になったり。

つまり、映画が持つ文化的発信力は恐れられてもいる。

 

日本の2020年の自殺者数は2万人を超えている。

 

 

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