【俺は好きなんだよ】第883回は、『パラダイスの夕暮れ』(1986)
フィンランド語の原題は、『Varjoja paratiisissa』。
英語題は、『SHADOWS IN PARADAISE』。
『楽園の影』ですね。
どちらも同じ意味だそうです。
上映時間 :80分
製作国 :フィンランド
スタッフ。
監督: アキ・カウリスマキ
製作: ミカ・カウリスマキ
脚本: アキ・カウリスマキ
撮影: ティモ・サルミネン
美術: ペルッティ・ヒルカモ
編集: ライヤ・タルヴィオ
録音: ヨウコ・ルッメ
出演。
マッティ・ペロンパー
カティ・オウティネン
サカリ・クオスマネン
エスコ・ニッカリ
物語。
ニカンデルはゴミ清掃車の運転手。
LL教室で英語を習い、卵を焼いてひとり窓の外を眺めながら食べる。
スーパーのレジ係イロナと知り合った彼はデートに誘うが、一張羅でキメたものの、ビンゴ屋に連れて行き大失敗。
ところが翌日、リストラされたイロナは彼を頼ってやってくる。
一緒に暮らし始める二人。
しかし高級ブティックに職を得たイロナは、ゴミ職人のニカンデルを疎んじるように。店長と出かける彼女を横目に、精一杯強がるニカンデル。
いつものLL教室で、流れてきた例文。
「傷ついたり、完璧でないものも、また楽しいものなのです。恋とはそんな、おかしなものなのです」。
ニカンデルは訳す。
「傷つけられても、短所があっても、愛していればすべてが楽しい。おかしなものだ、おかしくて楽しい、恋って…」
マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンが初めて共演した、アキの長編第3作。
発表当時、ジム・ジャームッシュは「最も美しい映画のひとつ」と絶賛したそうです。
アキまだ20代。
青が際立つ画面には寒さよりも厳しい透明感を感じます。
ラスト、船で旅立つときに流れる曲は、フィンランドのムード歌謡で『イスケルマ』というそうですが、その曲調はどこか演歌に通じています。
ちなみにこんな歌詞だそう。
この心にいつわりなんてないけれど
本当はわかってる すべて幻、見果てぬ夢
だけど、離れているとこんなにも君がいとしい
昼も夜も 僕だけを見てほしい
でもわかってるんだ
君も僕も知っている 燃え尽きたら、もう戻れない
待っているのは 辛く苦しい、現実という旅路
僕を見て でもそれだけじゃだめなんだ
この闇に負けない心を 明日の涙を吹き飛ばそう
急がないで 大切なのは、今の君と僕
太陽が涙の雲に隠れてしまう前に、美しい世界を二人でゆこう
この慕情に浸っていたい。
ちなみに、年の前作『カラマリ・ユニオン』に続いて、アキ自身もホテルのフロント係として出演。なかなかのグッドフェイスで、痩せています。