で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1014回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
映画史に燦然と輝く金字塔シリーズ『スター・ウォーズ』のアナザー・ストーリーを描く新プロジェクトの第1弾となるSFアドベンチャー大作。
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でレイア姫がR2-D2に託した“デス・スター”の設計図はいかにして反乱軍の手に渡ったのか、というこれまで語られることのなかった物語を、一匹狼のヒロイン、ジン・アーソをはじめとする新たなキャラクターたちの活躍を通して描き出す。
主演は、『博士と彼女のセオリー』のフェリシティ・ジョーンズ。
監督は、『モンスターズ/地球外生命体』、『GODZILLA ゴジラ』の、ギャレス・エドワーズ。
物語。
ダース・ベイダー擁する帝国軍の究極兵器“デス・スター”がいよいよ完成し、その圧倒的な破壊力の前に、銀河全体が恐怖に支配されようとしていた。
反乱軍の裏仕事担当の将校キャシアン・アンドーは、帝国からの逃亡パイロットを探していた。
その設計を手掛けた有名な科学者ゲイレン・アーソの娘のジンは、帝国軍に父を奪われ、母を殺され、孤児となり、幼いころから、戦士として、生き抜いてきたタフなアウトローで、帝国軍の牢に入れられていた。
だが、そんな彼女を反乱軍が救い出す。
その理由は、逃亡パイロットがデス・スターの設計士であるゲイリンからのメッセージをゲイリンの友人であり、反乱軍でも独自部隊の過激派ソウ・ゲレラを探していることが判明し、ゲレラを知るジンを仲介役にするためだった。
ジンは反乱軍に加わり、キャシアンとその相棒である帝国のドロイドをリプログラミングのK‐2SOのチームとともに、父のメッセージを手に入れる任務についた。
シリーズ・クリエイターは、ジョージ・ルーカス。
原案は、ジョン・ノール、ゲイリー・ウィッタ。
脚本は、クリス・ワイツ、トニー・ギルロイ。
出演。
フェリシティ・ジョーンズが、ジン・アーソ。
ディエゴ・ルナが、キャシアン・アンドー。
アラン・テュディック(モーションキャプチャー・アクター)が、 ドロイドのK-2SO。
ドニー・イェンが、僧兵のチアルート・イムウェ。
チアン・ウェンが、僧兵のベイズ・マルバス。
リズ・アーメッドが、パイロットのボーディー・ルック。
マッツ・ミケルセンが、父のゲイリン・アーソ。
フォレスト・ウィテカーが、ゲリラのソウ・ゲレラ。
ベン・メンデルソーンが、士官のオーソン・クレニック。
ジェームズ・アール・ジョーンズ(声の出演)が、ダース・ベイダー。
スタッフ。
製作は、キャスリーン・ケネディ、アリソン・シェアマー、サイモン・エマニュエル。
製作総指揮は、ジョン・ノール、ジェイソン・マクガトリン。
撮影は、グリーグ・フレイザー。
プロダクションデザインは、ダグ・チャン、ニール・ラモント。
衣装デザインは、グリン・ディロン、デイヴ・クロスマン。
音楽は、マイケル・ジアッキノ。
オリジナルスコアは、ジョン・ウィリアムズ。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を鑑賞。
宇宙支配が可能な巨大惑星型最終兵器を破壊すべく、その設計図奪取の不可能作戦に挑む独立愚連隊を描く、エピソード4の前日譚。ギャレス・エドワーズのSF戦争アクション。
70年代戦争大作の古典的語りを取り込み、当世風ではなくとも抒情に寄り過ぎないあっさり風味をイラスト集のようなイメージで見せ続ける。
見終えるとすぐにエピソード4を見たくなる。
観てきた者を子どもに戻す映画タイムマシーン。
名作の穴を埋める映画史上最高の露払いスピンオフの槍作。
おまけ。
原題も、『ROGUE ONE/A STAR WARS STORY』。
いうなれば、『はぐれ第一小隊/スター・ウォーズ外伝』。
『スター・ウォーズ』実写映画によるスピンオフの第一弾です。
スピンオフはいままでもいくつもありますが、実写映画では初めてです。
日本では『イウォーク・アドベンチャー』が劇場公開されていますが、これはもともとテレビ映画。
続編の『エンドア/魔空の妖精』もありましたね。
おいら邦題なら、そりゃあ『反乱同盟愚連隊ローグ・ワン/スター・ウォーズ秘話』にしますよ。
岡本喜八風にね。
あ、『独立愚連隊、星へ/激動の宇宙大戦争秘史』もありかな。
製作国は、アメリカ。
上映時間は、134分。
キャッチコピーは、「希望は、死なない―」。
これだと、ちょっとなぁ。
予告編内で言ってる、「希望をつなぐ――」の方がいい。
これだと、エピソード4が古くなったから、リニューアルしましたって感じさえしてくるじゃんか。
ギャレス・エドワーズによる、「ヒットしたら、続編は?」の問いへの答え、「続編の監督はジョージ・ルーカスだよ」が粋よね。
ネタバレ。
星屑部隊の戦いのさりげない描き方。
彼らが名乗るローグ・ワンは、愚連隊の第一部隊の意味。
ジン・アーソは、孤児で戦争捕虜。
キャシアン・アンドーは、孤児で少年兵から戦いしか知らぬ汚れ仕事担当の暗殺者。
ボーディ・ルックは、裏切者でスパイ。
K‐2SOは、リプログラミングされた敵軍のドローン。どちらからも狙われる。
チアルート・イムウェは、ジェダイになれない、守るべきものをなくしたはぐれ僧兵。
ベイズ・マルバスは、守るべきものを失くし、友をその対象としたはぐれ僧兵。
彼らについてくるのも、アンドーと同様に汚れ仕事をしてきた仲間たちなのだろう。
彼らの方が、ハードな仕事をしてきたからこそ、そこに意味=大義を見出してきた、つまり、強い希望を抱いてきたのだろう。
だからこそ、反乱軍の降伏を許さず、わずかでも勝利の希望に賭けたからこその自殺作戦に挑んだのだろう。
その最後の希望がつながったことで、新しい希望(エピソード4のサブタイトル)が生み出される。
しかも、なぜか、ゲイリンは、ジンのことをスターダスト(星屑)と呼ぶ。(妻のライラをスター(星)と呼んでいたのかも)
その彼が生み出した最強兵器がデス・スター。
それをつくるために、妻を殺され、娘と話され、自分を死に追いやった兵器の設計図のコードネームはスターダスト(プラネットキラーとも呼ばれていたが、これも妻を殺したことも物語上は賭けているのではないか)であった。
デス・スターは、自分を生んだ世界(自分たち)の象徴であり、もう自分のようなものを生まれぬようにする破壊すべき象徴になった。
エピソード4で、大きな穴と言われていたのが、最終兵器デス・スターがたった一発(とても狙えるものではないが)で破壊できること。
これが、今作によって、設計者ゲイリンが仕掛けたものとなったことで、それでさえ難しい、さぁどうする? これをできるのはジェダイの力がいるという流れになる。
だから、レイアはオビワン・ケノービに助けを求めたこと(エピソード4単独でも難しいからジェダイが必要というのはわかるが)がより明確になった。
もう一つの穴があって、それはダース・ベイダーがよくわからないのだ。
エピソード1~3の3のラストで、ようやくアナキンがダース・ベイダーになる。
姫を覆い詰める将軍であり、シスの能力で士官の首を絞めて殺し、オビワンを切り殺すが、どこまで悪人なのかは意外と浅くしか描かれない。
そして、エピソード4でも最後、ルークを追いつめられず、やられもせず、離脱するだけ。
実は、エピソード3の最後にダース・ベイダーと同じように生まれるものがある。そう、デス・スターである。
(正確にはけっこう建造は進んでいる)つまり、帝国=デス・スターと見えるようにしている。
つまり、エピソード4は、デス・スターという勝ち目を奪う最終兵器を壊す作戦ものであり、滅びたと思われていた能力者ジェダイの復活と脛に傷ある落ちぶれたおたずね者たち(敵に寝返ったと思われた者も)が汚名をそそぎ、戦争の英雄となる話であった。
それが、『ローグ・ワン』によって、その敵デス・スターの成り立ちと一度敗北していた反乱軍が立ち上がる流れが描かれ、大きな物語となり、ダース・ベイダーは凶悪さを強調され、デス・スターを司令官として率い、ターキン総督こそが悪を引き受け、ターキン総督=デス・スターとなり、最後に反乱軍を一度敗北させ、ローグワンとそれを助けに来た部隊を滅ぼしたターキンが倒されるという物語としての強固さが増した。
デス・スターという世界の不幸を生み出した象徴を破壊する物語。
今作で、エピソード4は補完された。
そして、エピソード6では、新たなデス・スターが製造(エピソード5の頃にすでに建造は開始されている)されており、、それを破壊する話になる。
その第2デス・スターの司令官はダース・シディアス皇帝である。
デス・スターがそのまま帝国の象徴そのものになる。
(ちなみに、初代デス・スターは建造に約20年かかったのに、二代目デス・スターは一年程度で建造しており、そのあまりのスピードの違いをジョージ・ルーカスは設計ミスがあり、建造休止していた上、まだ帝国が支配を敷き切れておらず、物資調達に時間がかかったと説明していた)だが、この設計ミスや遅れがゲイレンの遅延工作であったことが加わった。
『ローグワン』によって、エピソード4、ひいては、旧3部作は補完されたのだ。
そして、エピソード7では新しいデス・スターと呼ばれるスターキラーが造られ、破壊される。
深読みではあるが、『スターウォーズ』エピソード4には、デス・スターを子宮に、ルークのXウィングを精子に喩えた、受胎、つまり、ルークという子どもが誕生し、世界に祝福される神話、という解釈がある。
それを追うのが父親であるダース・ベイダー(ただし、それが分かるのはエピソード5)なので陰茎(ライトセイバーは陰茎の隠喩と言われる)となる。
それが、ゲイリンによって、スターダストというコードネームがつけられ、完全にデス・スターは女性の象徴にもなった。
ただ、ライトセイバーはエピソード2から女性も持つのが描かれたので、陰茎ではなくなったが。
(エピソード7では女性主人公レイも持つ)
ギャレス・エドワーズ 監督は、黒澤映画(特に、『七人の侍』)や『座頭市』、『AKIRA』から強く影響を受けた作品と言っているが、『アイアン・ジャイアント』の影響も強いように見受けた。
まず、K‐2SOが、姿からして、よく似ている(ただし、これはフライシャーのロボットから影響を受けているし、宮崎駿のロボットも同じ)上に、最後のじこぎせいはまさにアイアン・ジャイアントのそれを彷彿とさせる。
アンテナのレバーのくだりは、似たシーンが発電所のシーンにある。(Tレバーではなく棒状のレバーだが)
これらは、アメリカ人が映像的に受け継いできた象徴的記号的なものの集合体である可能性もあるが。(ブラッド・バードはそういうのを使うのが上手い作家なので)
にしても、電波送信のためのコード挿す、マスタースイッチ入れろ、アンテナをリセットしろ、と実際には同じことを3回繰り返すのは、少々しつこい。
コードが引っかかって大変、銃撃戦の真ん中にスイッチがあって大変、データを入れるところと送るためのコンソールのあるところが別場所で大変、って、さすがに作意があからさま過ぎる。
そのせいで、3人死ぬしね。
この緩さがスターウォーズ感でもあるけどねー。
あと、エピソード4につなげるために、全員死ぬってのもなぁ、
大けがで、機械の体になって、戦いにはもう参加できないって人がいて欲しかった。玉砕作戦だから、無理なのも分かるけど。
ただ、別のスピンオフで、『ヤング・ハンソロ』が作られるので、時間軸的にジン・アーソやキャシアン・アンドーの幼い頃、チアルートとベイズの若い頃が出てくる可能性はあるのかも。現キャストの可能性は薄いけど。
最後のデス・スターによる爆発バックで抱き合った二人が死ぬのは、『ターミネーター2』のような『アビス』ようで意外と『トゥルーライズ』だったりして。
どれにしても、ジェームズ・キャメロン作品を思い起こさせる。
インタビューからの抜粋。
「ジョージ・ル-カス監督は、様々な素材を集めて、一つの鍋に詰めて、かき混ぜ、それらを溶け合わせるのが上手でした。そうすることで、元ネタは分からなくさせつつ、直感的に"アリ"と感じられるものを生み出してきたのです」
「正直に話すと、本当に多くをのものを盗んでいますが、そこは許してほしいです」
ギャレス・エドワーズの欠点が今回も出ている。
それは、彼は空間配置を説明するのが上手くないこと。
『モンスターズ/地球外生命体』でも、現在どのくらいの位置にいるかが全然、わからない。
『GODZILLA ゴジラゴジラ』(2015)でも、ハワイでは電車と空港とゴジラと軍隊の位置関係、最終決戦でも海までの距離がよくわからない。
『ローグワン』でも、宇宙船と寺町、船と研究所、マスタースイッチとコードの位置関係がよくわからない。
『モンスターズ』は直線の旅だから、分からないのも味だし、『ゴジラ』もわからないからこそ、ゴジラが脅威に感じなくもない。
だが、今回に関してはその位置関係がその絶望や決死行が分かりづらいので、燃えが減っている。
研究所星で道半ばのチアルートたちもそう。
EP4では、それをフレーム表示の地図や誘導のセリフで表現していた。
ジョージ・ルーカスは距離の表現は結構凝る作家で、それはスターウォーズの巨大さや冒険感を強調していた。
最初のどんどん星が変わって、登場人物を描くのは、70年代頃(つまり、エピソード4公開の頃)の戦争大作の感じで、思い出しワクワク。
個人的な思いを深く追わずに行動で見せるのも、その当時の語り口よね。
ギャレス・エドワーズって、古典映画の引用が好きなんだよね。
『モンスターズ/地球外生命体』も30年代の『或る夜の出来事』の怪獣映画版だったものね。
古典の語りを今の観客に合わせ過ぎずに使えるからこそ、今回の起用になったんじゃないかな。
でも、キャシアン登場の星の雑踏は、80年代の『ブレードランナー』の引用かも。
だけど、70年代が舞台の『アルゴ』でも似た雑踏のシーンがあったから、そもそも『ブレードランナー』がそこら辺の映画のイメージをSF化させた可能性もあるしなぁ。
『エクソシスト』とか『インディー・ジョーンズ』でも似た感じあったしね。
そういう映画的伝承を簡単に数本の映画から持ってきたって感じで語りすぎるのは、映画文化を貧しくする気もします。
ジンとソウ・ゲレラの過去の交流がもう一シーン、例えば、銃を渡すシーンとか、ああれば、よかったのではないか。
キャシアン・アンドーは孤児でもあって(他のメンバーもそうかもしれない。クローン戦争は多くの戦争孤児を生んだであろう)、同じ孤児(父親はいるが離れている)の彼女へのシンクロが狙撃に悩んだ一因ではないだろうか。
アンドーは反乱軍の攻撃がなければ、ゲイリンを撃っていたのだろうか?
それとも、撃つ前にゲイリンが死んだことが彼を変えたのか。
人種の多様性は、エピソード4からあったもので、オビワン・ケノービには最初、三船敏郎がオファーされたが断られている。エピソード5で黒人のビリー・ディー・ウィリアムズ(ランド・カルリシアン)が、エピソード2でマウリのテムエラ・モリソン(ジャンゴ・フェット)が起用されている。
そもそも多くの人型ですらない宇宙人にはそういった多様性を表現する意図があったはずだ。
今回、その意図を組むようにメインキャストにアジア人が加わったこと(エピソード7でイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアン出ているがあっという間に死ぬ)も特筆すべきだろう。
(ギャレス・エドワーズは『GODZILLA ゴジラ』 (2014)で宝田明を起用しているがカットされた。渡辺謙だけ残った)
でも、三船さんの経緯を思うと、いつか、日本人も出演して欲しいなぁ。
だけど、ドニー・イェンもチアン・ウェンも実はアクション映画でヒットを飛ばした大スター。イコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンも『ザ・レイド』でアメリカでもヒットを飛ばしたアクションスター。三船敏郎もレジェンドなアクションスターだから、アクション・スターでないと厳しいのかね?
そうすると、今の日本で世界に認識されているアクション映画出演者だと、金城武、真田広之、浅野忠信を筆頭に、ハリウッド製のアクション映画に出ていた渡辺謙、菊地凛子、ケイン・コスギ、福島リラ、TAO、ルーイ・オザワ・チャンチェン、ハル・ヤマノウチ、福原かれん、TVでマシ・オカ、祐真キキ、ジャッキーと共演の池内博之、『セデック・バレ』の安藤政信、アジア映画でアクションを見せてきたディーン・フジオカ、大谷亮平、あと『ヘヴン&アース』の中井貴一くらいか。邦画のアクションは世界にはもう長い間、意識されてないからなぁ・・・。『るろうに剣心』の佐藤健とか武田梨奈とか虎牙光揮とか認識されてないのかしら。意外に東映ヒーローは『パワーレンジャー』のあるから、認識されている人もいるのかも。
個人的には、鈴木亮平にちゃんとアクションをやらせてあげたら、英語も強いし、日本人顔だし、可能性の芽が出る気がしている。『彼岸島デラックス』、『HK/変態仮面』シリーズ、『俺物語』、『銭形警部』のような加工系だけでなくてさ。『TOKYO TRIBE』もよかったからさ。『忍びの国』はどうなのかしらね。
それでも、期待するなら、次のスピンオフか、エピソード9かしら。
ラスト、ジンとキャシアンが抱き合うのは恋慕(ないわけではないだろうが)とは違う、もっと大きな何かを成し遂げて、命が燃え尽きる覚悟からの抱擁だと思いたい。