で、ロードショーでは、どうでしょう? 第948回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『シン・ゴジラ』
『ヱヴァンゲリヲン』シリーズの庵野秀明が脚本と総監督、『のぼうの城』、『進撃の巨人』の樋口真嗣が監督と特技監督を務め、世界的怪獣キャラクター“ゴジラ”を日本版としては12年ぶりに復活させた特撮アクション大作。
謎の巨大不明生物“ゴジラ”の出現という未曾有の国難に直面した現代の日本を舞台に、全てが想定外の中でギリギリの決断を迫られる政府関係機関の緊急対応の行方と、ゴジラに立ち向かう人類の運命を、綿密なリサーチに基づくリアルなストーリー展開と迫力の戦闘アクションで描き出す。
物語。
東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが崩落する重大事故が発生する。
すぐさま総理以下、各閣僚が出席する緊急会議が開かれ、地震や火山などの原因が議論される中、内閣官房副長官・矢口蘭堂は未知の巨大生物の可能性を指摘し、上官にたしなめられてしまう。
しかしその直後、実際に巨大不明生物が海上に姿を現わし、政府関係者を愕然とさせる。のちに“ゴジラ”と名付けられるその巨大不明生物は鎌倉に上陸し、逃げまどう人々などお構いなしに街を蹂躙していく。
やがて政府は緊急対策本部を設置するが、対応は後手後手に。
一方、米国国務省が女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンを派遣するなど、世界各国も事態の推移と日本政府の対応に強い関心を示していく。
そんな中、様々な思惑が交錯する関係機関をまとめ上げ、ゴジラによるこれ以上の破壊を食い止めようと奔走する矢口だったが…。
脚本は、庵野秀明。
徹底的なリサーチをスタッフがバックアップ。
出演。
キャストは、大幅に割愛。なにしろ、329名ですから。
一応、メインだけ。
長谷川博己が、内閣官房副長官 矢口蘭堂。
竹野内豊が、内閣総理大臣補佐官 赤坂秀樹。
石原さとみが、米国大統領特使 カヨコ・アン・パタースン。
高良健吾が、内閣官房副長官秘書官 志村祐介。
松尾諭が、保守第一党政調副会長 泉修一。
市川実日子が、環境省自然環境局野生生物課課長補佐 尾頭ヒロミ。
高橋一生が、文部科学省研究振興局基礎研究振興課長 安田龍彦。
塚本晋也が、国立城北大学大学院生物圏科学研究科准教授 間邦夫。
津田寛治が、厚生労働省医政局研究開発振興課長(医系技官) 森文哉。
大杉漣が、内閣総理大臣 大河内清次。
余貴美子が、防衛大臣 花森麗子。
柄本明が、内閣官房長官 東竜太。
平泉成が、 農林水産大臣 里見祐介。
國村隼が、統合幕僚長 財前正夫。
野村萬斎が、ゴジラのモーションキャプチャーを担当。
スタッフ。
製作は、市川南。
エグゼクティブプロデューサーは、山内章弘。
プロデューサーは、佐藤善宏、澁澤匡哉、和田倉和利。
ラインプロデューサーは、森徹、森賢正。
撮影は、山田康介。
美術は、林田裕至、佐久嶋依里。
デザインは、前田真宏 (ゴジライメージデザイン)/竹谷隆之 (ゴジラキャラクターデザイン)
編集は、佐藤敦紀。
音響効果は、野口透。
音楽は、鷺巣詩郎。
音楽プロデューサーは、北原京子。
美術デザインは、稲付正人
VFXスーパーバイザーは、佐藤敦紀。
VFXプロデューサーは、大屋哲男。
スクリプターは、田口良子、河島順子。
スタイリストは、前田勇弥。
ヘアメイクは、須田理恵。
照明は、川邉隆之。
整音は、山田陽。
装飾は、坂本朗、高橋俊秋。
特技監督は、樋口真嗣。
特殊造形プロデューサーは、西村喜廣。
録音は、中村淳。
C班監督は、石田雄介。
D班監督は、摩砂雪、轟木一騎、庵野秀明。
アニメーションスーパーバイザーは、佐藤篤司(ゴジラアニメーションスーパーバイザー)
カラーグレーダーは、齋藤精二。
キャスティングプロデューサーは、杉野剛、南明日香。
プロダクション統括は、佐藤毅。
准監督は、尾上克郎。
総監督助手は、轟木一騎。
特技総括は、尾上克郎。
扮飾統括は、柘植伊佐夫。
宣伝監修は、庵野秀明。
東宝ひいては日本映画界最大のスターであるゴジラのリブートを庵野秀明×樋口真嗣が請け負った怪獣ポリティカル・サスペンス。
マニアの本気、プロの本気、東宝の本気、ヒットメイカーの本気が漲る。
細かすぎる技、ネタ、謎、遊び心、出来ることを盛り沢山にし、出来ないことを切り捨ててみせた潔さ。
その挑戦は、日本映画史の伝承を21世紀に権現させ、エンドクレジットにこそ感動する。
好きであることの強さ、好きにやることの強さを見せつける。
現実が虚構で神話となり、虚構が現実を信じさせる傑作。
おまけ。
英語題は、『SHIN GODZLLA』、または『GODZLLA RESURGENCE』。
上映時間は、120分。
製作国は、日本。
キャッチコピーは、「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。」
「日本VS虚構(ゴジラ)」というキャッチコピーだが、これは「日本(東宝)VS虚構(映画)」という構図でもあった。
劇中で日本が組織力でヤシオリ作戦を行ったように、東宝が、庵野秀明とスタジオカラーが、樋口真嗣と尾上克郎と日本特撮チームが、スタッフ・キャストが、組織戦でシンゴジ作戦を、達成させた。そのシンクロを、エンドクレジットに感じた。(D班まであり、絵コンテにはエヴァチームが大挙参加)
つまり、虚構(ゴジラ)を現実(映画)にする戦いを見て、感動したのだ。(実際には、現実日本vs災害、新ゴジラ映画vsシンゴジチーム、劇中のゴジラvs日本、という3つの戦いのシンクロともいえる)
だから、エンドクレジットこそ熱いのだ。
素晴らしかった!!
史上屈指の大傑作怪獣映画。
ちゃんとしたの書く前に吐き出さないといられない。
嫌いな人は吐くぐらい嫌いだろう、と言えるぐらい突き抜けてた。
東宝の大作で好きを貫いてた。
ある写真で泣きそうになった。
『神の獣』を少しは参考にしたのかも。
パープル・クリスマスな贈り物の怪獣ハードSF。
ややネタバレ。
「呉爾羅って何だ?」のセリフの最中に、部下がスマホで調べているというのは、今後、邦画に増えそうな演出。
進化順は、巨大なオタマジャクシのような第1形態で水中を移動、尻尾だけが見える。
ラブカのような頭の両生類のような第2形態で上陸。
やや危なげな足取りだが二足歩行をはじめた第3形態で体温が上昇し、いったん海中に戻る。
巨大化して顔つきも変わり、再上陸の第4形態。
ネタバレ。
アオリも含めての考察。
ラストの尻尾のあれは巨神兵に進化するんじゃなかろうか。なので、『巨神兵、東京に現る』に繋がるというか『風の谷のナウシカ』に繋がる。つまり、火の七日間の始まりってこと。
第一形態の動きには王蟲っぽさも感じる。
なので、最後の【終】には世界の終りも感じたりして。
ゴジラのレーザーはイデオンであり、巨神兵であり、ラピュタのロボット。(つまり、ガンバスターと同じ)
東京が火の海になるカットは『天空の城ラピュタ』に酷似。
日本VS虚構(ゴジラ)というキャッチコピーだが、これは日本(東宝)VS虚構(映画)という構図でもあった。
劇中日本が全力で組織戦でヤシオリ作戦を行ったように、東宝が、庵野秀明とスタジオカラーが、樋口真嗣と尾上克郎と日本特撮チームが、スタッフ・キャストが、組織戦でシンゴジ作戦を、達成させたシンクロを、エンドクレジットに感じる。(D班まであり、絵コンテにはエヴァチームが大挙参加)つまり、虚構を現実にする戦いを見て、感動したのだ。(実際には、現実日本vs災害、新ゴジラ映画vsシンゴジチーム、劇中のゴジラvs日本、という3つの戦いのシンクロともいえる)
だから、エンドクレジットこそ熱いのだ。
シン・ゴジラにはバクテリア以外にも巻博士のDNAが組み込まれている可能性あり。
だから、じょじょに人間になっていく。
ある意味で、エイリアン・ニューボーン。
ちなみに、ビオランテはG細胞と薔薇と人の細胞で作られた怪獣だった。
政府と自衛隊の対応vs博士が作り出した怪物という意味では、ビオランテをゴジラに見立ててをやったのだとも言える。
プロットは、怪獣漫画『神の獣』に似ている。
怪獣による世界崩壊を防ぐ、人間VS巨大災害を描いている。
手前味噌だが、ゴジラに関わっていた時に、この作品を基に「ゴジラをやり直しては?」と提案したことがある。
というよりは、みな、怪獣映画にこのアイディアを浮かんでいたが、それを映画できっちりとやれる英断をしてくれなかった。
それを実現しただけでもそれは快挙。
で、学生時代に庵野秀明が作った『帰ってきたウルトラマン』がベースであるようだ。
その内容は<前触れもなく、ある日、日本に巨大怪獣が出現。地球防衛組織に所属するMATが対応するが、怪獣はビクともしない。参謀本部は核兵器の使用を決定。だが、主人公は”日本に再び核を落とすのは許さない”とウルトラマンに変身。核兵器の投下のタイムリミットとも戦いながら、怪獣を倒す>というものだそう。
移動経路は、『WXIII 機動警察パトレイバー』の13号に似ている。(だから、グエムルにも似ている)
それは、それらがオリジナル『ゴジラ』に影響を受けているともいえる。
『機動警察パトレイバーTHE MOVIE』や『サンゲリア』にも近いところも。
押井守の実写方法論もかなり取り込まれている。『パトレイバー2』で出来て、実写『パトレイバー』が出来なかったことが今作にはある。
ゴジラの目が丸なのは、目線を気にしないですむからってのもあるはず。
今回のゴジラは地震=災害と原発の象徴。津波のカットがわずかにある。なので、対処は福島原発と同じ放水車による冷却と放置。
『震(シン)・ゴジラ』だともいえる。
放射線の無効化は、『ゴジラ』(2014)ではムートーに託したが、『シン・ゴジラ』ではゴジラ(=巻博士)自身に託している。
蒲田からの上陸で最後に日比谷と考えると、松竹→東京映画→東宝ラインともいえる。
松竹蒲田スタジオ→東京映画(戦前東宝のイメージを引き継ぎ、砧スタジオで制作)→東宝の本社は日比谷にある。
ゴジラが凍結されたあたりは東宝本社の近所で、小さいゴジラ像があの形で置かれている。
今回のゴジラを作った張本人は、元城南大学統合生物学教授 牧吾郎博士(牧元教授と呼称)は岡本喜八(故人ゆえ写真のみ)
ということは、これは東宝への挑戦状でもある。
『日本のいちばん長い日』、『沖縄決戦』だけでなく『ブルークリスマス』もかなり参考にされていると思われる。(特に室内の編集はかなり引用している)
岡本喜八は東宝で好きにやって、社内で干され、独立した。
(庵野秀明は岡本喜八作品から編集を学んだ。ソフトに寄稿した際に対談もしており、シネパトスの岡本喜八特集の際にはトークショーもしている)
ちなみに、牧吾郎は84年版『ゴジラ』の記者の名前で、薬を口から飲ませる作戦は『ゴジラVSビオランテ』にも出てくる。
そして、今後は、庵野秀明の「私は好きにした、君たちも好きにやれ」 が響くのだ。
石原さとみと長谷川博己がクライマックスで語り合う建物は『太陽を盗んだ男』で菅原文太とジュリーが対決したところ。
核つながりというよりは、長谷川和彦=ゴジ(シン・ゴジ)つながりか。
あまりのエヴァンゲリオン的という文言を見かけるが、そもそもあちらがウルトラマンやゴジラの特撮の神様 円谷英二へのオマージュでもあったのだから、先祖返りともいえる。
『トップをねらえ!』には『大宇宙怪獣ガメラ』へのオマージュも多い。
早口が話題だが、『ソーシャル・ネットワーク』と同じ(3時間分の脚本を2時間に収まっている)で、ある種の会議が早口で映画でも問題ないのはすでに証明済み。
『ザ・ホワイトハウス』で政治が早口なのはもはや定番。
第二形態は、『八岐大蛇の逆襲』へのオマージュの模様。
八塩折(ヤシオリ)もそこからかな。
もしかしたら、あのバクテリアは、ミノフスキー粒子なんじゃないか!?
近代日本は巨大なトラウマを神または怪物に戯画化させて、取り込んできた。
アメリカがそれをリアルな映画で取り込んできたように。
そして、それをスーパーヒーローで何度も取り込み直してきたように。
重い歴史は、過去は神話化で、民族の記憶として取り込まれてきた。
同じように、近代日本は、映画、漫画による戯画化で取り込んでいく。
そして、それを取り込んだフィクション自体がある種のトラウマ、強烈な文化的災害、裏返して言えば、創造の福音として、もたらされる。
預言を伝えるように、オマージュや引用がなされていく。
『シン・ゴジラ』に人間ドラマがない、そもそも物語が弱いという弁をよく見かける。
当たり前である。
なぜなら、『シン・ゴジラ』は神話であり、宗教譚なのだから。
(もちろん、神話や宗教譚の体で人間ドラマも描けるが)
そもそも、映画と神話は神話性が高く、語り口にたびたび選ばれてきた。
戦後、第二次世界大戦のあの記憶を円谷英二と本多猪四郎によって『ゴジラ』として描いた。
そこでは、ゴジラという怪獣が神として現れる。
岡本喜八は、戦争の終わりの日を描いた『日本のいちばん長い日』で決断の日を戯画化した。
そこでは、玉音放送のレコードが預言、聖書として、現れる。
その後の日本の恐怖を、黒澤明は『生きものの記録』で描いている。
そこでは、中島喜一という怖がりの男が預言者として、現れる。
宮崎駿は、『風立ちぬ』で、あの戦争の後ろで支え、翻弄された作り手を描いた。
そこでは、零戦が神器であり、聖遺物として、現れる。
そして、庵野秀明の『シン・ゴジラ』では、戦後ではなく災害後(災後)の日本が描かれる。
ここでは、神に抗い、虚構の神を信じ、作り上げ、戦う人々が信者として、現れる。
信者はつまり、旧約聖書のヨブ記のヨブであり、出エジプト記のモーゼと逃げるユダヤ人である。
『エヴァンゲリオン』でも、庵野秀明は聖書(死海文書は物語を左右する)をモチーフにしている
最近、物語がないと批判された『マッド・マックス4』もまた古き神話構造で語られていた。
聖書では、人間個々のドラマではなく、人間(信者)と神の関わりが描かれる。
形而上の存在である神を実写映画は権現化、つまり、目に見えるようにする。
(アニメでは、宗教画になってしまうのではないか)
ゴジラは、唯一神と自然神を、聖書と日本書紀を、融合させている存在だともいえるかもしれない。
日本に、神を八塩折の酒で留まらせるのだから。(現実には、日米安保条約か・・・原発か)
つまり、『シン・ゴジラ』は、『信・ゴジラ』とも言えるのだ。
そして、福島原発の凍土壁は凍らず、作戦は失敗している。
せめて、怪獣映画でぐらい、成功してもいいじゃないか。
現実は、失敗で、それを日々報告され続けるんだから。
映画は夢、それはパラダイス、せめて、怪獣映画でくらい成功してもいいじゃないか。
この映画を見て、現実の日本政府も優秀だと思う者がいるのだろうか?
この映画のゴジラを倒して、現実の災害を止められたと思う者がいるのだろうか?