で、ロードショーでは、どうでしょう? 第685回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
『アイアンマン』シリーズで知られるジョン・ファヴローが製作・脚本・監督・主演で贈るハートウォーミング・コメディ。
離婚やオーナーや評論家との衝突で悩みを抱えるシェフの主人公が、自らの誇りと家族との絆を取り戻していく姿を描く。
監督・脚本・共同製作・主演は、ジョン・ファヴロー。
物語。
ロサンジェルスの一流フエンチ・レストランでシェフ(料理長)を務めるカール・キャスパー。
離婚した元妻と仲は悪くないが息子との関係は少しギクシャクしている。
お店に、人気のグルメブロガーの料理評論家ラムジー・ミシェルが来店することになり、カールは革新的な新メニューで挑もうとするも、オーナーに却下され、いつものメニューで対応する。
評論家ラムジーには酷評を受ける。
それはツイッターなどで拡散されたことを知り、息子にツイッターを教わり、ラムジーへ悪口をぶつけたところ、それも拡散されてしまう。
そこで、カールは、ラムジーに「もう一度、店に来い、本当の俺の料理を食わせてやる」とツイッターで挑戦状を叩きつける。
新しいメニューに取り組むカールだったが・・・。
出演。
悩めるシェフのカール・キャスパーに、ジョン・ファヴロー。
料理特訓を受けて、自分自身に当て書きしたキャラを己のように演じている。
その元妻イネスに、ソフィア・ベルガラ。
濃い顔なのだが、元の出自を感じさせる人の良さでギャップがいい感じ。
部下のマーティンに、ジョン・レグイザモ。
こういうどっちに傾くかわからない調子のいい二番手の役を演じさせたら鉄板。
ホール係のモリーに、スカーレット・ヨハンソン。
副シェフのトニーに、ボビー・カナヴェイル。
腕と人はいいけど、オツムの弱そうに見える役をやらせたら、絶品。
有名なグルメブロガーのラムジー・ミシェルに、オリヴァー・プラット。
頑固そうな偉い人なのに、ブレない芯を見せるいぶし銀の見せ方がさすが。
レストランのオーナーのリバに、ダスティン・ホフマン。
フランス人役も何度かこなしている名優はこういうヤナ役にも説得力を与えている。
元妻の前の夫マービンに、ロバート・ダウニー・Jr。
ちょい役なのにこの存在感たるや。
ほかに、エイミー・セダリス、エムジェイ・アンソニーなど。
スタッフ。
共同製作は、セルゲイ・ベスパロフ。
キャスティングは、サラ・ハリー・フィン。
撮影は、クレイマー・モーゲンソー。
料理の美しさと美味そうなシズル感は、アメリカ映画でも屈指の出来。
アメリカの景色の捉え方もグッド!
プロダクションデザインは、デニス・ピッツィーニ。
衣装デザインは、ローラ・ジーン・シャノン。
編集は、ロバート・レイトン。
共同制作と料理指導は、ロイ・チョイ。
実は、彼がこの物語のモデル。
大作監督となったジョン・ファブローが原点に戻って、主演・脚本・監督・製作を兼ねて作った人情ドラマ。
日常のちょっとした転換期を料理と音楽とデジタルメディアでにぎやかに楽しませる。
つぶされるような葛藤や重いトラウマや派手なアクションも複雑な心理もなく、飲みの席で友人のエピソードを聞いているかのよう。
車の窓を開けて走るような風に吹かれながらソウルフードを片手に鼻歌が思わずシャウトになってしまうような軽やかな佳作。
キューバンサンドが食べたくなっちまったい。
おまけ。
上映時間は、115分。
製作国は、アメリカ。
キャストの使い方の決まり具合は、まさに職人技。
新しい役柄ではなく、定番でありながら、そこにちらっと味を加えてる感じがいいのよ。
パンフレットは劇中料理のほとんどのレシピを紹介していて、お得です。
作れ、ということですね。
そして、ファブロウってことだな。
あ、ファブリーズするじゃなくて、ファブローのように太ろうということですね。
ややネタバレ。
原題は、『CHEF』。
フードトラックのお店の名前は、『EL JEFE』で、スペイン語で『シェフ』ですね。
字幕でその説明を出さないのは、ちょっと不親切だと思うわ。
葛藤も少なく、ひねりがない人情ものに見せて、かなりの工夫を加えていて、舌を巻きます。
その工夫の一つが、デジタルメディアの使い方。
料理は親の領分と息子を突き放しておきつつ、その息子をデジタルメディアの使い方で認めていく展開の上手さとそのツールの使い方、ツイッターなどの見せ方は、同種作品の中でも群を抜いている。
その視覚化も丁寧で技あり。
父から息子に、料理用ナイフを渡すシーンは定番ながら、ぐっとくるよね。
同じ用に料理用ナイフを贈るシーンは、最近だと『カワイイ私のつくり方 全米バター選手権!』にもありましたね。
モデルであるロイ・チョイは韓国系で、アメリカのフードトラックの革命を起こした料理人。
シェフをクビになり、韓国風のコギBBQのフードトラックで大成功をおさめた。
なので、ジョン・ファブローもロイチョイに監修を依頼しており、実際にコビBBQのフードとトラックで働いて学んだそう。
映画の中だけでなく、作品のプロモーションでもツイッターを大いに活用し、劇中のフードトラック同様、観客のクチコミをうまく活用し、アメリアkではヒットに導いている。
ファブローの最新のツイッター情報によると、役のモデルでもある料理指導のロイ・チョイと何か料理店のプロジェクトを立ち上げたみたいですよ。
ほかの工夫は、ネタバレで。
ネタバレ、
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という邦題は、この映画の重要な転換点を語りすぎな気もします。
タイトルがほぼ宣伝なのもわかるし、内容は予告編で見れはしますし、フードトラックという題材を描いている部分を楽しんで欲しいという親切さも伝わります。
でもね、それ半分だよね。
映画の中心はシェフであって、だから、トニーの悩みとマーティンの行動、人生と家族とお店を重ねている語りがある。
原題の『シェフ』にあるシンプルさが薄れてします。
それはこったわりに古臭いフランス料理のレストランから、キューバンサンドと伝統料理を融合していくトラック屋台からキューバとフランス料理の融合店への流れと重ねられている。
それは、アメリカの時事ネタでもある。
ヨーロッパから離れて、アメリカ大陸へ。
持ち込まれた各国の要素を取り込みながら、アメリカを作っていく。
キューバとの国交復活もありますしね。
奥さんと出会ったマイアミ新しいレストランの雇われコック
↓
離婚して若い元恋人のいる伝統あるフレンチ・レストラン
↓
息子を連れて、元奥さんの元夫から援助してもらった一品系トラック屋台
↓
息子と元奥さんが手伝う独自の一品系トラック屋台
↓
敵がオーナーになり、妻と復縁(結婚したかは不明)し、その親も一緒に音楽のある独自のレストラン
という流れがあるわけです。
それに、ジョン・ファブロー自身の監督のキャリアも重ねているように見える。
大作続きだった監督が小品を作るのはよくある話で、マイケル・ベイも『トランスフォーマー4』の前に『ペイン&ゲイン』なんていう実録犯罪ブラックコメディを作ってました。
ジョン・ファブローも同様のようで、彼の監督としての境遇と今作の中の料理人の状態を重ねずにはいられまsねん。
定番の料理がたぶん前作の『カウボーイ&エイリアン』で、キューバン・サンドがこの『』この映画『シェフ』なのでしょう。
けちょんけちょんの『カウボーイ&エイリアン』に、大ヒットの『シェフ』と。
そうなるとトニーに当たる誰かはシェフになり、あの店はあの店でやり続けていくのでしょうけど。
元妻の元夫が『アイアンマン』で元恋人がブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソンなのは、マーティンとの友情を感じさせますね。
モテモテで美人女優が相手でもラブシーンを描かないあたりと太ったとか自嘲気味にダメなところをがっつり描いてるのは自制が効いてますな。
とはいえ、『アイアンマン』も『アベンジャーズ』も製作総指揮で名は連ねているのですが。
一応、ジョン・ファブローの略歴。
俳優として活躍しつつ、体験談を元にした脚本作『スウィンガーズ』で注目され、『Made』で劇場監督デビュー。
『エルフ』と『ザスーラ』が続けてヒット、『アイアンマン』が特大ヒット。
『アイアンマン2』は大ヒットで少し落ちて、『カウボーイ&エイリアン』はまぁまぁコケる。
『アイアンマン3』は脚本のシェーン・ブラックに譲って、今作に至る。
次回作は、『ジャングル・ブック』。
ちなみに『ジャングル・ブック』は実写で4度目の映画化、アニメも入れたら6本の映画があるので、どう料理するのでしょうね?
毎日の一秒動画系は、映画で使われそう。
てか、使いたい。