菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

パパドッグじゃないんですよ。 『ババドック ~暗闇の魔物~』

2015年11月01日 00時02分21秒 | 俺は好きなんだよ!

【俺は好きなんだよ】第793回は、『ババドック ~暗闇の魔物~』(2014)

 

原題は、『THE BABADOOK』。

絵本の名前であり、怪物の名前です。 

 

 

上映時間:94分

製作国:オーストラリア

 

 

スタッフ。

監督:ジェニファー・ケント          

製作:クリスティーナ・セイトン/クリスティアン・モリエール          

製作総指揮:ジョナサン・ペイジ/マイケル・ティアー/ジャン・チャップマン/ジェフ・ハリソン          

脚本:ジェニファー・ケント          

撮影:ラデック・ラドチュック      

プロダクションデザイン:アレックス・ホームズ      

衣装デザイン:ヘザー・ウォレス   

編集:サイモン・ンジョー             

音楽:ジェド・カーゼル   

 

 

出演。

エシー・デイヴィス           (アメリア)

ノア・ワイズマン               (サミュエル)

ヘイリー・マケルヒニー   (チャーリー) 

ダニエル・ヘンシュオール          (ロビー) 

バーバラ・ウェスト          (ミスター・ローチ)

ベンジャミン・ウィンスピアー      (オスカー)

クロエ・ホーン  (ルビー)

  

 

物語。

夫を悲惨な事故で失ったシングルマザーのアメリアは、一人息子のサミュエルと共に暮らしていた。

サミュエルは学校でしばしば暴力的な行動を起こす問題児で、言うことを聞かない息子に手を焼き、仕事との板挟みで、アメリアは疲れ果て、悪夢にうなされる日々。

サミュエルも怪物が出る悪夢を見ては夜中に飛び起き、アメリアの読み聞かせで眠りにつくのが習慣だった。

ある夜、サミュエルはアメリアの知らない『ミスター・ババドック』という題名の赤い絵本を持ってくる。

バ・バ・バ・ドック・ドック・ドックという音とともに現れるま黒い怪物”ババドック”が登場する、不気味な飛び出す絵本で、なかにはこんな一節があった。

「ほんとのわたしをしったなら、ほしくて、もうたまらない。死がほしくてほしくてたまらない」

それ以来、サミュエルは、本当に、ババドックがいると言い出し、問題行動がさらに増えてしまう・・・。

 

 

受賞歴。

2014年の第47回シッチェス映画祭にて、エシー・デイヴィスが主演女優賞と審査員特別賞を受賞。

 

 

 

低予算のホラー映画でありながら、サンダンス映画祭をはじめ各地の映画祭で評判を呼び、50以上の賞に輝き、本国オーストラリアのアカデミー賞ではみごと作品賞を受賞するなど、2014年で世界的にもっとも話題を集めたインディペンデント・ホラー。

  

シングルマザーと幼い息子の周囲で起き始める不気味な現象の数々の原因は、謎の絵本にかけられた呪いか、幼い息子の心の闇か、それとも育児ノイローゼ気味の母親が抱いた妄想か・・・。

監督のジェニファー・ケントは女優出身で、自ら手がけた短編を基にした本作で記念すべき長編デビューを飾った。

主演の母子の演技と独特の編集リズム、シャープな映像美が印象に残る俊作。

 

 

 

 

余談ですが、劇中に登場する“ミスター・ババドック”の絵本は2015年にオーストラリアで出版される予定があるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

ホラーというジャンルに収まらない方法として、別ジャンルでも描かれるテーマをホラー的な題材として昇華できるかどうかにかかっている。

特に、親子関係、恋愛関係、宗教、戦争、科学や社会状況、土着、性的圧力、生理的反応や本能的恐怖だ。

親子関係と宗教は『エクソシスト』、『キャリー』、『ローズマリーの赤ちゃん』など。

土地的恐怖は『悪魔のいけにえ』、『シャイニング』、『ポルターガイスト』など。

科学や社会状況は『フランケンシュタイン』、『羊たちの沈黙』、『顔のない眼』、『ザ・フライ』、『ゴジュラシック・パーク』など。

戦争は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』、『ジェイコブス・ラダー』、『ゴジラ』など。

性的圧力は『エイリアン』など。

生理的、本能的恐怖は、『リング』、『砂の女』、『エルム街の悪夢』など。

 

 

今作は、シングルマザーの子育てと社会状況の恐怖を妄想として描くことで、怪物の存在を顕在化させている。

つまり、通常のジャンルをホラーの形式で描いている。

『ローズマリーの赤ちゃん』、『KOTOKO』や『ザ・ショック』に近いタイプで、日常にある情報を描くことで恐怖を作り出している。

だが、ホラー表現としてはおとなしめになりがちなその形式を、今作では、子供の虚言と怪物の絵本、母親の変化から、きっちりホラーとしての強度も上げていることが素晴らしい。

 

子供が母親の中にいる怪物を倒すというのは、『エクソシスト』の逆転構造になっているのが上手い。

 

ところが、日本人の妖怪好きというか人外好きの性質がアダとなって、怪物ホラーを期待した向きには物足りなかったのだろうか。

最後もあくまでは母親の妄想ともとれるようににしていたり、明快にしない居心地の悪さ、父の幽霊かもしれないという多解釈させる開いた感じとかが優れているのだが。

それらが敬遠され、この俊作を未公開にさせてしまった原因なんだろうなぁ。

 

 

 

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