菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

メルシーボ!!   『オーケストラ!』

2010年05月01日 00時00分52秒 | 映画(公開映画)
 
で、ロードショーでは、どうでしょう? 第133回。



「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」







『オーケストラ!』






負け犬逆転モノというか、音楽コメディの傑作。


今は清掃夫へと追いやられたロシアの30年前は天才といわれた指揮者が、フランスからのオーケストラの出演依頼を勝手に受けて、当時のオーケストラを再結成し、フランスへとコンサートをしに行く落ちこぼれの逆転コメディ。

かと、思わせていて、それだけに終わらない素晴らしい謎がこめられている。

ロシアという舞台が、この奇想天外な物語に真実味を与えている。
しかも、長編3作目のラデュ・ミヘイレアニュ監督(脚本も)は、まるで、実話の映像化のような細やかな描写と演出で語りつつ、一瞬たりともエンターテインメントの精神を緩めない。
『オーケストラ!』の原題は 『Le concert(コンサート)』。
なので、コンサート・シーンは当然あるのですが、これがね、すすす素晴らしい。
その、あまりの怒涛ぶりに、耳が巨大になり、透き通ってしまう気さえする。
素晴らしいサイレント的な映画の語り口が、もうね目を閉じて聴き入りたいほど。
いや、目を閉じたら、その最高の語りが見えないんだけどね。

おいらは、その音楽と笑いのバランスに、プレストン・スタージェスの傑作『殺人幻想曲』を思い出したわ。
そのコンサートを膨らませるために、音楽シーンを抑えているあたりに、計算と意気にやられます。

『イングロリアス・バスターズ』で発見されたメラニー・ロランが重要な役どころで出演。
この作品でも、素晴らしい演技を見せていて、ミヘイレアニュ監督は、「僕の方が女優を使うのは上手い」と対抗するのも納得の好演。
なにより、出てくる役者の顔がいい。
主役のアレクセイ・グシュコフをはじめてとして、フランソワ・ベルレアン、ドミトリー・ナザロフ、ヴァレリー・バリノフ、アンナ・カメンコヴァ、ミュウ=ミュウが担った出番の時間を何倍にも感じさせる存在感を見せてくれます。

おいらのお気に入りは、奥さん。
あのスラブ母さんが、旦那から計画を聞かされたシーンがたまりません。
「殺すわよ。フランスに行かなかったら」
ああやって、送り出されたい!
あと、ロマのおっさん。
彼が出てくるたびに、ニヤニヤが止まりませんでした。



政治的で、緊張感もあり、リアリティも、ドラマチックでもありながら、生活感にあふれ、圧倒的にコメディ。
フランスでナンバー1ヒットもうなづける作品。
ロシアの政治的な圧力を受けたユダヤ人の悲劇を、その優等生ではない生命力あふれる描写は見習いたい。
実は、このラデュ・ミヘイレアニュ監督自身が、チャウセスク政権の時代にフランスに移住したユダヤ人なんだとか。
ロシアの政治にも翻弄されるユダヤ人の苦しさだけに留まらせない作家の語りがホントにぐっと来ますよ。


おいらが、観たのはシネスイッチ銀座だったのですが、自分が観た回も満席でしたが、観終えて出たら、劇場をはみ出すほどの長蛇の列。
いい作品は、やっぱり伝わるのだと、ニヤニヤが倍増して、ニヤニヤ×2で、5656(ゴロゴロ)。
そうか、猫がゴロゴロと喉を鳴らすのは、ニャーニャーから倍嬉しいからだったのか!
並んでいる人に「コレ最高っすよ」と伝えてあげたくなりつつも、そこをぐぐっと押さえて、劇場を後にしたのでした。



もうね、劇場で見て欲しい。
全力で、オススメします。
掛け値なしで推せる、こういう作品は3年に一本あるかないか。
音楽映画の名品です。





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