菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

嵐(テンペスト)、荒らし、フォー・ドリーム。 『プロスペローの本』

2024年03月22日 00時00分35秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2324回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『プロスペローの本』

 

島流しになった元ミラノ公が魔法の本を使い、自分を追い落とした者たちの乗った船を嵐に遭わせるアート・ファンタジー・ドラマ。

ウィリアム・シェイクスピアの復讐劇で最後の戯曲『テンペスト』を大胆に脚色。

 

プロスペローの本の作品情報・あらすじ・キャスト - ぴあ映画

原題は、『Prospero's Book』。
『プロスペローの本』。

 

製作年:1991
製作国:イギリス・フランス・イタリア
上映時間:126分

配給:JAIHO

 

物語。

15世紀のイタリア王国から遠く離れた小島。
かつてミラノ大公だったプロスペローは、12年前にナポリ王アロンゾと共謀した弟アントーニオに国を追放され、娘ミランダとともに船で逃げ、絶海の孤島に流れつき、九死に一生を得る。
仇への復讐を誓ったプロスペローは、なんとか運べた友人ゴンザーロから託された24冊の魔法の本を読み解き、強大な力を手に入れる。
彼は、本の力で、島にルネサンス風のかつてのミラノを思わせる庭園を築き上げる。
そして、怪物キャリバンや妖精エアリエルを操り、公国を強奪した仇が移動する船の航路に嵐をぶつけるという復讐劇の創作という呪文を唱え始める。

 

監督・脚本は、『ZOO』『英国式庭園殺人事件』『コックと泥棒、その妻と愛人』の英国の名匠ピーター・グリーナウェイ。

主演は、イギリスを代表するシェイクスピア俳優の名優ジョン・ギールグッド。
共演は、『ロザリンとライオン』のイザベル・パスコー、『仕立て屋の恋』のミシェル・ブラン、マーク・ライランス。

日本人デザイナーのワダエミが衣装を担当している。

<ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師>にて特集上映。(※4K上映は対応劇場のみ。その他は2K上映)

 

 

スタッフ。

監督・脚本:ピーター・グリーナウェイ
製作:キース・カサンダー
製作総指揮:キース・カサンダー、デニス・ウィグマン
共同製作:フィリップ・カルカソンヌ、ミシェル・セイドゥー
字幕:齋藤敦子
原作:ウィリアム・シェイクスピア『テンペスト』

撮影:サッシャ・ヴィエルニー
美術:ベン・バン・オズ ヤン・ロールフス
衣装デザイン:ワダエミ、ディーン・バン・ストラーレン
編集:マリアナ・ボドビル
音楽:マイケル・ナイマン

 


出演。

ジョン・ギールグッド (プロスペロー/元ミラノ公)
イザベル・パスコー (ミランダ/娘)

マイケル・クラーク (キャリバン)
オーファロ (エアリアル/妖精)
ポール・ラッセル(エアリアル/妖精)
ジェームズ・ティエリー(エアリアル/妖精)
エミール・ウォーク  (エアリアル/妖精)

ミシェル・ブラン (アロンゾ/ナポリ王)
トム・ベル (アントーニオ/弟)
エルランド・ヨセフソン (ゴンザーロ/友人)
ジェラール・トーレン (アドリアン)
ウテ・レンパー (セレス)
マーク・ライランス (フェルディナンド)

 

 

『プロスペローの本』を観賞。
15世紀欧州、島流しになった貴族が魔法の本を使い、復讐を開始するアート・ファンタジー・ドラマ。
ウィリアム・シェイクスピアの復讐劇で最後の戯曲『テンペスト』を原案に大胆な脚色。
ピーター・グリーナウェイが、その目くるめく映像美で映画館を美術館に変える。
<ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師>にて特集上映なんだが、4Kリマスターとそうでないのがある。今作は4Kリマスターではない。独特の褪せた感じでデジタル化されており、それが古典感にもなっている。きれいすぎるともしかすると生々しすぎ立て幻想感が薄れたかもしれない。なにしろ、妖精たちは、真っ裸や露出の激しい格好で出てくるので、数十人がモロ出しなので。とはいえ、バストサイズさえ少なくほとんどは絵画的にフルサイズでも大きいくらいの引きの画面、タブローな世界で映されるので、油絵や彫刻の裸像と大差はないのだが。
大胆な脚色は、まず主人公が魔法の本で魔法を得たこと。この本は原作には出てこないが、原作では一人だけ魔法を使えるのはなぜかが説明されないので、有りえる方向にしている上に、シェークスピアの中でも難解で想像力に富み過ぎているファンタジーに足をつけた。しかも、それ自体が映画の大いなる仕掛けになっている。
24冊もの本が出てくるが、それぞれの章で描かれる魔法が実にグリーナウェイ的に衒学的で目に楽しい。
ルネサンス期の人物彫刻や絵画が目の前に立体物や生物として存在したらという発想に加え、それを額縁にして、絵画を見る視点まで付け加え、そこにマイケル・ナイマンの音楽が鳴るのだから、竜宮城ってこんな感じなのかもと頭に絵を描いてしまう。
絵画的だが、絵画ではできないのはダンサーやプロモデルなどを起用しており、身体と運動が刻まれているから、世界的なバレエダンサー(パンクバレエの旗手だったそう)のマイケル・クラークが踊りまくり、その身体性はサーカスもかくやなのだもの。
ここまでアートなのに盛り込みまくりで、間口が広がってる。ファンタジー(RPG)好き、ダンス好き、絵画好き、演劇好き、映画好き、それぞれに目が惹かれるところがあるのだもの。
出ている人々の全員勝負の奉仕ぶり、それが圧倒的な美術を生き生きとさせ、目もくらむ。
名優ジョン・ギールグッドの声に耳もくらむ。
この本というのが大事。実際、話は定番の話で、それを回想と現在で語るのですが、約24冊を章立てて進むので、合わないところでもすぐ次が来るので、見やすい。
こういうつるべ打ちの串団子タイプ(変奏ですが)の構成好きなのよね。
しかも、それぞれのアート濃度が高いし。飛び出す絵本で出てきた紙の建物が実際に実寸で建造されたりとか、鏡の本とか、本自体かなりのつくりこみだし、出てくる庭園を数分長回しで見せ続けたりとか、『哀れなるものたち』の巨大セット並みのセットで、急にミュージカルになったりとか、テーマパーク的。実際にこんなテーマパークあったら、とても一日じゃあ見切れないものをたった2時間で物語込みで見られるんだから、そりゃあ、最高のおもてなしと言えるでしょう。
しかも、映画的にも他では見られない映像的ギミックやトリックがある。あのマルチスクリーンは今は簡単でやるのにかなり策を練る必要があるだろうけど、当時は斬新だったんだろうなぁ。見る側もその当時の驚きの目になれますよ。
物語としても、全体を貫く、大きなしかけがある(しかも冒頭に示されるし)ので、そこに気づいたとき、なんか自分もショーの一部に加わった感じになったなぁ。
スクリーンだからこその魔法で嵐に巻き込まれる一本。






映画感想「プロスペローの本」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

 

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ネタバレ。

魔法で実際に起きたようにも感じるし、すべて、プロスペローの筆による虚構にも見える。
その虚構の中で、彼は赦しという道を辿る。
虚構の中に思索と人生への道しるべを得ることの意味を描いてもいる。
まさに、シェークスピアの戯曲の価値をも変えてしまう。
物が対rについての物語でもある。
そして、最後、エアリアルは、画面奥からやってきて、画面の外に飛び出していく。

 

 

 

 

 

 

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