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俳優・勝地涼くんのこと。

『銀色の髪のアギト』(2)-3(注・ネタバレしてます)

2007-06-13 01:03:34 | 銀色の髪のアギト
・軍事都市ラグナに着き列車を下りるなりトゥーラは激しく咳き込む。先にアギトに「ここ(注・中立都市)の空気も好き」だと語った場面と対比して、彼女がラグナに馴染めないだろうこと、最終的に中立都市を選ぶだろうことを暗示している。
しかしシュナックもジェシカも自分たちだけ汚れた空気を遮断するためのマスクをしている。トゥーラにもマスクやれよ。

・ラグナと中立都市の関係は『風の谷のナウシカ』の軍事国家トルメキアと風の谷のそれを思わせる。トルメキアにはペジテという敵国があったが、やはり軍事国家だというラグナはどこと戦っているのだろう。
設定資料によると「他の国とも戦闘状態にある」そうなので、ラグナと中立都市以外の国も存在しているらしい。本編ではそのあたりの設定が見えにくいのが世界観を弱めてしまったかも?
(ちなみに『ナウシカ』原作ではトルメキアの交戦国は土鬼(ドルク)諸侯国。映画版のペジテは原作の土鬼と平和な工房都市ペジテを合わせたものなので、以前からの敵対関係にあったと言えるかどうか、やはり設定が見えにくくなってる感はある。)

・空気を激しく汚染しつつ生産物を造りつづけることでかろうじて文明を保っているラグナの人々。
そこまでして保たれる文明のいびつさ、それは保持するに足るものなのか?と現代文明を想起させつつ観客に問い掛けている場面。
まあ「人を襲う森」もいびつじゃないとは言えないけれど。

・アギトが強化体になるべく森に行ったのを悟って止めに行こうとするミンカ。
彼女の父ハジャンも強化体なので強化体を恐れる気持ちはないだろうが、逆に強化体のリスクは人一倍わかっているはず。ゆえに彼を案じないではいられないのだろう。

・アギトは自分の意志で森へ行くと決めたのだからとミンカを諭すハジャン。
アギトの心がわかるのは彼自身も、そしてアギトが敬愛する父アガシも、そうやって自ら決心して強化体となったからだろう。出番は少ないもののその生き方の重みが感じられる台詞。

・森の双子に出会い強化体となるアギト。格別儀式らしいものも試練もないので、わかりやすい試練が描かれない分、絵的にもエピソード的にも盛り上がらない感はある。
まあ『アギト』の世界観で行くと、なかば森のコントロール下に置くことができるのだろう強化体志願者は、森にとって歓迎できる存在なのでは。もし力を使いすぎて樹木化しても森の方は痛くもかゆくもないので、ことさら試練を課す必要もないというか。
とくにこの時は「トゥーラをシュナックから引き離したい」という点でアギトと森の利害は一致していたのだから、アギトの志願は願ってもない話だったろう。
むしろアガシの樹木化を見るに、これからいかに力を運用してゆくかが「試練」だといえる
(シュナックが主人公の番外編小説によれば、森に気に入られないと森に取り込まれてしまうらしいので、気に入られることも試練なのかも)。

・強化体の力を試すアギト。DVD特典のパイロットフィルムではアギトの他にもう二人の強化体の人物が登場してました。
構想通りに作れば5時間をオーバーしたはずという作品を1時間半にまとめる中で二人の存在を削り落とし、物語の焦点をアギトの周囲に集中させたのでしょう。『スピリット』から『銀色の髪のアギト』にタイトルが変更されたところに、その圧縮過程が表れているように思えます。
またパイロットの強化体三人組の男二人女一人という編成はアギトの父アガシ、ハジャン、ヨルダを彷彿とさせる。削ったキャラが親の世代の設定に生かされたのかも。

・「父さんと最後に約束したんだ。過去の文明を復活させちゃいけない」。
トゥーラやシュナックが取り戻そうとする過去の文明=彼らにとっての「正しい世界」は、つまるところ「森が人を襲う世界」を生み出した原因である。
過去の文明を復活させればまた同じ過ちを繰り返すだけ。荒廃した世界に街を築くために生涯を捧げたアガシにはそれが身に沁みてわかっていたに違いない。
そしてトゥーラに「一緒に帰ろう」と告げたあとに続ける台詞がこれであることに、アギトの行動理由は第一に「父との約束」なのだとわかる。

・助けに来たばかりなのに催眠ガスでさっさと眠らされてしまうアギト。このへんはあっさりしすぎてちょっと拍子抜け。
一戦交えたあととかならもっと自然だったと思うんだけど。

・「森がすごく怒ってるんだ」とトゥーラに言うアギト。トゥーラが「森の敵対者」であるシュナックのもとに行くことは森を刺激し、小さな問題はあれど森との共存を保っている中立都市の存亡に関わる。
もともと共存関係といっても森の方が人より強いので、圧倒的に森優位、人は森のルールに従うことで生存を許されているような感じである。
とくに生贄を要求したりするでもなく、わりあい穏やかで扱いやすい相手なのだが、トゥーラやシュナックには、人が森の下位に置かれてそれを当然のようにしているというのが信じがたいし腹立たしい。
上記のアギトの台詞を聞いたときのトゥーラの見下したような憐れむような表情は「なによ森ごときにそんな卑屈になって!」と言いたげだった。
トゥーラ役宮あおいちゃんの声のトーンにもその憐れみと苛立ちがよく表れていた(彼女は声質もアニメ向きですね。トゥーラのキャラによく合ってました)。

・捕らえられたアギトとトゥーラの会話。
アギトも、そして今やシュナックという同意者を得たトゥーラも自分の価値観が全てになっていて、それに対立する相手の価値観は間違いだと決め付けてしまっている。
お互い相手を気遣う心はあるのに、それが「自分が彼(彼女)の間違った価値観を矯正してあげなくては」という方向に向かってしまう。
トゥーラはアギトが強化体になったことを、「間違った価値観に洗脳されているせいで自ら化け物になってしまった悲劇」と捉えているが、アギトにとっては、それは自身の意志で父と同じ「英雄の肉体」を手に入れたという、リスクはあれども誇るべき出来事なのだ。
そうしてお互いに「なんでわかってくれないんだ!」と、相手を思うゆえに苛立つ(トゥーラの方などアギトの「頑迷さ」を憐れむあまりに別れ際に涙ぐんでさえいる)。
この場面に至るまでに、エピソードの積み重ねの中で二人の考え方がしっかり描かれているので、トゥーラの言葉にアギトがどう返すか、それにトゥーラがどう反応するかが全部読めて、両方に感情移入してしまった。全編で一番好きなシーンです。

・アギトが手枷を外そうと暴れるさいの「あああああ!!」という叫び声が妙に色っぽい。男の色気ではなくて、伸びやかさと不安定さが混在する青少年の色気。
アギトは15歳とはいえ外見的には10~12歳くらい(背もトゥーラより小さい)。普通なら女性の声優さんがやるような役なのになぜ当時19歳前後(収録が誕生日の前か後かわからないのでこう書きます)の勝地くんが?と思ってたんですが、この色気は確かに女性の声優さんの少年ボイスにはないものかもしれない。
ただアギトが色気の求められるキャラかというと・・・?(『銀色の髪のアギト コンプリート』のイラストでも銀髪のアギトは妙に色っぽかったりするので、求められてるのかも。このへんについては(4)で)。

・列車のあとを追おうとするアギトが「トゥーラー!」と繰り返し叫ぶ。こういうシーンがあるからトゥーラに惚れ切ってるように見えてしまう。
「トゥーラを取り戻して街を救わなきゃ!」の省略形としての「トゥーラ!」なんでしょうけど。無言で走ってるだけだと絵にならないというのもあったかも(だったら絵で出さなきゃいいわけだが)。
あとシチュエーション的にどうしても『ラピュタ』のパズーが「シーター!」と叫ぶ有名なシーン(公開当時CMでも流してた)を思い出させる。
ゆえに観客が自動的にパズーとシータの関係をアギトとトゥーラに当てはめてしまい、結果上手くはまらない(『ラピュタ』では二人の価値観は常に一致していたので、はまらなくて当然)→出来が悪い、という評価に繋がってしまったように思われて、とても残念です。

・「ちょっとした癖の一つまで父親ゆずりね、アガシ」。どことなく色香を漂わせるヨルダの台詞に、彼女とアガシの間に男女関係があったことが匂わされている。
その少し前の、ヨルダがアギトの額に手を当て暴走を止めるシーンで、目を閉じた二人の横顔がことのほかよく似ているのも、彼らに血の繋がりがあるのを暗示しているよう。
ノベライズでははっきりヨルダがアギトの母親だと書いてました。なぜそれがアギトに秘密にされてるのかは不明ですが。

(つづく)

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