イワン・アサノヴィッチは畑をやっています。もう足かけ20年になります。除草など単調な作業は夏の時期は辛いものです。昨年、そんな辛い作業の気晴らしにと思ってウオークマンを買いました。イヤホーンで歌謡曲やポップスのオールデイーズを聴きながら農作業に勤しみます。
レンタル店で、ちあき・なおみ全集などを借りたりしてストックは1000曲近くなります。でも1日で大体4・50曲を聴いてしまうのでウオークマンでは優に3・4往復ほど聴きこなしてしまいました。
そんな中で最初は気にもしていなかった曲のひとつに「1本の鉛筆」と言う曲があります。間違い安いのですが「鉛筆が1本」と言う曲ではありません。イントロの綺麗な曲です。美空ひばりが歌っていました。
♪ 1本の鉛筆があれば 戦争はいやだと私は書く ♪
♪ 1本の鉛筆があれば 8月6日の朝と私は書く ♪
♪ 1枚のザラ紙があれば こどもが欲しいと私は書く ♪
♪ 1枚のザラ紙があれば あなたを還して欲しいと書く ♪ <o:p> </o:p>
終戦直前の8月6日の広島、原爆投下によって赤ちゃんを亡くした若き母親の痛恨と哀切を謳ったものなのでしょうか。
演歌の女王ともオジョーとも言われ、歌謡界に一生涯君臨していたあの美空ひばりが、ヒットもしない小さな反戦歌を朗々と歌っていたのです。歌謡曲通を自慢していたイワン・アサノヴィッチも知りませんでしたし驚きました。
1974年の広島平和音楽祭で発表した曲でした。ひばり自身が好きな自曲ベスト10に選んでいた曲でした。
作詞は松山善三映画監督・作曲は佐藤勝、ソプラノ歌手の丹藤まさみがカバーもしている曲でした。
畑の作業や草取りは夏でなくとも単調で決して楽な仕事ではありません。ウオークマンは恰もイワン・アサノヴィッチが労働歌代わりとして聴いていた演歌や歌謡曲でした。3回4回と“1本の鉛筆”を聴いて行くうちに、哀調切々としたこの歌に魅せられ、あの美空ひばりが何故にと思いながらもツーッと目頭が熱くなってしまうのです。
畑と美空ひばりと熱い目頭、なんとも共通点のない似つかわしくない事柄なんですが、最近はイワン・アサノヴィッチ農園で繰り広げられてる奇妙な光景になっています。<o:p></o:p>