イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

歌謡曲は畑の労働歌 急げ幌馬車

2017-01-08 01:11:01 | 日記・エッセイ・コラム
 「急げ幌馬車」という歌は戦前にヒットした歌謡曲である。
歌の舞台は中国大陸・満州かと思われる。決して「西部劇」などではない。
昨夏、東京の江戸資料館で開催された、東京大衆歌謡楽団で歌われた曲だが、昭和に生まれ上海から引き揚げて来たイワン・アサノヴィッチにとっては、歌詞のシュチュエーションは妙に子供心にも身に染みた。

♪ 日暮れ悲しや 荒野ははるか 急げ幌馬車 鈴の音だより ♪
曲の一番、冒頭部だが、決して長閑(のどか)な状況ではない。

♪ 別れともなく 別れてきたが 心とぼしや 涙がにじむ ♪ 
曲の二番になるが、どうやら愛しい人と別れて来たらしい雰囲気だ。

♪ 黒馬(アオ)はいななく 吹雪は荒れる さぞや寒かろ 北山おろし ♪ 
吹雪は北山おろしと共に吹き荒れる。愛馬は困苦の中でいなないている。
おそらく自分自身の心境でもあったのであろうか

楽団と言っても僅か三人の構成で、楽団員はボーカルとアコーデオンとベースしかいない。そして、特異な事はこの三人は男兄弟なのである。
特異続きだが、ボーカルを担当するのは、この高島兄弟の長兄・孝太郎だが、歌謡曲フアンであれば、先刻ご承知の東海林太郎のいで立ちソックリなのである。
髪は固形ポマードで整髪し今どき感のないベッタリ感そのもの、そして古風な丸メガネを装着、所謂ドンちゃんメガネなのである。
そんなコメデイタッチのいで立ちだが、孝太郎は終始ニコリともせず、直立不動で一点を凝視しながら歌唱・テノールを続ける。さながら旧き昭和の雰囲気そのものであり、逆に何となく笑える。
敢えての事なのだろう、司会を兼ねる兄・孝太郎のリップサービスも一切ない。
テレビ放映の無かった、旧き昭和の雰囲気に拘泥した楽団の演出なのだろう。

イワン・アサノヴィッチは楽団のCDを購入し、スマホに録音して畑で幾度となく聴いているが、この「急げ幌馬車」は妙に心に響くのである。
上海から引き揚げて来た身の上に込められた、清冽な心境が重なるのであろう。
♪ なくな嘆くな いとしの駒よ なけば涙も なおいとし ♪