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「みちびき」旅立ち見送り紀行 ~H-IIAロケット18号機打ち上げ見学記~

2010-09-19 | 宇宙
準天頂衛星初号機「みちびき」 画像提供:JAXA

平成22年9月11日(土曜日) 20時17分00秒(日本標準時)
準天頂衛星初号機「みちびき」を載せたH-IIAロケット18号機が種子島宇宙センターから打ち上げられました。
「みちびき」は実は僕にとっては特別な衛星。
僕が初めて名前を付けた、言うなれば“我が子”(いや、「みちびき」の公式Twitterアカウントでは女性ということになっているので“我が娘”かな)なのです。

今回の打ち上げは週末土曜日の夜と、現地へ見に行くのには絶好の条件が揃っています。
そんな訳で、当然の如く種子島へと打ち上げを見に行きました。
可愛い我が娘を見送るために、夜の打ち上げとなる我が娘の、種子島の闇に輝くであろう晴れ姿を見届けるために!

打ち上げ当日、朝から熊本県八代の自宅を出て種子島へ渡るべく鹿児島市へ向かい出発します。
でも、打ち上げは今夜の20時過ぎだし、時間は充分ある。
それに何より僕は今回、鹿児島までのアクセスにJR九州の全線全列車が土日の2日間に渡って乗り放題になる
「ゲキ★ヤス土日乗り放題きっぷ」
を使うので、このまま種子島に直行するのは勿体無い(笑)
先ずはJR九州の新幹線「つばめ」の乗りつぶしです。

あっラッキー!ちょうど「新800系」つばめがやって来ました!
九州新幹線全区間開業に備えて増備された800系の最終製造バージョンで、車内インテリアデザインが過激なまでに素晴らしいのです!どのくらい素晴らしいかというと…
見よ!これが究極の新幹線「新800系」つばめの車内だ!

金箔壁に、金箔押の細工物。加賀の名工が手掛けた、本物の美術工芸品が車内を飾ります!
ここは名園の茶室ではありませんよ、新幹線の車内です!!


自由席でも座席は桜材に西陣織。
「ここまでやるか、JR九州デザイン顧問水戸岡鋭治氏…!」



つばめの車窓は、青空と時々碧い海。
天候は申し分なし、今夜の「みちびき」打ち上げにも期待が高まります。


気がつけば新八代―鹿児島中央間の九州新幹線を何度も行ったり来たりしてしまいました(笑)
つばめを堪能して、すっかり満足…って、今回の旅は乗り鉄が目的ではありませんよ!
鹿児島中央駅からバスに乗って(乗り場が解り難いのが難点ですが、駅前から150円で港地区まで行けるドルフィン150というバスが30分おきに出ています)、いよいよ本来の目的地である種子島へと渡るべく鹿児島港の高速船ターミナルへと向かいます。


種子島行き高速船に乗る前に眺める、錦江湾の向こうの桜島。
山頂に少し雲がかかっていますが、素晴らしい快晴です。種子島でもこのまま夜まで晴れていてくれることを願います。

高速船ターミナルで、種子島で同行させていただくあつ志さんと合流。午後一番の便で出航。
乗船後はぐっすり寝てしまい、気がつけばもう種子島の西之表港に接岸するところでした。

「約束通りまた来たぞ、種子島!
今回は、あかつき・イカロス打ち上げの仇を討たせてもらうからな!!」


そう、僕にとって今回の「みちびき」打ち上げ見学は、
リフトオフ6分前に打ち上げが中止・延期された前回のH-IIAロケット17号機のリベンジでもあるのです!

西之表港で、つうなさん達と合流。
あつ志さんの手配してくれていたレンタカーに同乗して一路、種子島宇宙センターのある南種子町を目指します!
…が、途中で補給のために立ち寄った中種子のスーパー「Aコープ」駐車場で、レンタカーのキーが回せなくなりエンジンがかけられなくなるトラブル発生。
結局、レンタカー業者に代車を用意してもらって、今回の打ち上げ見学場所に着いたのはもう夕方。
霧島さん、副部長(金木犀さん)、しないつぐみさん達、前回・前々回も御一緒した「いつもの種子島遠征メンバー」の皆さんと再会の挨拶を交わします。

見学場所から見た、種子島宇宙センター大型ロケット発射場。




夕陽に照らされ大型ロケット発射場第1射点に屹立する、「みちびき」を載せたH-IIAロケット18号機の雄姿。
既に打ち上げ準備は最終段階を迎えており、数時間後の打ち上げに向けてカウントダウンも進行中の筈。


それにしても、山の先の海の向こうにロケットが見える素晴らしい眺めです。
見学場所は林道沿いのちょっとしたスペースなので、道端に避けて立ちっ放しなのですが、
打ち上げを見に集まった人達と景色を眺めながら打ち上げのことをあれこれ話していると結構楽しくて、あっという間に時間が過ぎていくような感覚です。




だんだんと暮れていく、いまだ晩夏を想わせる夕陽。
次第次第に夕闇に包まれる種子島宇宙センター大型ロケット発射場。
その美しさに見惚れると同時に、刻一刻と近づく「我が娘の旅立ちの刻」に名付け親の緊張感も高まります。

気が付けば、空には満天の星座と天の河。遂に天候は快晴のままで夜を迎えることが出来ました!
打ち上げカウントダウンも問題なく進行中、あとは“そのとき”を待つばかり。
そして、
20時17分00秒!!




H-IIAロケット18号機、リフトオフ!!

その瞬間、夜の海の闇の向こうに輝くロケットの噴射炎が、
僕には確かに、我が娘「みちびき」が光を纏って嬉しげに夜空に舞い上がる姿に見えたのです。

「さあいよいよ宙(そら)へ行くんだ、我が娘よ!
一生懸命翔んで、皆んなの役に立つ愛される星になるんだぞ…!」



駆け上ったH-IIAロケット18号機は、いつまでもいつまでも消えること無くその姿を星空に留めています。
「あっ、いまSRB-A(固体ロケット・ブースタ)が切り離された!」
切り離されたSRB-Aが、恐らく燃え殻となって回転しながら落下しているのでしょう、火の粉のように瞬きながら堕ちていくのがはっきりと見えます。
「ロケットの光が消えたぞ!」
「第1段のLE-7Aエンジンが燃焼終了したんじゃないか?」

やがて「あっ、また光が見えた!」
「第1段を切り離して、第2段エンジンが点火したんだ!」
「そんなものまで見えるなんて…信じられない!」


結局、10分間程も見え続けていたでしょうか。
段々と光度を落として夜空の星と見分けが付かなくなったH-IIAロケット18号機は、山影に隠れようとする頃にふっ…と視界から消えました。
尤もその頃には、帰りの見学者のクルマのヘッドライトが眩しくてじっくり夜空を観測できる状況ではなくなっていたので、
もしクルマの明かりに邪魔されなければ地平線に沈むまでずっと見えていたかも知れません。
何れにせよ、素晴らしい打ち上げでした。
とても綺麗な、でも少しだけ寂しくて、そしてとても嬉しい打ち上げでした…!
「みちびき、誕生おめでとう。行ってらっしゃい!いい旅を…」

みちびき特設サイト 「みちびき」を載せたH-IIAロケット18号機はその後も順調に飛行し、
打上げ後約28分27秒に「みちびき」を分離。打ち上げは成功しました!



リフトオフの瞬間、眩い光に包まれた種子島宇宙センター大型ロケット発射場も、何事もなかったかのように暗闇に覆い隠されてしまいました。
でも、実際は今から打ち上げの後片付けやら撤収作業で「中の人たち」は大変なんですよね。本当にお疲れ様です。

さてと、僕たちも宿に引き揚げますか。

宿では心づくしの夕飯が待っていました。
今夜は祝杯だ!娘を嫁がせた父親の気持ち(笑)で、飲むぞー!
…といきたいところなのですが、そういう訳にもいきません。
実は僕は、明朝は4時半起きなんですよ~!
朝一番の高速船で種子島を離れて、そのまま佐賀県の武雄温泉にある佐賀県立宇宙科学館へ行かねばならないのです。
そう!打ち上げの翌日は小惑星探査機はやぶさのプロジェクトマネージャ川口淳一郎先生の講演会に参加するのです!!

という訳で、打ち上げの余韻に浸る間もなく慌しく食事を済ませ、さっさと床に就きます。
…と言いつつ、宿に集まった皆さんと何やかやと楽しく話し込んでしまい、就寝したのは確か午前2時近くだったような。
数時間の睡眠時間しかないけれど、果たしてちゃんと起きられるのか?
そして無事に海を渡って九州を縦断して武雄温泉に到達できるのか?
小惑星イトカワへの旅-小惑星探査機「はやぶさ」の挑戦と成果- 川口プロジェクトマネージャ講演会を聴くに続く


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