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2014初夏・スペイン鉄道音楽美術紀行 19:アルカサル-王城- 正面玄関、ドン・ペドロの碑文

2014-06-03 | 旅行記:2014初夏 スペイン
Portada del Palacio de Don Pedro I


18:セビリア街歩き2日目 トラムに乗って大聖堂へからの続き


トラムを降りたら、セビリア大聖堂の前へ…
でも、ここは素通りします。
今日は、何をさておいても見たい、行きたい場所があるのです。
今回のスペインの旅を思い立ったきっかけともなった、ある場所が…

セビリア大聖堂の正面入り口の脇を抜けて、インディアス古文書館の前を横切ると、その場所の入り口が見えてきます。
見学者が長い行列をなしている、その最後尾に並んで見上げる、獅子の紋章が掲げられた城門…




セビリアのアルカサル、王城です!



14世紀の中世ヨーロッパ、群雄割拠のイベリア半島で覇権を争ったカスティリア王国の若き国王ドン・ペドロ1世の命により建造された壮麗なる王城。
戦国乱世の世を戦い抜き、短くも波乱万丈の生涯を駆け抜けた“残酷王” ドン・ペドロの生き様と、それ以降数百年間に渡る歴史の流れをこの地で見守り続けてきたアルカサル。

ドン・ペドロの生涯を史実を元にドラマチックに描いた青池保子先生の歴史大作「アルカサル-王城-」 を読んで以来、憧れ続けたこの城を見る為に、僕はスペインへの旅に出たのです…

…おっと、この事は昨日、セビリア旧市街に「ドン・ペドロの首」を見に行った時にもう話しましたね(笑)

(→09:セビリア街歩き 旧市街の「ドン・ペドロの首」


青池先生の'90年春の取材旅行では「ミス・マッチな自動販売機が切符を売るようになり、入場料も値上がりした」 というアルカサルの入場券はなるほどトラムのチケットのような無粋なレシートでしたが、ちゃんと窓口で人が売っていました。
入場料は確かに観光ガイドブックに記載された金額より1ユーロ高くなっていましたが(何故だ!?)



城門をくぐると、中庭に出ます。





木立の作る日影が心地よい中庭を進んで行くと…





宮殿の正面玄関がそびえ立っています!ドン・ペドロの王宮です!!





この玄関は、「アルカサル-王城-」でも何度も描かれたお馴染みの場所。

…「アルカサル-王城-」を初めて読んだのは確か大学生の頃の夏休みの旅先、大阪から四国へと向かう夜行列車の中で寝る前に読もうと駅前の本屋で単行本を購入して、読み始めるとあまりの面白さに夢中になってしまい、結局徹夜で読み切ってしまったのを憶えています。
ドン・ペドロが人生の絶頂期に建造したアルカサルの登場する場面は確か、真夜中の瀬戸大橋を渡りながら読んだような…

闇夜の瀬戸内海を月が明るく照らす、幻想的な夜汽車の車窓を横目に見た物語の名場面が今、二十有余年の時を越えて、アンダルシアの陽光の下に目の前に広がっています。



…感慨無量です。

イスラム文化に心酔していたというドン・ペドロの趣向らしく、イスラム様式とキリスト教様式が入り混じったムデハル様式で建築されたアルカサル。
どこかしら宇宙を感じさせるイスラムの幾何学模様で彩られた玄関の碑文を見上げます。





碑文にはこう刻まれています。曰く
“最も高位の 最も高貴な 最も強力で 最大の征服者 
神の恩寵により カスティリアとレオンの王ドン・ペドロが 
セビリア暦1402(西暦1364)年 この王城と宮殿と玄関を建設させた”

(青池保子「アルカサル-王城-」13巻より引用)






群雄割拠のイベリア半島で他国を圧倒する戦果を上げ、西ヨーロッパの覇者としてその名を轟かせていた齢三十の若き王。
ドン・ペドロが生涯で最も自信と誇りに満ち、絶頂期にあった頃に完成したアルカサルの宮殿と玄関は、その栄光を象徴するかのような最光輝を放つ中天の太陽に照らされて600年前と変わらぬ姿でそこに在りました。
…ただし、中天に登り詰めた太陽は、後はもう沈んでいくことしかないのですが…



…暫し感慨に浸ってしまいましたが、ここはまだアルカサルの入り口です。さあ、玄関をくぐってドン・ペドロの宮殿に行きましょう。

20:アルカサル-王城- “残酷王”の宮殿に続く


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