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追憶の線路を求めて ~去り往くブルートレイン 寝台特急「はやぶさ」編、その2~

2008-05-17 | 鉄道
写真:九州内で寝台特急「はやぶさ」を牽引する機関車ED76、連結器とヘッドマーク

追憶の線路を求めて ~去り往くブルートレイン 寝台特急「はやぶさ」編、その1~ からの続き

平成20年4月27日

窓から差し込む淡い朝の光に目を覚まし、時計を見ると午前5時を回っていた。「名古屋辺りかな…」と車窓を見やると、何だか様子が違う…「あれ?今JR西日本の新快速電車がいたような。ここは…米原!?」
その後、午前6時過ぎの「おはよう車内放送」で、昨夜岡山県内を走行中に先行の貨物列車が鹿をはねて緊急停車、その影響で現在1時間以上遅れて運行している旨の説明があった。
「あらら。。。まあ遅れてもその分長く乗っていられるから全然問題ないけど(USACOには待ってて貰おう)。でも鹿が可哀想だね。」
岐阜を過ぎた辺りで、朝陽が昇ってきた。


朝焼けの浜名湖を渡る。


越すに越されぬ大井川を駆け抜ける。


由比の海岸線で太平洋を見る。
朝の風光明媚な東海道を、浴衣姿でベッドに寝転んだまま、或いは通路に立って背筋を伸ばしてのんびりと景色を眺めながら過ごすことが出来るのもブルートレインの醍醐味。それに今日は1時間遅れているから、尚更ゆっくり出来るね。
新幹線や飛行機じゃ絶対こうはいかない!
寝台車での朝寝坊がしたくて「はやぶさ」に乗っている御仁は、僕以外にも必ず居られる筈。
「これで空が春霞じゃなくて、富士山が見えたら最高だったんだけどね。」


顔を洗いに行ったついでに、浴衣にスリッパ姿のままで列車内を遠征して最後尾の「通路ドアの展望デッキ」へ行ってみる。
長旅の一夜が明けたB寝台車内は適度にだらけた雰囲気だが、大きな通路窓から燦燦と降り注ぐ午前の陽射しが実に気持ち良い。


昨夜の門司駅で「はやぶさ」編成の後部に「富士」編成6輌が増結されたので、列車の最後尾までの距離が120メートルも遠くなっていて、揺れて足元が覚束ないので難儀しながら最後尾1号車に辿り着いたのと同時に「はやぶさ・富士」号は熱海駅を発車した。ここからはもう東京直通の近郊列車が行き交う区間で、終着駅東京も間近くなってきた。
列車は白糸川の鉄橋を渡り「初日の出の見える駅」として名高い根府川駅を通過し、海岸線に沿ってカーブの続く東海道本線をラストスパートする。


伊豆急下田行きのリゾート特急「スーパービュー踊り子」と擦れ違う。
「はやぶさ・富士」は九州から東京まで千数百キロを走破する超長距離列車なので、道中出会う列車も多種多様となるが、一晩の旅で幾つの列車と擦れ違うのだろう?
昨日はスタイリッシュなJR九州の特急列車を車窓に見て、今朝は首都圏と伊豆のリゾート地を結ぶ列車と擦れ違う。「日本列島を駆け抜けている」ということを実感させてくれる旅が出来るのもブルートレインだけ。そして、そんな楽しい旅が出来るのも今だけ。

車窓に住宅が増えてきた。
通勤電車が頻繁に行き交うようになり、終着駅東京が近いことを実感させてくれる。
僕もそろそろ浴衣を着替えて、列車を降りる準備をしよう。
「ああ、もう到着か…19時間の旅も好き勝手に過ごしていたらあっという間だったな。…まだ降りたくないなぁ。寝台車の中の別世界に、もっと浸っていたいよ。下界にはまだ戻りたくないなぁ…」

しかし列車はそんな思いを余所に走り続け、定刻から1時間少々の遅れのまま午前11時過ぎに東京駅の10番のりばプラットホームに滑り込んだ。


熊本から東京まで、1315キロを駆け抜ける夢の一夜は終わった。
まさに夢から覚める気分で、東京駅のホームに降り立つ。
僕を乗せてここまで走ってきた寝台車にありがとう。夜を徹しての旅、ご苦労様。
また一緒に旅をしようね。


東京駅10番のりばに掲げられた行き先案内には、現在東京駅から発車する2つの寝台特急…「はやぶさ・富士」と「サンライズ出雲・瀬戸」の終着駅である熊本、大分、出雲市、高松に加えて、先月廃止された寝台急行「銀河」の終着駅大阪の表示がそのまま残されていた。
来年の今頃、この案内表示の駅名は出雲市と高松だけになっているのか…


「はやぶさ・富士」編成は、一旦神田秋葉原方面へと引き上げて機関車付け替え(機回し)を行い、東京駅に再入線してから7時間後の折り返し九州に向けての出発に備えて品川の基地へと戻る。
それを見届けて、さあ僕もUSACOのところへと向かおう。
「寝台列車で来たから一晩待たせたのにその上1時間も遅れたから、きっと待ちくたびれて怒ってるだろうな…途中エキナカでお菓子と花でも買っていくか」
乗り換えのプラットホームへと歩き始めた僕はその時、伊東線での踏み切り事故で東海道線の列車が運転を打ち切り、列車が足止めを食らってダイヤが混乱しているという案内放送に気が付いた。
「あらら~。
…さっき擦れ違ったスーパービュー踊り子号は今頃立ち往生してるんじゃないかな、お気の毒様。
っていうか、僕も東京駅から動けないじゃないか!」

ゴメンUSACO…もう暫く待ってて…

追憶の線路を求めて ~去り往くブルートレイン 寝台特急「はやぶさ」編、その2~ 終

追憶の線路を求めて ~再び走る日は来るか 小坂製錬小坂線編~ に続く


小惑星探査機「はやぶさ」情報:提供 JAXA宇宙科学研究本部
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はやぶさ2・はやぶさマーク2 ‐はやぶさまとめ‐
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2 コメント

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Unknown (MANTA)
2008-05-21 07:58:49
お久しぶりです。レポート拝見しました。一緒に列車に乗っているようで、懐かしさを感じました。
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風邪は治りましたか? (天燈茶房亭主mitsuto1976)
2008-05-21 23:28:21
MANTAさん、こんばんは。
お久し振りです。
週末には風邪で寝込んでおられたそうですが、どうぞお大事に…

>一緒に列車に乗っているようで、懐かしさを感じました
ありがとうございます!
ブルートレインの旅を実感して頂けるようにと思って書いてみました。

研究所の一般公開も大盛況だったようですね。
こちらも一度遊びに行ってみたいと思っています。
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