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Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 7:OPERA NIGHT ハンガリー国立歌劇場

2013-01-30 | 映画・演劇・コンサートを観る
Magyar Állami Operaház


6:Budapest ブダペスト、世界遺産散歩からの続き

英雄広場から世界遺産のブダペスト地下鉄M1号線に乗って、さあ国立歌劇場にオペラを観に行きましょう!


その名もOPERA駅で下車。
地下鉄M1号線の駅は優雅なタイル張りに重厚な格子のドア。まるで駅が既にオペラハウスの一部のようです。
これから始まる夢の様なひと時に思いを馳せ、胸を高鳴らせながら地上に上ると…

地下鉄OPERA駅のすぐ上がオペラハウスでした!
ハンガリー国立歌劇場です!!


宮殿のような建物がライトアップされ、本当に夢の国への入り口のようです。
正面玄関前には大きなクリスマスツリーもまだ飾られていますね。


早速、夢の国の入り口のドアを開けてオペラハウスの中に入ります。
エントランスホールの天井の豪華な装飾がシャンデリアに照らされ、煌めいています。


エントランスホールから続く、天井に届くような大階段の前にもクリスマスツリーが。

…ところで、実は僕はオペラハウスでオペラを観るのはこれが生まれて初めて。
もちろん、事前に最低限の鑑賞マナーを調べて準備してきましたが、それでもやっぱり緊張しますね。
新鮮な楽しさと緊張感が入り混じった、こんな気分になるのは何年ぶり、いや何十年ぶりでしょうか!


今夜の演目は、オペレッタの定番中の定番、
ヨハン・シュトラウス2世の「こうもり」です。
ハンガリー語で書かれた、今夜のキャスト表が張り出されていました。
「こうもり」は、有名な序曲しか知らなかったのですが、
今夜のために事前にDVDを購入してしっかり内容を「予習」してあります(笑)。
とても軽快で愉快な、楽しい喜劇作品なので、初心者のオペラハウスデビューにはもってこいの作品かも知れません。

さあ開演時間が近づきました。
大階段が開放され、観客が次々に客席へと向かい始めます。
僕も、居並ぶ紳士淑女たちの後ろに続いて階段を登り、モギリのスタッフにEチケットを確認してもらいます。
(今回はハンガリー国立歌劇場の公式Webサイト経由でチケットを予約したのですが、
クレジットカード決済で予約完了するとEチケットをダウンロード出来るようになり、それをプリントアウトして持参すればそのまま入場できるのです。これは便利!)


ところが、僕のEチケットを一瞥したスタッフは
「あなたの席は、この階段からは行けません。一度建物の外に出て、脇にあるバルコニー階専用の入口から入って下さい」
というようなことを言います。
僕が購入したのはチケット代が高価な平土間席や低層階のボックス席ではなく、お手頃価格の高層階バルコニー席
(ちなみにお値段は5800ハンガリーフォリント。購入時のレートで2千円ちょっと)
どうやら、お安い席のお客は、華やかな大階段を登ることは許されないようです。
いきなり出鼻をくじかれて、ちょっと憤慨しながらもバルコニー席用の“裏口”に回ります。やれやれ…


4階のバルコニー席まで、延々と通用口の階段を登り、いい加減息も切れかけたところにクロークを発見。
外套や大きな荷物を持ったままの野暮な姿でバルコニー席に座ることは許されません。
煩わしい物はすべてここに預けてから客室ホールに繰り出すのがオペラハウスのマナーです。
ここのクロークはちゃんと預かり賃の金額が明示されているので助かります。
任意のチップだと僕の場合、色々と気を遣って疲れますからね(笑)

身軽な姿になったところで、壁の姿見でネクタイを直し(今夜は僕も背広にネクタイを締めて“正装”しているのです!)、
さあオペラハウスの社交場、バルコニー席へ…!





「うわぁ…!!」


「これが…これがオペラハウスか!!」
何という華やかさ。何という優雅さ。
まだ上演は始まっていないのに、そこはまさしくオペラの夢の国。
客席とシャンデリアとオーケストラ・ピットから響く調律の音、そして着飾った観客たちが渾然一体となり、
オペラの世界はもう始まっていたのです。



僕の席は、4階バルコニー席の最前列、しかも舞台の真正面でした。
高い場所にいるので、すぐそばにシャンデリアが輝いているし天井画も間近に見えます。
何より舞台がとても見やすいし、歌声も音楽も素晴らしく響き渡ります。
ひょっとして、この劇場で一番いい席だったのではないでしょうか?何という幸運!

やがて指揮者を迎えたオーケストラが聴き慣れた軽快な序曲を演奏し始め、舞台が幕を開けます。
ハンガリー国立歌劇場が、
大晦日の夜のウィーンの邸宅に、
ロシア人貴公子の主催する舞踏会会場に、
そして12月32日!?の朝を迎えた刑務所に、
「こうもり」の作品世界へと変貌していきます…

「なんて楽しいんだろう!こんな素敵な世界を、今まで知らずにいたなんて…!」

…かくして、どうやら僕は、あっという間にオペラハウスに潜む魔物に取り憑かれてしまったようなのです。



「こうもり」は全三幕の構成で、途中で2回、幕間の休憩を挟みます。
この幕間も、オペラの楽しみの一つ。
客席を抜け出して、オペラハウスの中を歩き回ってみるのもまた一興なのです。


ホワイエに店を出したビュッフェで軽く一杯…というのが幕間のポピュラーな楽しみ方。
でも、カウンターは混んでいて飲み物を受け取るのも長時間並んで一苦労。
実際、幕間に飲む時間が足りなくなってしまったらしく、
幕が開いてから急いでホワイエから客席に戻ってくるお客さんがたくさん居られましたよ。
僕は断酒中なのでもとより飲めないので、楽しそうに乾杯している皆さんを眺めて満足することにしましょう。

ハンガリー国立歌劇場は、客席にも見所があります。



舞台の袖にある、一際豪華な装飾が施された貴賓席は、
元々はオーストリア=ハンガリー二重帝国の皇后エリザベートの専用室だったそうです。
ハンガリーびいきだったエリザベートがお忍びで、いつでもブダペストにオペラを観に来られるように、
この部屋は客を入れず常に空室にしてあったとか。
今では誰でも予約することが出来るそうです。


休憩中の空っぽのオーケストラ・ピットと、そこを覗きこむ人々(笑)
案外狭い空間です。
また、舞台とオーケストラ・ピットとの間には仕切りも何もないので、
舞台上の人が熱演熱唱の余り落ちてしまわないか心配になります。



…オペラハウスの夢の国に思う存分遊んで、笑って、時間は瞬く間に過ぎ去りました。
舞台の「こうもり」は目出度く大団円を迎え、余韻のカーテンコールの後には心地よい充足感と共に、
寂寥感を伴って現実が戻ってきます。


去り際、誰も居なくなった天井桟敷から舞台を振り返って、オペラハウスに別れの挨拶。

「今夜は、最高のオペラ鑑賞デビューだったよ。ありがとうございます。
そして、これからも末永くよろしく!…多分、一生涯続く付き合いになるね。」



いつまでも去り難い、後ろ髪ひかれるような思いでハンガリー国立歌劇場を後にしました。

ブダペストには今夜一晩宿泊して、明日にはまた列車に乗って次の街へと向かいます。

8:Hungária Express 国際列車ハンガリア号の旅に続く


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