ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

9月例会のレポートが届きました!

2016-09-18 21:11:12 | 対話型鑑賞
 9月17日(土)に、浜田市世界こども美術館で、対話型鑑賞の例会を行いました。
ナビをした松田さんのレポートを、お届けします!



 みるみるでは、久しぶりのナビでした。前回ナビをした時に、ギリギリに会場に着いてしまい余裕なく作品を選んでしまったため、少し早めに会場入りしました。

 「浜田市世界こども美術館コレクション展」の会場には、郷土作家をはじめとする5名の作家の作品12点が並んでいました。表現方法はもちろん作家によって様々ではありましたが、どの作品もオーソドックスな風景画と人物画でした。鑑賞者が自由な発想で「物語」を作っていくような流れにはならないと予想し、少し不安になりました。

 最終的には、郷土作家の山﨑修二の「川沿の田舎町」と「浜田河畔」の2点を選びました。鮮やかな色使いと大きい画面であったため会場に入った時に最初に目に入った「川沿の田舎町」をまず選び、共通点と相違点がいくつか見つかりそうな直感があったため「浜田河畔」をセットでみることにしました。同一作家によって描かれたフランスの風景と浜田の風景ということで、キャプションからの情報が全くない状態で比べて楽しみたいと思い、キャプションを隠すことにしました。

 30分の時間で2点をみるため、最初から2点を比較してみることも考えましたが、やはり丁寧にひとつずつみるべきだと思い、まずは「川沿の田舎町」をみました。

 まずは描かれている建物がカラフルであること、煙突があること、窓が縦長であることから外国(おそらくヨーロッパ)だろう、という場所がどこかという発言が続きました。

 ここで少しの沈黙があり、時間的な焦りと話題を膨らませたいという焦りから、「季節や時間はどうですか?」「人はいますか?」と、誘導するような問いかけを続けてしまいました。振り返りでも反省点としてあげられたのですが、経験のある鑑賞者ばかりでしたのでその辺りは言われなくても想像していたところで、鑑賞者から出てくるのを待つべきでした。「光や色から、初秋の夕方より少し前の時間だろう」「人は描かれていないが生活感を感じる」「水の流れ、人気のない静かな建物などから、ゆったりしたこの場所の良さが表れている」などと、次々と豊かに想像した発言が続いたため、やはりナビから誘導した形になってしまったことが悔やまれました。

 振り返りで、みるみるのメンバーからよかったと言われたことに、“きりかえし”がありました。例えば、
鑑賞者「建物が木材で作られていない感じがするから外国の絵」
ナビ「では何で作られている?」
鑑賞者「・・・コンクリートか何か」

あるいは、
鑑賞者「煙突から煙が出てなかったり、人が描かれていないかったりする。でも生活感がある」
ナビ「どういうこと?」
鑑賞者「昼さがりで横になったりして休んでいる時間なのかも。見えないけど人はいるように感じる」

 自分が「おもしろいな」「もっと詳しく聞いてみたいな」と思った発言はつっこんで聞いてみました。それが、鑑賞者としてはなんとなく発した言葉を取り上げられることで、さらに深く見て考えるきっかけになってよかった、と振り返ってもらいました。

 続けて「浜田河畔」をみました。場所、時間、人の生活感など、「川沿の田舎町」と同じような視点からの気づきが鑑賞者側から次々に出てきました。

 その後自然と、「手前に水面、中心に建物、奥に山があり、画面の構成に共通点がある」、「色使いはどちらも鮮やかな色が多いが、こちらは屋根にスレート風の線があり、明らかに日本の風景」などと、ひとつめにみた作品と比較しての共通点や相違点が鑑賞者からどんどん出ました。2点を続けてみることにしたことがうまくいったと自分で感じることができ、楽しい時間でした。

 家が密集して寄り添って生活していること、ところどころに外国の建物の要素が入っていることなどこの時代の日本の良さやおもしろさが凝縮されている絵だということが鑑賞者のみなさんの発言からわかり、自分自身も「日本らしさ」について考えられ、この作品の鑑賞を楽しめました。

 鑑賞の経験が豊富な参加者ばかりだったこともあり、物語を組み立てられない風景画でも対話を楽しみ、作品を深く味わうことができたように感じました。

 作品選びのおもしろさ、鑑賞者の側からの発言を中心に進めていくことの大切さ、自分がもっと聞きたいと思ったことは聞いてみることの意味など、たくさんの学びがあった今回のナビでした。

 自分ではなんとなく選んだつもりの2点の組み合わせだと思っていて、振り返りでメンバーと話すまではなんとなくうまくいったと思っていました。振り返りで、なんとなくでもたまたまでもなく、これまでのナビや鑑賞者としての参加の経験に基づいた選択だよと言ってもらえたのがうれしかったです。
参加されたみなさま、ありがとうございました。



 浜田市世界こども美術館のコレクション室では9月25日まで、今回鑑賞した郷土作家の山﨑修二さんの「川沿の田舎町」と「浜田河畔」を見比べながら鑑賞することができます。はまびのコレクション室で、ゆったりと作品を味わってみませんか?

 次回のみるみるの会は、10月15日(土)14:00~ 浜田市世界こども美術館にて。ご参加、おまちしています。
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