みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0039「犯罪者撲滅キャンペーン」

2017-06-05 19:27:37 | ブログ短編

 ベッドに寝(ね)かされている男が目を覚(さ)ました。男のそばには白衣(はくい)の女医(じょい)が立っている。
「ここは…」男は辺りを見回して、「どうして、ここに…」
「ここは、総合病院(そうごうびょういん)です。山崎(やまざき)さんは、仕事先で倒(たお)れて、ここに運ばれたんですよ」
「えっ、何をしてたんだ。私は…。ああっ、思い出せない。私は、山崎なんですか?」
「山崎さんは、倒れたときに頭を強く打ったので、記憶(きおく)に障害(しょうがい)が起(お)きたんだと思います」
「記憶に障害が…」男は包帯(ほうたい)の巻(ま)かれた頭に手をやった。
「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。記憶はちゃんと戻(もど)りますから。それより、奥さんがみえてますよ」
 女医は病室の扉(とびら)を開けて、外で待っていた妻(つま)を招(まね)き入れた。
「あなた」妻は男のそばに駆(か)け寄って、「よかった…。もう、心配(しんぱい)したんだから」
 女医は病室を出て隣(となり)の部屋に入った。そこで病室の様子(ようす)を見ていた男がつぶやいた。
「迫真(はくしん)の演技(えんぎ)だな。いったい何処(どこ)から連れてきたのかね?」
「あれは人間ではありません。プログラム通りに反応(はんのう)しているだけです」
「そうなのか。でも、受刑者(じゅけいしゃ)の記憶を消して更生(こうせい)させるとは、驚(おどろ)いたよ。この計画(けいかく)がうまく行けば、刑務所(けいむしょ)の経費(けいひ)を減(へ)らすことができるな。だが、記憶が戻ることは無いのかね」
「脳(のう)に埋(う)め込んだ装置(そうち)の保障期間(ほしょうきかん)は五十年です。彼が生きている間は問題(もんだい)ないでしょう」
<つぶやき>未来の世界では、こんなことになってるかもしれませんよ。怖(こわ)いですね…。
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コメント
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