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熊谷達也「ウエンカムイの爪」

2010年09月29日 | か行の作家


集英社文庫
2000年8月 第1刷
2004年7月 第3刷
解説・阿刀田高
200頁


1997年
小説すばる新人賞受賞作品

2004年山本周五郎賞、直木賞受賞の「邂逅の森」以降の作品を先に読んでいるので本作も安心して読めました
しかし、最初に本作を読んでいれば、その後の熊谷さんの発表作がどんなに待ち遠しく楽しめたか、と残念でもあります

解説の阿刀田さんも書かれていますが書き出しが素晴らしく、ハートを鷲掴み、です

動物写真家である主人公が山中で熊と遭遇します
主人公は熊にやられるのか、怪我で済むのか、逃げることが出来るのか

熊を操る謎の女性が登場して主人公は救われます
ここで、あらら?でしたが
読み進めば、そういうことだったのか
納得出来ます

登場人物の中に、あまりにも「馬鹿」な若者やテレビクルーや鉄砲撃ちが登場するので、腹立たしく思ったのですが、きちんと野生の熊に向き合っている研究者や猟師との対比、という点では重要な登場人物だったのでしょうね

野生の熊と人間の間に起こる問題について、アイヌ民族の暮らしや言い伝えを上手く織り込みながら力強い筆致でグイグイ読ませます

この主人公は「相剋の森」にも登場しますが、動物写真家として様々な経験の結果、本作では「聞く側」の立場だったのが「語る側」に成長しています
「相剋の森」再読したくなりました

 


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