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野口卓「猫の椀」

2012年07月13日 | な行の作家

 

祥伝社文庫

2012年3月 初版第1刷

解説・縄田一男

298頁

 

 

時代小説、短編集です

 

「猫の椀」

漆職人の技を認めてもらった大店の主人のもとへ年月をかけてやっと出来上がった自慢の品を納めに行ったところ、当の相手は急死していた

気分を切り替えようと立ち寄った店で、そこの女将と姪のお玉に今の心情をすべて話す

数日後、再び店に顔を出すのだが、女将は「自分にはお玉などという姪はいない」と言うのだった

男は、女将が面倒を見ている猫の餌椀に使ってくれ、と自慢の品を渡します

これは俺が作った誰にも自慢できる素晴らしい物だ、そんな思いしかなかった男が、女将やお玉との会話を通して(お玉とは肉体関係まで持ってしまうのですが)職人として真に志すべきものは何か、に気づく

奇譚ものですが、清々しい風が吹きわたるようなラストです

 

 

「糸遊(かげろう)」

組紐職人の女房が家計を助けるため働き始めた料理屋で知り合った女から持ちかけられた『儲け話』

詐欺ということは読者にはすぐわかりますが、さて物語はどんな展開を見せるのでしょう

 

 

「閻魔堂の見える所で」

これが一番良かったです

創作落語を小説に書き換えたような面白さ

前歴が噺家、武家、僧侶、誰よりも世間の暗部を見てきた若者

この4人の追剥集団結成(?)までの成り行きは笑いあり、涙あり

被害者の命は取らない、金は盗るが次の宿に泊まる分くらいは残す、身の上相談に乗ってくれたり、体験談を話してくれたりする

昔々、人情追剥と呼ばれた男たちが跋扈していたそうな…

 

 

「えくぼ」

得意先を荒らされ気づけば窮地に立たされていた紙問屋

ある日、資金援助をしたい、恩返しをしたいのだ、という材木商が現れる

恩返しをされる理由に思い当たるところのない紙問屋の主人だったが、ひょんなことで記憶が蘇る

自分のことを恩人と思っていた相手は立派な大店の主人となっている

振り返って、相手を貧乏神と思っていた自分はどうなのか?

 

 

「幻祭夢譚(まぼろしのまつりゆめものがたり)」

死者の祟りにより子供が育たない村

祟りをとく者として選ばれた若い僧侶に次々襲いかかる試練

昔話にありそうなお話です

 

 

野口さんは「人間って、案外捨てたものではないかもしれないな」と感じてもらえる作品を目指したいのだそうです

読後ほっと出来るような作品を今後も発表していって欲しいと思います

 

 

 


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