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長嶋有「問いのない答え」

2015年03月28日 | な行の作家

 

文藝春秋
2013年12月 第1刷発行
262頁

 

 

なにをしていましたか?
先週の日曜日に、学生時代に、震災の日に―――

 

様々な問いと答えを「言葉遊び」にして、緩やかに交流する人々
それぞれの場所で同じ時間を過ごす彼らの生を描いた長編群像劇

 

緩い群像劇です
震災発生の三日後、小説家のネムオはネット上で「それはなんでしょう」という言葉遊びを始めます
一部だけ明らかにされた質問文に、出題の全容がわからぬまま無理やり回答する遊び
設定した時刻になりネムオが問題の全文を明らかにしたとき、参加者は寄せられた「問いのない答え」をさかのぼり、解釈や観賞を書き込み、画面上はひとしきり賑わいます
参加するのは、庭師(女性です!)、カルチャースクールの講師、高校生、派遣社員などなど、日本各地で暮らす老若男女
ハッピーど真ん中にいる人は1人もいないというのがいいです
傍から見たらハッピーのそのもののような人も心の奥では違和感を持っていたりするのです
互いのリアル状態は脇に置いておいて、同じ感想に嬉しがったり、全く違ってがっかりしたり、噛み合わなかったり、何故だか励まされたり
言葉遊びがガス抜きになることもあるのでしょう

 

「それはなんでしょう」は『ねたあとに』にも出てくるゲームです
ネムオというのは勿論長嶋有さんご本人でネムオの母親も登場します
例によってあの別荘も舞台になります
そういうわけで本書は長嶋有をよく知る読者ほど楽しめる内容になっているかと思います

 

 

緩く進む話の中、何度も取り上げられるのが「秋葉原通り魔事件」です
犯人がネットに求めたものは何だったのだろう、とネットを使って検索を繰り返すカルチャースクールの講師
彼が求めていたものは何だったのか
いくら検索しても回答は出てきません
長嶋さんは本書でこの事件について触れずにはいられなかったのでしょうか
これまで、何でもない日常を淡々を描いた作品を発表してきた長嶋さんにしては『異色』です

 

ラストの母親のつぶやき
日常に溢れるとりとめの無い言葉の中にかすかな希望が見えるのが救いです

 


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