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アンソニー・ドーア「シェル・コレクター」

2010年06月22日 | 海外の作家

1972年オハイオ生まれ
本書がアメリカで出版されたのは2002年で執筆されたのは著者がまだ20代の頃

信じられない!
充分に人生経験を積んだ人間にしか書けないのではないかと思われる美しい文章、心理描写、自然描写

「貝を集める人」
ケニア沖の小さな島に住む盲目の貝類学者
大学教授の仕事を早めに引退しシェパード犬と貝を蒐集しながら静かに暮らしていたのだが、マラリアに罹ったアメリカ人女性が偶然にもイモガイの毒で治癒してしまったことから、彼の静かな生活は掻き乱されることとなる
美しい海、島の風景が盲目の学者の目を通して見えるような、不思議な感覚に囚われます


「ハンターの妻」
狩猟のガイドを生業とする男ハンターは、20年ぶりに妻に会いに行った
妻は死によって愛する者を失う人々の心を癒す魔術を使い、世界中を飛び回っていた
死んだ動物と心を通わせる妻と動物に心があるとは想像もしない夫
惹かれ合いながらもとうてい理解しあえない二人なのですがラストは「静謐」という言葉がぴったりでした


「たくさんのチャンス」
父親の転職に伴い海辺の町に越して来たドロテア
海辺で出会った釣りをする少年に恋をした彼女は自分も釣りを覚えようとする
ラテン系移民の両親、固定観念から逃れられない両親と海辺の町で新しいチャンスを捕まえようとするドロテア
ドロテアの感受性の瑞々しさに未来が見えてきます


「長いあいだ、これはグリセルダの物語だった」
背が高く華やかな姉・グリセルダと背が低く地味で生まれた町で地道に働く妹・ローズマリー
10代後半の頃、町にやって来た金物喰いの芸人と出奔した姉
20年が過ぎ故郷での凱旋公演を終え、実家に顔を出した姉に長年溜め込んだ思いをぶつけた妹
この姉妹はこうなる他はないのだろうけれど、少々気持ちが暗くなりました


「七月四日」
お酒の場で言い争いになり釣果を競うことになったイギリス人とアメリカ人
ヨーロッパ各国での釣り競争の結果は?
アメリカ人をコミカルに笑い飛ばしています


「世話係」
リベリアで真面目に働いているように見せつつ悪さをしながら要領よく暮らしていたジョセフ
内戦で母を失い、難民としてアメリカにやってきた彼が求める新しい生活
ジョゼフの、まるで昇華していくような精神面の変化に、感動しつつも、少々胡散臭くも思いました


「もつれた糸」
朝も空けきらぬうちから釣りに出かけるマリガン
実は、釣りを口実に浮気をしていたのだった
もしかしたら浮気が妻にバレてしまうかもしれない…
ミステリーっぽい部分もあってなかなか楽しめました


「ムコンド」
考古学者のワード
化石発掘の目的で訪問したタンザニアで出会ったナイーマと恋に落ち二人はワードの勤める博物館のあるアメリカ・オハイオ州で暮らし始めるのだが、タンザニアの自然が忘れられないナイーマとの間に徐々に隙間風が吹き始める

 

主人公の年齢、性別、職業、生活環境は様々で、どの話にもそれほど変わったところは無いのだけれど心にズシンと残る短編集でした

 


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