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橋本紡「猫泥棒と木曜日のキッチン」

2010年08月10日 | は行の作家
タイトルから想像した内容は
お洒落で垢抜けた可愛らしい女性が主人公の小説


まず、書き出しで裏切られました

お母さんが家出した
書置きはなし
それっぽいことを言ったりとかもなし


家に残されたのは
17歳の高校生・のぞみ
異父弟、5歳のコウちゃん

「誰も知らない」って映画があったけどあんな雰囲気?

橋本さんは、そういう小説を書く人ではないはずなんだけど…



みずきが高校を出るまでの生活費はある
元々家事が苦手な母親の代わりに主婦業全般何でも出来たみずき
母親が突然消えても特に困ることも無く
コウちゃんと毎日を過ごしている

通学路の交差点でよく見かける猫の轢死体を自分ちの庭に埋めてやろうと思ったみずき
猫の遺骸を足でダンボール箱に入れていたとき偶然通りかかった別の学校に通う同い年の健一
みずきが足でしか触れなかった遺骸を健一は両手で抱き上げて箱に入れてくれた

どうしてこの交差点で猫の轢死体が多いのだろう?
微かに聞こえる子猫の鳴き声
草むらに置かれたダンボール箱の中には腐乱し始めた5体と微かに息をしているだけの1匹
この辺りに子猫を捨てる人がいるに違いない、と推理したみずきと健一は行動を起こす



実父の死
二度目の父親の母親への暴力
母親の家出

みずきはいつも「人生はそんなものだ」と冷静に受け止めてきた

しかし生き残った1匹の子猫を家に連れ帰った夜
健一に見守られながら
涙が止まるまで、気が済むまで泣き続ける

2ヵ月後
母親が突然帰ってくる
それも自然体で受け止めたみずき
しかし母親が出ていった時とは、みずきの中の逞しさが全く違っています
自分も挫折経験があり未だリハビリ途中の健一が優しくみずきを支えてくれます

結構重い話なのですが読後は爽やか
橋本さんらしい1編です



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