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ジュンパ・ラヒリ「低地」

2015年04月26日 | 海外の作家

 

原題 The Lowland

訳・小川高義
新潮クレストブックス
2014年8月 発行
471頁

 

 

両親の故郷・カルカッタと作家自身が育ったアメリカ・ロードアイランドを舞台に繰り広げられる波乱の家族史

 

物語の始まりは
東部インドの大都市コルカタがまだカルカッタと呼ばれていた頃
カルカッタ郊外に育った仲の良い年子の兄弟、スパシュとウダヤン
兄のスパシュは学究肌でアメリカの大学院に進学
弟のウダヤンは高校の教師をしながら極左組織『ナクサライト』に関わりをもち実家近くの両親と身重の妻・ガウリから見える低地の水際で射殺されてしまいます
ウダヤン亡き後、居場所の無くなったガウリを自分の妻としてアメリカへ連れ出すスパシュ
とりあえずは救われるガウリでしたが、この疑似家族はやがて崩壊
ガウリは無理な再婚から逃げ出し西海岸へ向かいます
残されたスパシュは娘・ベラ(実はウダヤンの子)を男手ひとつで育て上げます
成長したベラは、父と思っていた人が伯父であったこと、母が自分たちを捨てて出て行ったことなど、自分が育った家庭環境のせいか通常の結婚には踏み切れないまま父のいない子を出産します

 

スパシュから逃げ出したガウリのその後
老年に達してからスパシュが選んだ新しい恋人との暮らし
ベラとベラの娘の成長

 

 

ウダヤンの死によって人生を変えられた三人は
それぞれ現在の生活にどれだけ馴染めるのか、その場所に帰属する意識を持てるのかという問題に向き合うことになります
人が生きるとは、どういうことか?
物語の終りに結論はありません
ただ、懐かしいウダヤンの優しげな仕草が描かれているだけです
人によって好みは別れるでしょうが、インド絡みでいえば映画「めぐり逢わせのお弁当」のような、このような余韻を残した終わり方が好きです

 

 

カルカッタの町の風景と共に描かれるのが「ドゥルガー女神祭祀」
訪れたことのない国を舞台にした物語は想像力が必要ですが、映画「女神は二度微笑む」でも描かれていたので、思い出しながら読むことができたのは楽でした
それと、カルカッタとアメリカ・ロードアイランドとの町そのものの違い、風の違い、湿度の違い、太陽の違いが見事に表現されているのもストーリーにすんなり入っていけた要素だったかと思いました

 

 

 


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