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ルル・ワン「睡蓮の教室」

2010年09月10日 | 海外の作家
1972年、文化大革命下の中国
12歳の水蓮は、大学教授である母と暮らす地方の「再教育施設」で、ともに収容された知識人たちから学校では決して教えてくれない様々なことを学ぶ
友だちのいない日々の慰めは、睡蓮の浮かぶ池のほとりで、カエルやコオロギに講義をすることだった
やがて北京の学校に戻った彼女は、貧しさと階級ゆえに苛め蔑まれる親友・張金を助けようと勉強を教えたり、ランニングのトレーニングに付き合ったりして、彼女を最優等の地位に押し上げようとする
しかし、金が、勉学でもスポーツでも、どんなに良い成績を修めたところで最下層の地位から這い上がることは出来なかった

エリート階級に属する蓮と農民階級の金、身分の違う二人が絆を深め、別れることになった3年間の経緯を蓮の視点で描いた自伝的長篇


文学や芸術、学問が否定され、親子であろうが隣人であろうが密告の恐怖に怯える日々
毛沢東主席のプロパガンダと目前の事実の矛盾に気づきながらも国の方針の大きな流れの中ではどうしようもなく従わざるをえない人々
しかし、そんな時代の中でも多様な考え方、世界があったのです
蓮と金が望んだことは分不相応であったのか
二人は不幸だったのか
何も考えず毛沢東の言葉にしたがっていれば、余計な苦しみもなく暮らせたのかもしれない
それがまともな人間の生き方ではない、ということを知った二人
あの時代、二人の生き様はこのうえなく輝いていたのです

長い年月が過ぎ、大人になった蓮は当時の思い出を大切に家族と共に生きています


作者は本作で文革時代を断罪するつもりではなく、ただ自分が子供の頃に受けた恐ろしい体験についてきちんと理解したかっただけ、なのだそうです



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