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パスカル・メルシェ「リスボンへの夜行列車」

2013年05月25日 | 海外の作家

 

訳・浅井晶子

早川書房

2012年3月 初版発行

2段組 481頁

 

スイス

57歳になる古典文献学の教師ライムント・グレゴリウス

ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語に精通し、10人以上の生徒と同時にチェスを指せる男

ほんものの学者と言われ、同僚や生徒から畏敬される存在

バツイチではあるが人生に不満はない

 

雨の朝、ギムナジウムへ向かういつもの道すがら、橋から飛び降りようとする女性を救ったグレゴリウス

「あなたの母国語はなんですか?」

「ポルトゥゲーシュ(ポルトガル語)」

意外にも「プ」に近い発音の「ポ」、徐々に高まり、奇妙に押し殺したような明るさを持つ「ゲー」、そして語尾の「シュ」が、グレゴリウスにはひとつの旋律となって聞こえた。実際よりもずっと長く響いたように思われる、できれば一日じゅう聞いていたい旋律だった。

 

謎の女性の残した「ポルトゥゲーシュ」という言葉がグレゴリウスを『冒険』の旅へと導くことになります

 

ポルトガルに惹かれ、古書店で手に入れたポルトガル人作家、故アマデウ・デ・プラドの著書を読み始めたグレゴリウスはプラドの人生を辿りたいという衝動にかられ、ベルンでの日常を放棄しリスボンへの夜行列車に飛び乗る

ポルトガル語は全く話すことも読むこともできない、カタブツの真面目男・グレゴリウスをそこまで駆り立てるものは何なのか

列車の中で辞書を片手に少しずつプラドの著書を読み進めるグレゴリウス

まだ、ベルンに戻ることは出来る、朝の講義に間に合う、という思いが頭を掠めますがプラドへの思いが彼を西へ西へと導きます

 

 

プラドの人生を辿る旅は同時にグレゴリウス自身の人生を見つめ直す旅にもなります

グレゴリウスとプラドは世代も生まれも育ちも母国語も違いますが、グレゴリウスは徐々に共感を深めていき

妹、反体制運動の同士、親友などプラドとの思い出を抱えながら生きる人々と出会うことで、不器用ながら世界との関わり方を変えていくのでした

 

彼はリスボンで出会った人々との関わりを通じて「自分にはなぜ今まで、このような友人がいなかったのだろう」と思います

しかし、それは単に彼自身がその環境に自分を置いてきただけのことだったのですね

 

 

物語の冒頭、橋で出会った謎の女性はその後登場しません

その代わりといえるのか、プラドが最後に心の底から愛した女性が前面に出てきます

もしかしたら、彼女の存在はグレゴリウスにも大きな影響を与えるのではないかと思わせて物語は終わります

 

哲学小説とのこと

難しくてついていけない部分も多々ありましたがグレゴリウスの内省を何度も読み返すことによってボンヤリですが理解できたような、そうでもないような?

 

 

本屋さんの棚で迷って迷って購入したのですが読み切れるか心配でした

でもミステリー小説の部分もあり気づけば夢中になって読んでいた、といったところ

迷った末に選んだ一冊がニジュウマルだと本当に嬉しいです

 

本書はドイツでは200万部のベストセラーになり、世界31か国で刊行され、累計販売部数は400万部を超えているそうです

 

 

訳者あとがきに、映画化されるとあります

日本でも公開されたら嬉しいのですけどね

 


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