2010年 イタリア
原題 Mine Vaganti(歩く地雷)
やはり邦題はいただけません
イタリアン人情喜劇という話だったのですが
映画冒頭
ウェディングドレスを着た美しい女性が後ろを気にしながら足早に歩く姿
廃墟のような教会の中に入った彼女は、若者の前でピストル自殺をしようとする
画面変わって老女のアップ
ウエディングドレスの女性と老女はよく似ており冒頭のシーンが老女の回想だということがわかります
あれれ?
ミステリーっぽい?
映画の中で重要な位置を占める老女=カントーネ家のおばあちゃん=歩く地雷
保守的な南イタリアでパスタ会社を営むヴィンチェンツォ・カントーネは頭の固い古いタイプの人間
自分がゲイだと告白するつもりでローマから帰省した末息子・トンマーゾが食事の席で兄に「実は僕はゲイなんだ」と先を越されてしまう
跡継ぎにゲイなど許せない父に家を追い出された兄に代わり父の望む自分を演じざるを得なくなったトンマーゾ
親を愛すればこその苦しみと葛藤
「他人の望む人生なんてつまらないわ」というおばあちゃんの言葉が胸に刺さる
やはり自分のアイデンティティに嘘はつけないと決心するトンマーゾ
息子夫婦に『爆弾』などと呼ばれ少し煙たがられているおばあちゃんも最期には爆弾らしく自分の望んだ形で人生を締めくくります
家を背負う宿命にあった長男の苦しみ
ゲイであることがわかっていてもトンマーゾを愛してしまう女性
おばあちゃんが胸にしまってきた若かりし日の秘密の恋
そしてゲイというマイノリティに対する偏見
奥深く複雑な問題をコミカルな味わいで描いていました
長男のカミングアウトを認めたくないけれど証拠を見つけてうろたえる両親
美人だけれどド近眼、駆け落ちして舞い戻ってきた過去を持つ叔母さん
ガミガミ言われても動じないマイペースなお手伝いさん
なんといって最高に明るく底抜けなのがトンマーゾの恋人・マルコと仲間の『アルデンテ・ボーイズ』
日本でもゲイに関するたくさんの小説や本が出ています
内容で共通しているのは、彼らこそがマイノリティの痛み、苦しみを本当に理解している、ということ
映画の中でも「ゲイは病気ではなく個性だ」という台詞が出てきます
笑いの中、家族、セクシュアリティについて、知らぬ間に考えている自分がいました
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