訳・野崎歓
ちくま文庫
2015年10月 第1刷発行
448頁
2010年、ゴンクール賞受賞作品
ミシェル・ウエルベック
初めて読む作家さんです
作品を発表するたび世界中で物議を醸し数々のスキャンダルを巻き起こしてきた鬼才
本作は彼にしては大人しく解りやすい内容だそうです
実名で登場する有名人物をシビアに批判していたり、政治外交問題にも踏み込んでいたりします
これで大人しいのですねぇ
主人公のジェドはパリに暮らし、現代美術界では天才と呼ばれるアーティスト
恋人はロシア出身の絶世の美女でミシュラン幹部
今は落ちぶれてしまったものの父親はビジネスマンとして成功を収めた人物
そして作家自身・ウエルベックもジェドの個展用カタログの原稿を依頼された、偏屈で世捨て人同然の暮らしを続けている有名作家として登場します
ジェドらの孤独な生涯の軌跡を追いながら語られるのは、芸術と資本の結びつき、投機の対象となったアート世界への怒り
訳者・野崎さんによれば『現代芸術で主流をなしている、主題を軽んじ、作品の意味を等閑視してもっぱら形式に主題をおく姿勢に対するアンチテーゼ』だそうです
その辺りはよくわかりませんが、ジェドというひとりの人物と、父親や恋人との関係を描いた部分は小説として大層面白かったです
今まで読んだことのなかった雰囲気の作家さん
他の作品を読むかどうかは、まだ先のこととしましょう
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