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バーバラ・ピム「よくできた女(ひと)」

2011年08月14日 | 海外の作家

 

訳・芦津かおり
みすず書房
2010年10月発行
347頁


タイトルの「よくできた女」とは仕事も家事もバリバリにこなすスーパーウーマン、とは違い、家にある材料で食事を作ったり、裁縫をしたり、他人を不愉快にさせない程度に気を配ったり、美味しいお茶を淹れて客をもてなすことの出来る、ごく普通の女性たちを指します


舞台はまだ食糧配給が続く第二次大戦後のロンドン
主人公で語り手のミルドレッドは30過ぎのパッとしない未婚女性
いわゆる「おひとりさま」の彼女は、両親の残してくれた僅かな遺産とパートタイムで得た収入で、親しい牧師姉弟や旧友ドーラと交流したり教区活動に加わったりしながら、つつましいけれど平穏な生活を送っています
ある日、彼女の暮らすフラットに文化人類学者のヘレナと海軍将校の夫が引っ越してくるところから始まる物語
美男美女、華のある夫妻、しかし「よくできていない男女」の登場で彼女の生活に波風が立ち始め、変化がもたらされます
鋭い人間観察、巧みなユーモアと諷刺
いまだ独身でいる彼女への周囲の皮肉やお節介をさらりと受け流し「それで?」と肩の力が抜けた開き直り
かといって平気の平左でいられるわけでもなく、ひがみっぽくなったり謙遜したり虚勢を張ったり、不安定に揺れ動く複雑な乙女心をのぞかせます
そのあたり、自分も含め胸に覚えのある読者も多いのではないでしょうか
いかにもイギリスらしい小説です


それと、特別な大事件が起こるでもない日常をミルドレッドの眼を通して描いた本作で当時のイギリス人の一般的な暮らしぶりを知ることが出来ます

 


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