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山本周五郎「青べか物語」

2016年09月11日 | や・ら・わ行の作家

 

新潮文庫
1964年 8月 発行
2002年12月 64刷改版
2004年 6月 67刷
解説・平野謙
337頁

 

 

根戸川の下流にある、うらぶれた浦粕という猟師町をふと訪れた私は、“沖の百万坪”と呼ばれる風景が気に入り、ぶっくれ舟“青べか”をテもなく買わされてそのままこの町に住みついてしまう
やがて“蒸気河岸の先生”と呼ばれるようになった私の眼を通して、およそ常識はずれの狡猾さ、愉快さ、質朴さを持ったこの町の住人たちの生活ぶりを、巧緻な筆に描き出した独特の現代小説

 

 

著者は大正15年の春、千葉県浦安町に移り住み、昭和4年の春まで同地に留まったとのこと
その後、東京・大森に引っ越します
本作は、浦安町を架空の町・浦粕に置き換えていますが、実体験に基づいていることもあってか、住人たちの様子が実にリアルです

 

とんでもない町らしい浦粕町
よそものとみれば骨までしゃぶられるような町に来て、「私」は小学生の少年や温和な青年に援けられて少しずつ住人のなかにとけこんでいきます
足かけ3年の滞在の間に町のすみずみまでのことを知り尽くしたと思っていた「私」でしたが
浦粕を去って8年後、30年後の2度この町を再訪し、結局、そこの住人にはなれずよそ者でしかなかったことを改めて知ることになります
それは、住人の発する言葉はカッコつきで書かれているのに「私」のは「私は、答えた」「私は、質問した」と著されているだけでカッコつきで書かれていないことからも明らかです

 

大きな感動が得られるとか、涙を誘われるとかではないのですが浦粕の町とそこに暮らす人々の日常が見えてくるような味わい深い作品でした

 

 

 

 


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