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星野智幸「夜は終わらない」

2014年12月08日 | は行の作家

 

講談社
2014年5月 第1刷発行
522頁

 

玲緒奈の元に婚約者が自殺したとの一報が入る
警察に対し、不幸な女性を演じ終えた彼女が次に向かったのは別の婚約者の別荘
セックスや結婚を餌に次々男を惑わし財産を巻き上げ、証拠を残さず自殺と見せかけて葬り去ることを繰り返してきた玲緒奈には一つの掟があった
それは、死を目前にした男に自分が夢中になれるお話を強要すること
その話の内容如何で男の命の長さが決まっていく
最期の気力を振り絞り語り続ける男たちの現代の「千夜一夜物語」

 

 

玲緒奈という女性の逃亡生活と精神の破綻を描いていくのだろうと想像していたのですが大きく裏切られました

 

暴君に千一夜に渡り物語を語ったという「アラビアンナイト」と男女がひっくり返っています
本作での暴君は玲緒奈で、語るのは男性
警察から自殺したと連絡が入った男性の次に別の男性を殺害
その足で向かったのは、最も長く玲緒奈に話を聞かせることになるクオンの家でした

 

玲緒奈という、不幸な子供時代を過ごし、印象の薄い顔をメイクで胡麻化し、男を手玉に取って生きてきた女性が、今ここに存在している実感を得たいがため男たちに強要する物語
クオンの語る不思議な物語が徐々に玲緒奈と重なっていきます
まるで、これまでの玲緒奈の人生を全て知っているかのように…

 

自分の日常とかけ離れていると思っていた玲緒奈の日常の中に、ふと自分との共通点を発見した時は嫌な感じがしました
それは、現代人が気付いていないだけで普通に持っているものかもしれません

 

小説の出来云々はわかりませんが、大変インパクトの強い作品でした

 

 


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