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川崎徹「猫の水につかるカエル」

2010年08月16日 | か行の作家
川崎徹さん
知る人ぞ知るCMディレクター
ピンと来る人は「それなり」の年齢以上の方でしょう

私小説です
テーマは『死』

「傘と長靴」
雨が降ると父親を駅に迎えに行った幼い頃の思い出と初老にさしかかった現在が語られます
公園の野良猫に餌やりに出掛けるのを日課にしている
野良猫たちに名前をつけ、彼、彼女らとの会話を楽しむ
しかし相手は野良猫、餌やりのおじいさんが手を出してはいけない領域がある
人間は
また明日、という言葉を言い交わす時、明日を疑いはしない
疑う余地なく明日は百パーセント存在すると思っているから翌日の話をすることができる
今日の連続で明日は保証されているのだ
人にとって明日はとはそういう時間である
だが外で暮らす猫たちにこの言葉を使う時、ないかもしれぬ明日を思わざるを得ない
そしてその時、本来明日とはそういう時間であったことに気づかされる


「猫の水につかるカエル」
人間ドックで膵臓に腫瘍が見つかり要再検査と言われた
母親が膵臓癌で亡くなっていることから自分もそうに違いない、と思い込む
癌経験者の友人との会話、末期癌で亡くなった友人の散骨
死について悶々と考える日々
両親の形見として貰って来たソファ
ソファはふたりの老人を憶えてはいまい
忘れただろう
やがてわたしのことも忘れるだろう
わたしがいなくなっても、もともとわたしなどいなかったの如く、ソファは何の影響も被ることなくそこにあり続けるだろう


帯に、静かなユーモア・優しいペーソス・淡々と沁みる・小説集、とあります

猫、両親、友人、そして自分の死について、同じ重さで淡々と描かれている
そこに暗さ、悲しさは殆ど無く、不思議なことに川崎さんの温かさを感じました

妙に心に響いた作品でした



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