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西加奈子「通天閣」

2012年03月22日 | な行の作家

 

ちくま文庫
2009年12月 第1刷発行
解説・津村記久子
263頁


物語の季節は冬ですが、めっちゃ暑苦しい大阪小説です
タイトルからも分るように舞台は通天閣界隈
決してハッピーとは言えない物語です

40代半ばの独身男性と20代後半のこちらもまた独身の女性
二人の独白のような形でそれぞれの物語は進みます

通天閣の近くに住んでいるという以外は何の関係も無さそうな二人

20代前半だったころ年上の女性と結婚していた時期もあったのだが、相手の連れ子に愛情を感じることも出来ず、離婚
その後は日本中を放浪し、今は正社員で働いてはいるけれど他人との関わりを極力避けて暮らしている男性

実家の義父となんとなくうまくいかなくて家を出た女性
同棲していた恋人はニューヨークへ留学
別れたわけやない、暫く離れて暮らすだけや、と自分に言い聞かせていたけれど、ある日国際電話がかかってきて「好きな人が出来た、別れて欲しい」と言われる

所謂「底辺」に近いところで生きている二人が、苦しいこと辛いことばかりの毎日の中で見つけた小さな灯
人は絶望の中から再生の道を見つけることができるはずなのです

彼らは全く無関係な二人ではなかった、しかし互いにそれには気づかないまま物語は終ります


西さんは人間の弱さ、身勝手さをしつこいくらい描きます
それがとても不愉快なのに、物語を読み終わる頃にはいつもいつも「じ~ん」ときます
浪花節みたいなところが心に沁みるのかもしれません

通天閣には上ったことがありません
いつか上る機会があったら、展望台から、物語に出てくる坂を眺めて、女性の勤務先のママが語った言葉のひとつひとつをじっくり思い出したいです


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