訳・辻由美
みすず書房
2011年9月 発行
436頁
日中戦争から、内戦を経て共産党政権の樹立、中華人民共和国の大躍進政策とそれにつづく大飢饉、そして文化大革命
そこに生きた3人の男女、語り手のティエンイ(天一)、彼が「戀人(ラマント)」と呼ぶ女優・ユーメイ(玉梅)、「友」と呼ぶ詩人・ハオラン(浩郎)の天職と運命を滔々と描く、愛と友情はひとつになって3人をつなぎ、誰かひとりが欠けたら、他のふたりの人生はありえないほどの強い絆となる
革命を逃れて20歳でフランスに渡った著者が70歳を前に、ありえたかもしれない別の人生を自らに重ねて書いた小説なのだそうです
第一部・日中戦争前夜から終戦、内戦が激化する中国
ティエンイの生い立ち、両親や親戚との思い出
ユーメイ、ハオランとの出会い
ユーメイとハオランの関係を知り、ふたりの前から姿を消し老画家に弟子入りするティエンイ
第二部・1948年~1957年までのヨーロッパ(フランス、オランダ、イタリア)
絵の勉強のためフランスに留学
フランスでの貧しい暮らしとヨーロッパ芸術との出会い
恋人ヴェロニクとの穏やかな日々と別れ
第三部・反右派闘争から文化大革命へと突入していった中国
ユーメイからハオランが収容所で死んだという手紙を受け取り帰国
ところがユーメイは自殺していて奇跡的に生き延びていたハオランは北大荒の労働改造収容所にいるという
色々な手段を講じて収容所に入り込んで彼を救出しようと画策するティエンイ
壮大な物語です
ハオランとティエンイの友情に重きが置かれているように感じたのですが、二人の間にはいつもユーメイがおり、まるで二人を結びつけ見守るかのような大きな存在となっています
三角関係などという下卑たものではありません(青年期には、そんな雰囲気もありましたが)
中国の伝統的な文化や思想について学べる点も多く、じっくりと丁寧に読んだため2ヶ月ほどかかってやっと読み終わりました
満足、満腹です
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