WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『男どき女どき』(著者:向田 邦子)

2017-03-26 20:15:05 | 本と雑誌

2月下旬まで仕事が立て込みいっぱいいっぱいで、プライベートの約束をほとんど全部後ろに倒した結果、3月は人と食べる外食ばっかりの日々になってしまった。昨日でそれが一区切り、体重計に乗ったらきっかり1kg増えている。昨晩はお気に入りのお店でワインをたくさん飲んだので、朝の冷たい雨をガラスごしに見ながらジムで走り、みっちりウェイトトレーニングもやってアルコールを抜く。意外に体が軽い。

この本のタイトル、「男どき」は何をやってもうまく行くガンガンな攻め時、反対に「女どき」は何をやっても失敗するので受け身でサラリと流すタイミング。人生の機微を小説に脚本にエッセイに、巧みに描いた向田邦子さんならではのバランスの良さで、あとあじ良く爽快だ。特に一人暮らしを始めた途端に、家族の目がなくなって生活が乱れる自分をいましめる話がおもしろい。お風呂上がりに下着姿のまま電話、フライパンから炒めものを直接食べ、鍋にじか箸を突っ込む・・・昭和の話だから今どきのルーズさならもっと進化して、コンビニとかスーパーでお総菜を買うからお皿どころかまず鍋釜を使わないだろう。

私は反対で、実家にいた頃は家事をまったくやらず、几帳面な兄を見習いなさいといつも言われていた。二人で家の掃除を分担してやると、兄が磨いた洗面台が一流ホテルもかくやというほどにピカピカなのに対して、私が掃除機をかけた和室はまだ埃が残っている(笑)。ところが独立したら規律高くマメになり、今夜は久しぶりの週末おうちごはんでいそいそと買い出しに。土鍋でお米を炊いて、茅乃舎のだしでお味噌汁を作って、魚を焼き、昨日頂いた磯村政次郎商店のごま油(絶品!)でサラダのドレッシングまで作る。これが幸せなのは、我ながら地味だな(笑)


『サマータイム・ブルース』(著者:サラ・パレツキー 訳:山本 やよい)

2017-03-19 20:15:55 | 本と雑誌

だいぶ昔に一度読んだミステリを新装版で再読。原題が「Indemnity Only」だからサマータイム・ブルースと何の関係もないが、太陽が降り注ぐまばゆいシカゴの夏、ヒロインのヴィクが爽快で、まさにぴったりの邦題である。美女で服のセンスも良く、モテモテなのに、性格が思いっきり豪快な男前。彼女の職業は探偵。請求書は3回届くまで放置、凶悪なマフィア相手でも全くたじろがず、痛めつけられても説を曲げず、部屋がゴミ溜めみたいとの文句には仕事してるんだから当たり前と開き直る。こんなに面白かったっけ、あっという間に最後まで読み終えてしまった。

今週のウイークデイは自宅にいる時間が短くて、金曜の朝に冷蔵庫を開けたら見事に空っぽ。調味料以外であったのはバドワイザー数本と牛乳、常備の納豆だけ。その日も晩に約束があり帰宅して寝たのは2時を過ぎていたが、翌朝がんばって早く起き家事にとりかかる。カーテンをいっぱいに開けて3月の陽気を楽しみつつ掃除機をかけ洗濯機を回し、スーパーマーケットに3往復。冷蔵庫とストッカーにちゃんと食料が入ると本能的に安心するのは、農耕民族のDNAであろう。色が鮮やかになってきた旬のイチゴを洗いながら、コーヒーを落としてゆっくり飲んでもまだランチ前。早起きかつ3連休って時間が贅沢で大満足。

体をほぐしにジョギングに行く前に、このシリーズは確か続編が出ていたはずとチェックしたら、82年の本デビュー作からなんと30年近く続いている。2015年の邦訳最新作は17冊目。まずい、私こういうのって全部読んじゃうんだよな。キンドルに出ていた2作品を早速ダウンロードしてしまった。他に読みたい本がいっぱいあるのに・・・でも読み出したら止まらない。うーん、自立心がとんでもなく旺盛で、女子らしい可愛げのないところが自分に似てるわ(笑)


『猿の見る夢』(著者:桐野 夏生)

2017-03-12 19:59:48 | 本と雑誌

平穏な日々が続いている。忙しいが、寝室のエアコンを撤去してからこっち、今までの不眠の日々が何だったのだろうというくらい良く眠れる。エアコンはマンションを買った時に付けたものの、冷えすぎて一晩もオンにしたことがなかった。ベッドの枕に頭をもたせかけた10秒後には、ぐっすりと深い眠りの世界に落ちてしまう。食欲も旺盛で、週に1回は行くビストロのマダムにこの前「健康そのものですね」と顔をじいっと見ながら感心された。毎週、今週末こそは風邪でダウンすると思っても乗り切ってるし。前には口内炎ができるといつまでもひどく荒れて、ズキズキと治らずにいたのに、今週会社の打ち上げでビールを深夜まで飲みすぎて翌朝、あ痛いなと思っても翌朝にはちゃんとふさがっている。睡眠食事と基本的な欲望がちゃんとあるのは、春が来たからかしら。

このところ、子供の頃に読んだ「戦争と平和」を本腰入れて読み始め、これがなかなかの読み応え。私はだいたい週に1冊のペースで本を読む。膨大に本を読む読書家の先輩諸氏から、面白そうと買った本を最後のほうまで読み進め、ん?何かこの箇所は読んだ気がするぞと気になって本棚を捜索すると、奥の方にやっぱり同じ本がある、それも1冊じゃなくて2冊ある(笑)と聞いて、私ももう少しトシをとってくると同じことになるかと怯えているのだけれど、ほっとしたことにかなり覚えている。キンドルで6冊くらいの量だが、一度プルーストを読破するとどんなに長大作でも余裕なものだ。

トルストイの合間、気分転換に現代ものを読んだら非常に面白かった。家族に愛人、それに気になる美人の会長秘書の間で独楽のようにクルクル回る、自己中心を絵に描いたような定年間近の男。ケチで見栄っ張りで上昇志向が強く、自分のことしか考えてなくて、そのくせ小心者で・・・という主人公が、自分では出世も女関係も周到に計算しているはずなのにいつしかジワジワと重たい砂の穴に落ちていく。この人の作品はちょっと異常なくらいの価値観のシュールさが普通の世界と抱き合わせになっていて、いつも、濃さとバランスに感心する。描き切られた煩悩の重たさに、読み終わってふうとため息をついたら、周囲はうららかになりつつある春。日が長くなり大気は爽快、読書に最適な季節である。