ab Cuore 

帰国した時ノンポリだった私が見たのは≒無政府状態の日本。
ショック、怒り、希望をこのブログに書きました。

5/19 中村浩子 And then 第9話

2024-05-19 09:46:58 | あほ

5/19 中村浩子 And then 第9話


雄二の目がかすかに曇った。

浩子は見守った。

雄二の迷いを感じた。


考えさせて 

浩子はそう言って雄二のひざから降りた。


浩子は冷静だった。

燃えたいと願った、だけどできなかった。


結局、雄二とはそれきりだった。

時々思い出すことはあった。

でもどうやって彼を見つけ出せるか?

長い人生だった。

彼といたらどんな人生だっただろう?

男は出たり入ったり浩子の人生であったけど

結婚が迫ってくると嫌になった。


来年、私は還暦なんだ。 なんだか納得のいかない還暦。

還暦になるのに独身?!!

鏡に向かうととても還暦には見えない自分がいた。

二十歳と言ったらそりゃ詐欺だ。

でもまだ現役の若さの浩子だった。


もうすぐ冬なのに暖かい日だった。

こういうのをインデイアンサマーって言うのかしら?

その日は用もないのにプラプラ歩いていた。

ウインドーショッピングと言いながら、絶対に買わないものが

陳列されているショーウインドーを眺めていた。

こんなデカいスーツケース誰が買うのかしら?

と思いながら目を上げた。

ガラスに映った男を見て、雄二と声が出てしまった。

振り返って見た。

その男も浩子を見た。


雄二であるはずがなかった。

あれから何十年?

それなのに目の前の男はあの日の雄二くらいの年ではないか?

男がニッコリ笑った。

元気してた? と言いながら近づいてきた。


雄二?とつぶやいた。

でもクローズアップで違うと思った。

ごめんなさい、ちょっと知り合いかと思ったけど

人違いでした。

本当、僕も知り合いかと思った。

でもすごくよく似ている。

とその雄二似は言った。

そしてお名前はと気楽に聞いてきたので

浩子と気楽に答えてしまった。


知り合いになったことだし、お茶でもどう?

とあの日の雄二みたいに気安い男だった。

デパート並びの喫茶店と称する店に入った。


男は裕二だった。 

前川裕二と差し出した名刺にあった。

浩子は鳥肌がたった。

私の知り合いもゆうじって名前でした

と浩子はドキドキしながら言った。

そしてもう一度名刺を見た。

この会社知っています

ええ、結構大きな商社だから名前だけご存知の人いますよ。

いいえ、私の雄二もこの会社だったから。

前川裕二はちょっと驚いた。

そのあなたの雄二の苗字は?と聞いた。

山本ですが、ご存知?

前川裕二はゆっくりうなずいた。

山本はうちの会社の常務です。

浩子の目がかすかにうるんだ。

お元気でしょうか?

はい、バリバリに元気です。

浩子はその後ちょっとの間前川裕二とおしゃべりをして

そして別れた。

連絡先を書いて紙ッペラを前川に渡してよかったと思う半面

雄二の連絡を期待している自分をバカねと笑った。


何も起こらなかった。

金曜日、土曜日、日曜もあと数時間で終わる9時ごろ

電話が鳴った。



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