前編からの続き
ここで私はまた10分考えた。道を塞ぐ土砂はぬかるんでおり、滑りやすい。通行に邪魔な石を下に落としたとき、ものすごく下のほうで石が転がる音がした。万が一足を滑らせ、滑落すれば想像も付かないほどの距離を転がり落ちることになるだろう。それでも、ここも無理をすれば登れる自信が私にはあった。だが、今度こそ登ったら最後、絶対に降りられなくなる気がした。上るほうが大変だと思う人もいるだろうが、こういった足場の悪い傾斜地では、上るよりも降りるときのほうがはるかに危険が大きい。
もちろん、ここから先もずっと前進が続けられれば問題はないのだ。だがここから先、本当に前進不可能な場所に行き当たった時、いよいよ進退極まる危険性が高い。不本意ながら、私はここで撤退を決めた。登山口からは、まだ30分程度の地点だった。
ちなみに、今回の特別な装備としてはコンパスと軍手のみ。もしかしたら、土砂を取り除くためのスコップも必携なのだろうか…。
撤退を決めたら、そこからは速い。というか、一刻も早く下りたい理由があった。それは、この登山道に大量の山蛭がいたからだ。
私はおおよその形は知っているものの、蛭を見るのはこれが初めてであったので、実物を見てもそれが蛭であるとはしばらく気づかなかった。最初は、やけに粘着力の強いしゃくとり虫だなと思っていたのだが、ここには蛭が出るという情報を思い出した。それからは、蛭とおぼしきものが付着するたびに払っていたのだが、右足くるぶし付近にちくっとした痛みを感じて見てみると、そこには蛭がへばりついていた。急いでひっぺがすが(けっこう力が強い)傷口からは血が流れ出ている。しかも、噂には聞いていたがそれが止まらない。
そんなこんなで、危険を承知で急いで下山。例の滝も急ぎつつ冷静に、気合で下った。
下山して、蛭の危険のないコンクリートの上で改めて蛭チェック。かまれた場所は左右の足を一箇所ずつ。左足は、かまれた直後に蛭をはがしたので、赤く点になっているけど出血はなかった。上の服を脱ぎ、靴も脱いで調べたところ、靴の中で1匹発見。かまれる前だったので問題はなかったが、油断も隙もない(恐)。
撤退地点など、いろいろ写真を撮っておけばよかったのだが、最初の滝しか記録していなかったのが今思うと残念だ。でも、本当に余裕なかったんだよ、蛭のせいで。。。
滝登りに、蛭と格闘にと、短い山行ながら密度の濃い1日ではあったが、目的を達成し得ない不本意な一日でもあった。もちろんこのままで終わるわけにはいかない。今度は蛭の出ない時期+登山情報をきっちりチェックしてリベンジしたいと思う。
遭遇した方々:ヒト×0、ヘビ×2、ヒル×十数匹