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「大本襲撃―出口すみとその時代」

2009-08-02 09:26:16 | 
本は「大本襲撃―出口すみとその時代」(毎日新聞社)



綾部の大本教の本部に行ったとき購入した一冊。ここでは出口仁三郎の「霊界物語」とかいろいろ興味深い本も入手したんだけど、まずは教団外部の大宅賞作家が書いた「大本事件」の内幕を描いたこの本から読んでみる事にした。

戦前、大本教は二度にわたり政府から弾圧を受けているが、特に昭和10年の二度目の弾圧は教団を解体しようという意思の下に行われ、教団施設の破壊、幹部の拘束、拷問、財産の没収、一般信者への圧力などものすごいものだった。



弾圧の理由は「治安維持法違反」と「不敬罪」。
この小説でも、大本弾圧の特命を受けた特高課長側の動きも語られているが、弾圧の準備に教典を精読するなどかなりの準備をしている。ただ、実際には海軍を中心に信者を増やし、右翼とも連携を深める出口仁三郎の動きに恐怖を覚えた政府が「大本をつぶす」という筋書きの下、準備を進めていたのであって、強引なでっち上げ事件だったようだ。

例によって弾圧の最終決断をした人物が政府の誰だったかと言うことはよく分からないのだけれど、例えば原敬の日記では「我国(既存)宗教はほとんど滅亡せり。故に天理教、大本教などが人心を得ている。憂慮に堪えず。」とあり、体制側のコントロールの効かない新興の宗教に対する恐怖を感じているのが分かる。

そんな中、泰然とこの逆境に耐えたのが二代目教主であった出口すみ。出口なおの娘で仁三郎の妻という強烈な環境がそうさせたのか、6年にもわたる獄中生活で看守も驚くほどの平常心で日々を過ごしている。この辺り宗教の強さを感じられて興味深かった。

と言う訳で、大本の歴史も分かるし、宗教の強さも感じることのできる出色の本。非常に興味深く読むことができた。

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