COP18に失望
ドーハで開かれた第18回COPは12月8日に終わったが筆者はここのところ余り関心がなくなった。と言うのは先進国と発展途上国(中国はこちらサイドに立っている)の軋轢が一向に治まらず具体的な計画が決まらずに殆ど実質的な進展が見られないからだ。毎年中味のない形を作るだけにみえる結論で終わっている。これでは孫子の時代の地球環境はどうなるのだろうか。
そもそも現在世界最大のCO2排出国の中国(2011年は世界の29%)と第2排出国の米国(2011年は16%)は排出量削減の義務を負っていないままコトが推移していることがおかしい。国際社会はこの矛盾を是正できないままにいるのだ。2011年にはその2国でCO2排出量の世界の45%を占める。因みに2009年の統計ではこの2国で42%(中国24%、米国18%)を占めその他の義務なしの国を除くと義務を持つ参加国の排出量は世界の26%に過ぎないのだ。この26%という数値内を議論しても重みがないことは明らかだ。
「今回やっと2020年以降にこの2国を含んで全ての国が参加すると言う取り決めとなったこと」を評価するという報道があったが、何故参加するだけに8年も準備がかかるのだろう。もう少し詳しく会議の経緯を示せば大変わかりにくいがいかにも進展の遅さを感じるのだ。即ち、昨2011年に、「2012年には2020年から世界全体で参加する計画を検討することにする第1年目と言うことで、2013年に調査し2014年に素案をつくり2015年に採択するということ」を決めた。いかにも遅い取り決めではないか。若し2015年に採択されるなら2016年から実施すればいいのにその後数年経ってから実施だから現在から実施までに8年もある。何故この鈍速なのだろう。その間に国際情勢も変わるだろう。これまでのCOPの流れから予測するとまだまだいざこざが起きてこの遅いスケジュールも果たして守られるかどうか疑問に思う。
中国・インドなど先進国に近い国情になっている国は基本的に「地球環境問題は欧米日など先進国の責任で我々は先進国のレベルまで国民の生活レベルをアップするまではエネルギーをもっと使わせろ」と言う考えだから話は纏まらない。言い換えれば、それらの国は削減に消去的ということだ。そして世界をリードすべき立場にある米国も自国の産業への影響を懸念して消去的。これでは話が纏まらないのは当然だ。まだまだ地球環境悪化を甘く考えていると言うことになる。真に深刻に考えているのは温暖化で国が沈む恐れのある太平洋の赤道付近の島国だけではなかろうか。毎年のCOPの結論を見るたびにそう考えてしまうのだ。
京都議定書は1997年に制定されたが既に省エネ行動を進めていた日本はそれまでの努力を配慮されずに厳しい削減目標を課せられた(ある意味では外交力が劣っていたとも言える)。以降毎回COPで国益を主張しこのままの延長に反対を主張してきたが今回は前回の宣言どおり議定書の延長が決まったので削減義務を負う国から脱退した。勿論自主的な削減活動は続ける。COP18で京都議定書は一応継続されたが今回から日本、ロシア、ニュージランドが下りたので削減義務を負う国の排出量は世界の15%程度にまで落ち込んだ。COPの重みが更に低下することとなったのだ。
わが国は前述の通り義務から逃れたので議論をリードする立場には立てないし、先進国の代表格の米国もこれまで理由なく義務を回避してきたのだから威張れるはずはない。今回の会議は中国主導で進んだと報道されたが当然と思う。中国も本来は世界一の排出国だから威張れない筈だが強かさで論議をリードしたと言う。
今回のCOP18では他の案件も上手く纏まらなかったという。発展途上国への資金援助も日本を含め先進国はやることになったが具体的な内容は盛り込めなかったし、CO2の影響と言うか地球の蒙る損害についての対応も直ぐ資金援助に繋がると言う理由で米国が抵抗して途上国と対立して纏まらなかった。
尚、今回ではないが、2009年に鳩山元首相は日本はCO2を2020年までに1990年比25%削減すると宣言している。既に省エネをかなり進めて中で産業の発展をさせつつ25%削減とは大変なことと産業界は猛反対したが無視しての発言だった。パフォーマンスでしかない行動だった思う。勿論原発を50%にすると言う前提だった。
民主党政権は原発ゼロを訴えながら何故か昨年のCOP17でもこの25%削減を否定せずノーコメントだった。どうする積もりだったのだろう。ありえないことだ。安倍政権は当然この点見直すことになるだろうと思っていたら28日茂木大臣が見直しを発表した。当然だ。
そもそもCOPは地球の平均温度上昇2度以下に保つ目標で議論を始めた。そこまでならば何とか人類の生活環境は保てると言う前提だ。しかし今の傾向が続けば世紀末には4度上昇と予測されている。それは地球環境として相当深刻で、恐らく赤道直下では水没する国も出るだろう。
WWF(世界環境保護基金:世界の環境保全団体)は「2012年は北極海の海氷の減少が激しく、また世界の気候変動もの異常で危機感を持っている」と公表しているが、毎年のCOPの進展を見る限り世界の先進国(中国やインドを含め)はまだまだ甘い感覚を持っているとしか考えられない。
わが国はこれまで省エネに努力してきており、それはGDP当たりのエネルギー消費量を比較すれば明らかだ。省エネで遅れている国には中国を含め技術供与する方針を明確にしているが、CO2削減については国際協調で進められるプロジェクトなのだから世界の排出の4%に過ぎないわが国だけがこれ以上先行して優等生になる政策はとらないようだ。国益を考えればやむを得まい。
地球規模で考えれば中国と米国の削減を何としても軌道に乗せることが先決だが両国とも余り動かない。国際社会も促進できない。困ったものだ。
ドーハで開かれた第18回COPは12月8日に終わったが筆者はここのところ余り関心がなくなった。と言うのは先進国と発展途上国(中国はこちらサイドに立っている)の軋轢が一向に治まらず具体的な計画が決まらずに殆ど実質的な進展が見られないからだ。毎年中味のない形を作るだけにみえる結論で終わっている。これでは孫子の時代の地球環境はどうなるのだろうか。
そもそも現在世界最大のCO2排出国の中国(2011年は世界の29%)と第2排出国の米国(2011年は16%)は排出量削減の義務を負っていないままコトが推移していることがおかしい。国際社会はこの矛盾を是正できないままにいるのだ。2011年にはその2国でCO2排出量の世界の45%を占める。因みに2009年の統計ではこの2国で42%(中国24%、米国18%)を占めその他の義務なしの国を除くと義務を持つ参加国の排出量は世界の26%に過ぎないのだ。この26%という数値内を議論しても重みがないことは明らかだ。
「今回やっと2020年以降にこの2国を含んで全ての国が参加すると言う取り決めとなったこと」を評価するという報道があったが、何故参加するだけに8年も準備がかかるのだろう。もう少し詳しく会議の経緯を示せば大変わかりにくいがいかにも進展の遅さを感じるのだ。即ち、昨2011年に、「2012年には2020年から世界全体で参加する計画を検討することにする第1年目と言うことで、2013年に調査し2014年に素案をつくり2015年に採択するということ」を決めた。いかにも遅い取り決めではないか。若し2015年に採択されるなら2016年から実施すればいいのにその後数年経ってから実施だから現在から実施までに8年もある。何故この鈍速なのだろう。その間に国際情勢も変わるだろう。これまでのCOPの流れから予測するとまだまだいざこざが起きてこの遅いスケジュールも果たして守られるかどうか疑問に思う。
中国・インドなど先進国に近い国情になっている国は基本的に「地球環境問題は欧米日など先進国の責任で我々は先進国のレベルまで国民の生活レベルをアップするまではエネルギーをもっと使わせろ」と言う考えだから話は纏まらない。言い換えれば、それらの国は削減に消去的ということだ。そして世界をリードすべき立場にある米国も自国の産業への影響を懸念して消去的。これでは話が纏まらないのは当然だ。まだまだ地球環境悪化を甘く考えていると言うことになる。真に深刻に考えているのは温暖化で国が沈む恐れのある太平洋の赤道付近の島国だけではなかろうか。毎年のCOPの結論を見るたびにそう考えてしまうのだ。
京都議定書は1997年に制定されたが既に省エネ行動を進めていた日本はそれまでの努力を配慮されずに厳しい削減目標を課せられた(ある意味では外交力が劣っていたとも言える)。以降毎回COPで国益を主張しこのままの延長に反対を主張してきたが今回は前回の宣言どおり議定書の延長が決まったので削減義務を負う国から脱退した。勿論自主的な削減活動は続ける。COP18で京都議定書は一応継続されたが今回から日本、ロシア、ニュージランドが下りたので削減義務を負う国の排出量は世界の15%程度にまで落ち込んだ。COPの重みが更に低下することとなったのだ。
わが国は前述の通り義務から逃れたので議論をリードする立場には立てないし、先進国の代表格の米国もこれまで理由なく義務を回避してきたのだから威張れるはずはない。今回の会議は中国主導で進んだと報道されたが当然と思う。中国も本来は世界一の排出国だから威張れない筈だが強かさで論議をリードしたと言う。
今回のCOP18では他の案件も上手く纏まらなかったという。発展途上国への資金援助も日本を含め先進国はやることになったが具体的な内容は盛り込めなかったし、CO2の影響と言うか地球の蒙る損害についての対応も直ぐ資金援助に繋がると言う理由で米国が抵抗して途上国と対立して纏まらなかった。
尚、今回ではないが、2009年に鳩山元首相は日本はCO2を2020年までに1990年比25%削減すると宣言している。既に省エネをかなり進めて中で産業の発展をさせつつ25%削減とは大変なことと産業界は猛反対したが無視しての発言だった。パフォーマンスでしかない行動だった思う。勿論原発を50%にすると言う前提だった。
民主党政権は原発ゼロを訴えながら何故か昨年のCOP17でもこの25%削減を否定せずノーコメントだった。どうする積もりだったのだろう。ありえないことだ。安倍政権は当然この点見直すことになるだろうと思っていたら28日茂木大臣が見直しを発表した。当然だ。
そもそもCOPは地球の平均温度上昇2度以下に保つ目標で議論を始めた。そこまでならば何とか人類の生活環境は保てると言う前提だ。しかし今の傾向が続けば世紀末には4度上昇と予測されている。それは地球環境として相当深刻で、恐らく赤道直下では水没する国も出るだろう。
WWF(世界環境保護基金:世界の環境保全団体)は「2012年は北極海の海氷の減少が激しく、また世界の気候変動もの異常で危機感を持っている」と公表しているが、毎年のCOPの進展を見る限り世界の先進国(中国やインドを含め)はまだまだ甘い感覚を持っているとしか考えられない。
わが国はこれまで省エネに努力してきており、それはGDP当たりのエネルギー消費量を比較すれば明らかだ。省エネで遅れている国には中国を含め技術供与する方針を明確にしているが、CO2削減については国際協調で進められるプロジェクトなのだから世界の排出の4%に過ぎないわが国だけがこれ以上先行して優等生になる政策はとらないようだ。国益を考えればやむを得まい。
地球規模で考えれば中国と米国の削減を何としても軌道に乗せることが先決だが両国とも余り動かない。国際社会も促進できない。困ったものだ。