天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

樋口尚文『実相寺昭雄・才気の伽藍』日記「Sローレンはアメリカ肉体女優違って清潔感と芝居気ある」に同意

2017-02-05 11:46:04 | 日記
今日の日記は、今読んでいる樋口尚文著『実相寺昭雄 才気の伽藍』(アルファーベータブックス・2016年12月刊)での、私の半世紀前の懐かしい記憶を呼び戻してくれた、強く共感した記述です。添付した写真はその著書の表紙です。
実相寺昭雄氏(1937~2006年)は、映画監督で60年代後半にTBSテレビで放映された『ウルトラマン』を演出し、1988年『帝都物語』を創った映画界の鬼才です。その作品集を、映画評論家・映画監督の樋口尚文氏(1962年~)が評論したのが本書です。この著書の中で、当時の子供たちが熱狂したテレビ番組『ウルトラマン』の製作秘話や、実相寺昭雄氏の青春時代の映画鑑賞日記を読んで、私の半世紀前の若かりし日の思い出が今蘇ってきました。彼は私より9歳も若いのでちょっと世代が違いますが、私も同じように共感しました。以下に、その記述の一部を引用・掲載します。
『実相寺昭雄は熱烈な映画ファンらしく、自分の観た映画のベストテンが日記に記載されていた。1955年、スカラ座でマリオ・ソルダーティ監督「河の女」を観て、「ソフィア・ローレンは「ナポリの饗宴」についで二本目であるが、アメリカの肉体女優と違って、清潔感と芝居気はある」と。』
『従来の宣弘社が発想した和製テレビヒーローは、「月光仮面」「隠密剣士」「怪傑ハリマオ」のように、戦前の「少年倶楽部」的ワールドを原点とするアジア志向であったのに対し、1966年に放映された「ウルトラマン」はアメコメからシュルレアリスムにまたがる欧米型の意匠のアマルガムであり、鮮烈なモダンさと新奇さに満ちていた。そして、ドライなパロディ精神も持ち合わせていた。・・黒部進扮するハヤタ隊員がウルトラマンに変身するカットで、慌てた彼がベーターカプセルと間違えてカレーライスのスプーンをかざすというアイデアで、実相寺はヒーローを軽々に扱って懲戒物のタブーを犯した。・・当時の幼い視聴者であった私は、この遊びっぷりに狂喜乱舞した。クールなジョークという感じがして、よけいにこの番組が好きになった。この反応は全国で起こったらしく、すわお蔵入りかと思われたこの作品が実相寺の手がけた各話のなかで最も好評を得た。』
私は、樋口尚文氏より9歳年長(注:正確には私は当時13歳中学生で、樋口氏は4歳幼稚園年小児)ですので、この「ウルトラマン・スプーン事件」をはっきりと記憶しています。樋口氏はこの事件の反応を「全国で起こったらしく」と曖昧な表現をしていますが、私はリアルタイムでその現象をはっきりと記憶しています。だから、とても懐かしい思い出を呼び起こしてくれました。
また、実相寺昭雄氏の私の大好きなイタリア女優ソフィア・ローレンの感想「アメリカの肉体女優と違って清潔感と芝居気はある」に、私は強く同意しました。私は劇場公開された「河の女」をリアルタイムでは観ていませんが、映画少年だった私が「ウルトラマン」を観ていた同じ頃、NHKが放映権を獲得しTV放映した「河の女」を観ています。そして、それ以降、主演したソフィア・ローレンに、私は夢中になってしまいました。
この著書によると、高校生だった実相寺昭雄氏が日記に記載していた映画鑑賞ベストテンを、私も中学生頃、横浜のライオン座他で観た外国映画の私の自己鑑賞ベストテンを、同じように書き込んでいました。でも、もうその日記は破棄してしまい、今は記憶だけが残っているだけです。だから、今、タイムカムセルで半世紀前の自分に会えるなら、その自己鑑賞ベストテンをよく観てみたいです。
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