音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

電子ブックの未来

2009-05-08 23:00:18 | 時事問題
Amazonがついに新型電子書籍リーダーを出してきました。発表された3代目のKindle DX(以下キンドル)は大きくなったのが最大の眼目のようで、約10インチというディスプレーサイズは2代目の2.5倍であり、ミニノートPCのそれ(10.2インチ)とほぼ同等です。煩雑な画面切り替えやスクロールという従来のモバイルツールの弱点を解消し、フォント拡大機能や、テキスト読み上げ機能(毎朝の日経をテレ東の森本智子アナの声で聴いてみたい!)、辞書機能などハードの進化は、いよいよデジタルコンテンツが紙媒体にとって代わる時代の到来を予感させます。

値下げ効果でユーザーを増やしているiPhone 3Gのウリは、あれだけのサイズで大抵のことが出来るという万能性だと思います。ケータイとiPodを別に持っていても、ブラウジング可能なiPhone 3Gは魅力があります。相手にサイトを示してあげる程度であればビジネスでも使えます。何も1kg以上のミニノートPCを持ち歩き、立ち上がりの緩慢さとイーモバイルの通信速度にいらつく必要もないからです。でも音声や動画コンテンツの可能性に比して、まとまった活字を読むという用途ではiPhone 3Gはキツイ。辞書などはiTunusでも結構売れているようですが、短い調べ物系が精一杯かなと。

先輩のiPhone 3Gを借りて暫く遊ばせてもらいました。1年で30万部減らした遠因と囁かれる無料「産経新聞」は、新聞の利点である見出しの大小でニュースバリューを図れるのが、ニュースサイトを補完する機能はありそうですが、ノータッチで読める範囲は僅かなので、始終指を動かしていなくてはなりません。手塚治虫の漫画も吹き出しの中の台詞が小さすぎるので、ページを進むごとにタッチパネルで拡大せねばならず、かなり鬱陶しかった。これで100頁超の書籍や膨大な量のスプレッドシートを読むというのはかなりしんどいでしょう。


(Amazonホームページより)

キンドルの優れたところは、単体でデバイスとして完結しているところでしょうか。iPodのように、コンテンツ購入をしてもPCと同期しなくてはならないというのは、自宅のPCが不調だったり、マシンそのものが壊れた際に厄介で、特にメカに詳しくない年配の人には結構ハードルが高いものです。

それに、思い立ったら何処でもすぐに入手(ダウンロード)できるのは非常にいい。私のような活字中毒患者は、本が切れると途中下車してまで書店に行こうとしますから・・・。ユーザーが電話会社と契約する必要もなく、アマゾンのアカウントを使ってクレジットカード課金されるだけであれば、購入のためのコストやストレスが激減します。所蔵の際の省スペース性などのメリットは大西さんが書かれている通りです。

ウン年後の日本において、キンドルで購入可能なラインナップが、郊外書店の在庫並みに揃ったと仮定します。実物を手にしていないので写真で想像するしかないのですが、普段私が本を読むシーンで、紙媒体が電子ブックに置き換わったとしてどうなるかを1ユーザーとして考えてみました。


(Amazonホームページより)

使い勝手としては、キンドルは平板なので電車の座席や待ち合いのベンチなどでは、隣の人の視線が若干気になるかもしれません。これは逆に本という、半開きで読むメディアの利点です。反対に、紙の書籍はページをめくるたびに結構腕を動かすことになりますが、電子書籍はボタンを指先で押すだけなので、ぎっしり肩が詰まった電車の座席では有効でしょう。

また、私は一人で食事するときは本を読んでいることが多いのですが、中綴じの雑誌でない限りは、常に片手で押さえていなければなりません。だからカレーやラーメンなどを食すことが多くなるのですが、フラットなキンドルがお供であれば、定食やナイフ&ホークを使うランチもいけそうです。

寝る前にも本を読みますが、つい読みながら部屋の電気をつけっ放しにしてしまいがちですが、キンドルは液晶ですから暗くして読めばよい。

新聞・雑誌の他に教科書がターゲットということで最後に一つ。教科書といっても主に高等教育を想定しているようですが、これはむしろ小・中学生たちに吉報ではないかと思いました。いくら法律や経済のテキストが分厚いといっても、大学生なんて1日に何コマも受講するわけじゃないので、大したことがない。

ときどき娘のランドセルを手に持つと、こんな重いものを毎日背負って通学しているのかと愕然とします。(自分も子供の頃はそうだったのでしょうが)重いランドセルで通学すると、知らず知らずのうちに鍛えられるというマッチョな考えがあるかもしれません。たしかに高学年になるにしたがって体が大きくなりスタミナも増しますから、相対的に負荷が減るわけですが、体力増強は別のエクササイズで図った方がよいでしょう。現代の交通事情においては、児童(特に低学年)がなるべく両手をフリーにしておいた方が危機管理上好ましいからです。

小学生の真夏の下校時なんかは、もう苦役というか拷問に近いものがあります。うちの子は片道30分近くかけて徒歩通学していますから、余計そう思うのかもしれませんが・・・。これがもしキンドル1枚に教科書全部が収録されたとしたら、ノートや問題集は紙のまま残るとしても大分ラクになるでしょう。小学生はランドセル以外にも、体操着や習字セット、メロディオン、工作の材料など、ただでさえ持っていくものが多いのですが、教科書が減れば背中の収容量が増え、そのぶん手が空くことになります。

そう考えると、あの仰々しいランドセル(皮製だからそれだけで相当重い)という代物も、「教科書さま」を傷つけずにきちんと格納するために存在していたのではという気もしてきました。教科書の呪縛から解き放たれて、判型にとらわれないサイズの、素材もナイロンの軽いナップザックのようなものが、ランドセルに取って代わるのではないかと空想します。電子書籍リーダーが小学生の登校風景を一変させるだけの可能性も秘めているということです。


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2 コメント

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ケータイ小説なんてと思っていたら... (マルセル)
2009-05-09 00:42:47
去年だったかなお台場でソニーの奴をみたんだけど、まだ実使用にはという感じだった。
キンドルも実機を見て見ないことには何とも言えません、ただ親爺がうだうだ言っているうちに、若者に広がって言って皆が使い始めているという可能性はある。
ケータイ小説なんてと思っていたら、若いコには流行っていると聞くと、う~ンとうなるばかり。
しかしこのキンドル...アメリカでうけても日本では流行らないという可能性があるのではと思います、日本人の場合どれだけ画面の視認性が高いというトコが大事かと思います。
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コメント・TBありがとうございます。 (音次郎)
2009-05-10 07:15:45
>マルセルさん、毎度です。
視認性については、横書きと文字バリエーションが限られる英語と日本語では多少異なるでしょうが、要は慣れの問題ではないかと思います。

若者への普及は勿論ですが、溜まった重い古紙の始末や、冬の寒い朝に戸外のポストに取りに行かなきゃならない新聞が電子化するのはお年寄りにも便利ではないかと。
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