最初のころはそれなりに少しは楽しい響きだった「おうち時間」という音感にもそろそろ辟易気味。
もっぱらの楽しみは配信の映画やこんな事態でもなければ公開されないバレエ公演のコンテンツなどを観たり、近所の本屋も図書館もクローズしているためよほど絶対間違いないと思える本をネット購入する以外は家にある本たちをもう一度読み返したり、ひとつ前の記事で書いたように着るものに気持ちを入れてみたり、お菓子を焼いてそれぞれ地方に住む息子たちに送ったりと、どれもゆるい能動活動。「こんな豊富に時間があるのだから、自分を成長させる何かに打ち込んでみよう!」なんて、意識高い啓発をしてくる多々の情報をきれいにスルーして、楽な方向にばかり手と身体が向かっているという次第。
幸いささやかな我が家の庭でも緑は日に日に深くなり花々が顔を覗かせ、萎えそうな気持に潤いを与えてくれる。その庭に面した居間には小さなサンルームがあって、そこでだらだら過ごすのが晴れた日の冬の昼間やすがすがしい春秋には至福なのだが、夏日も増えてきてここで過ごすのも厳しくなってきた。今シーズン気に入ってチェアに敷いていたオーガニックシープスキンにも、しばらくお休みをあげなくてはいけない時期かな。アイスランディックシープという古くからアイスランドに住む長毛の羊で、これまで破棄されていた食用羊の毛皮を使用しなるべく化学的な工程を踏まずに仕上げているのだそう。自然のままだからか少々羊らしい匂いもしていて瞬間彼が生きていたことの確かさを突きつけられて動じてしまうのだが、これも命の恵みを受け取らせてもらっているのだとその都度頭を垂れる気持ちでまた椅子にうずくまるのだ。
もうしばらくは一緒に夏のはじまりを過ごそう。